tブレスヴォイストレーニング100メニュ
第5章 ボーカリストとしてのトレーニング


自立したボーカリストをめざせ

ブレスヴォイストレーニング
 基本となるのは、次の3つです。

 ◆耳…一流のアーティストをよく聴くこと
 ◆体…自分の体をヴォーカリストとして使える体になるまで徹底して鍛えていくこと
 ◆声…魅力的な声、強く安定した声にすること

 歌のなかで表現が充分にできるだけの歌の技術をもつこと
 さらに、音感・音程…
      リズム…
 ことばや、フレージングでの表現技術、感性、センスが必要です。
 アカペラであろうと、どこの国の人の前でも、通じる歌、誰もが魅了され感動する歌を歌えるための徹底したヴォーカリストおよび声をプロとして使っていきたい人のためのトレーニングが、ブレス…トレーニングなのです。

94.基本トレーニングメニュ(1) 目標 フォームづくり
menu.gif (1121 バイト)

1.スケール ラ<レドシラソ>
2.ブレス(ハッ)×3回+1回休
     (ハッ)×<ドレミレド>
3.ブレス→声
  (ハオ)ハオ
  (ハオ)ハオ(ラオ)ラオ
4.声
  ハオ、ラオ
  ハオ、ラララ
 (アオイ)アオイ
 (アマイ)アマイ
  アマイ ラララ
5.アマイ アマイ(ドシシ)
□ハイ→ララー
point.gif (1100 バイト)

□肩上下しない

 


 

95.基本トレーニングメニュ(2)
menu.gif (1121 バイト)

1.とおいまーち とおいうーみ ゆめはるーか ひとりたび
  ドドドドーレ レレレレーミ ミミミミーファ ファファソファド

2.1よあけのーうたよ わ た し のこころに
   ドファファファーミラド ラ ソ ラ ソレレドミ
  2ドファファファーラファミ

3.わたーしはわすれない うみにやくそく したーか(あ)ら
             すな
             そら
  ミファファファ シドレミミ レドドドドレミ ドシ ラ シ ラ
高)シドドド ファ#ソラシシ ラソソソソラシ ソファ#ミファ#ミ
低)シドドド ファ# ソ ラ シ シ ラ ソ ソ ソ ソ ラ シ ソ ファ# ミ ファ# ミ

4.きのうの かなしみ ながして おくれ
  ドドシ ラ レレドシ ミミレド# レミファ#

5.ヴォーラーレ オオ カンターレ オオオオ
 (ソ  ファ レ ソファ)
 (ソ  ド ソ レド)
  ミ  レ ラ ミレ レドソ   ソシレド

 


 

96.基本トレーニングメニュ(3)
menu.gif (1121 バイト)

1.とおいまち とおいうみ ゆめはるか
  ドーーーレ レーーーミ ミーーーファ
  ひとりたび
  ファファソファド
  (遠くへ行きたい)
2.よあけのうたよ わたしのこころに
 1ドファファファミラド ラソラソレレドミ
 2    ラファミ ミレミレソソファラ
  きのうのかなしみ 流しておくれ
  (夜明けのうた)
3.わたしは わすれない 1うみにやくそく したから
             2すな
             3そら
  ミファファファ シドレミミ  レドドドドレミ ドシラシラ
  シドドド ファ#ソラシシ  ラソソソソラシ ソファ#ミファミ
4.ヴォラーレ オオ カンターレ オオオオ
  ソ ファーレ ソファ
5.アオイ アオ アオイア

 



まとめ

1.体の準備、フォーム
2.呼吸
3.発声、ポジションの確保
4.フレーズ
5.音色→ヴォーカルとしてのスタイル、オリジナリティ
  センス→音楽的センス、語感
6.感情、表現、フレージング
7.ひびき、音感、リズム

○習得の課程
 力をつけるレベル(体の力、リラックス)で、何度も基本トレーニングを繰り返します。同じ結果(声)が出せるなら、力をつかわないでフォームでやる方に移していきます(技術)。その力をさらに上級の課題(強、高、太い声を出すこと)に向けていくのです。


 

97.感情を支える
menu.gif (1121 バイト)

強く感情を出してみましょう。
 それを支えて、聞かせるために、技術が必要なのです。

 生身の感情(体)→ストレートに伝える…トレーニング
 繰り返しに耐える(技術)→気持ちよく聞こえる…歌

 


 

98.ワンパターンからの脱出 (慣性、リズムにはまらないように  する)
menu.gif (1121 バイト)

歌っていて飽きをふせぐための方法です。

同じメロディや歌詞がつづくときにも有効です
point.gif (1100 バイト)

その他に、次のような逃れ方があります。
□シンコペーション
□前打ち(やや前にずらして早めに出る)
□後打ち(ややあとに出る)
□強調(強くする、伸ばす、大きくする、など)
□フェイクする
□アドリブを入れる
□転調する
□三度、五度オクターブ上げる

 



99.音程・音感トレーニング
menu.gif (1121 バイト)

コードパターンの上で進行させてみてください。

1.歌詞を用意して、コードに合わせ即興で歌います。


2.同じことばをコード上で繰り返します(英語、ラップ)。


3.意味のないことばを繰り返します。
point.gif (1100 バイト)

□1.は、知らない曲をカラオケで歌うとよいでしょう。

 


 

100.スタイル 歌う立場ともっていき方を定める
menu.gif (1121 バイト)

「なりきる」と「語る」

 歌う立場としては、歌の主人公になり切って、感情移入するときと、第三者的に物語るときがあります。
 最初はなりきって、ストレートにドラマチックに歌いあげる方を勧めます。いろんな歌い方はありますが、どこまで一つの歌を大きく歌いあげられるか、全身で表現できるかということを追求しておく方があとで伸びます。若いうちから、あまり、せこせことまとめた方い方におちつけるのは、反対です。ヴォイストレーニング同様、ヴォーカルでも大きくつくった器は、小さく使えますが、逆は困難だからです。

自分の土俵(スタイル)にもちこむ

 それとともに、自分のスタイルをそのなかでつくっていくことです。パワフルにストレートに伝えるための伝え方でのフォームを思い出していくのです。これは、ヴォーカルにきって、最も大切な課題です。

 


 

101.かけあい(コミュニケーション)と間
menu.gif (1121 バイト)

歌もまた、お客さんのかけあいで成立します。ヴォーカリストの投げかけた歌詞に、お客さんが心動かされ、問いを発し、それにヴォーカリストはこたえていくのです。

  
ヴォーカリスト「………」
  客 「それで?」
  ヴォーカリスト「………」
  客 「だから」

 間というのは、お客さんの参加する時間です。そこで聴いているところから、一歩、ヴォーカリストへ何かを期待したところを、次のフレーズで満たしてあげるのが、ヴォーカリストなのです。つまり、これでもか、これでもかと、客が満足しすぎて、もういいというほどのサービス精神が必要なのです。体を何回も一杯、使ってあげると、それだけで人は喜びます。全力で歌うことの大切さを知って欲しいものです。

 


102.学ぶこと

 歌、声を出した瞬間から、何かを起こし続けることです。

  1.どんな歌なのか
  2.どう歌いたいのか
  3.どう伝えたいのか

 歌の真実、人間の真実をえぐり出すことです。

 私たちが感動したとしたら、そのなかに何かしら、本質、真理があります。歌の流れにおぼれるのでなく、身を体、呼吸の流れに任せます。
 決め手、ピークとなるポイントをもち、流れをキープします。
 間のコミュニケーションをうまくとることです。

  1.かけあい
  2.押しあい
  3.ひっぱりあい


 お客に対しては、いつも次のように考えましょう。

  1.眠らせるな
  2.あきさせるな
  3.出しつづける


103.歌に自分を

 まわりの空気にそまらないこと。そして、流れを自分でつくり出すことです。
 息吹、ことば、メロディが聞こえてくること、胸にせまってくることが大切です。
 一本調子でかわいいだけではだめです。
 虚像で生き、虚を表現するな。なかに真実を宿せ。
 次の曲も、次々と何曲も聞きたいと思われるかどうか。
 そのためには、形をこわすことです。文句をいわせない力をもつことです。
 理解されないことを恐れないことです。そして、本当のあなたを出すことです。すぐに理解されるものがよいものではありません。自分を単に受けねらいの、まずい料理にしないことでしょう。


 ライブ…一人ひとりが、一つのピークを打ち出し、トータルでつなげていくことが大切です。



104.表現に思いを

 思ったように歌を動かすには、思うことです。思わなくては動きません。
 思いを入れることです。入れなければ伝わりません。
 表現するもののこと、そして、表現しようとする自分の意味を考えることです。
 ステージは、ヴォーカリストにとっての勝負の場なのです。



105.実力について

 余裕がみえるのはよいのですが、多くの場合、それはスキ(隙)というものにとどまっていることが多いようです。不安定、おっかなびっくりでやっているのはもちろん、自信たっぷりにやっていても、よほど気を引きしめて、ステージまでを日々、努めていなくては、スキが出てしまいます。
 歌がうまいってことは、その歌を伝じて、人をその歌の世界、あるいはその人の世界にひき込めるということです。そして、パワー、エネルギーを聴いている人に注ぎ込めるのです。だから、人を気持ちよく元気づけることができるのです。そして、魅了できるということです。歌い終えたあと、誰も認めざるをえぬ空間と時間の間ができるのです。つまり、あなたの歌が、一つの世界をつくり出すのです。



106.ボーカリストの姿勢

 タレント、学園祭のスター、カラオケの上級者と、比べられないレベルのことをめざしましょう。
 歌と本人が一致して、一つになること、他の人(ヴォーカリスト)が、歌から聞こえる人が多いのです。あなたを聴いているのに、あなたはどこにいるのといいたくなります。曲からメロディ、ことばが浮いてくることです。歌との対決を避けず、正面に捉え、融和していくことです。
 ヴォーカリストの力は、伴奏が間違ったくらいで左右されません。孤立孤高を恐れないことです。向きあったときにも、人間としてのパワー、迫力が出てくるくらいになりたいものです。自分が不利だと思うことに、言い訳をつくらないことも大切です。



107.伝統を学ぶ

 伝統をくむ必要を感じます。そのなかには、多くの学ぶべきものがあります。人間の心とそれがどのように表現されてきたのかを学びましょう。
 世界中に多くの文化遺産に学びましょう。あなたを刺激し、モティベートをかけてくれます。あなたのつくり出す世界の大いなるヒントになります。
 たとえば、美空ひばりの歌でも、そのことば一つひとつに彼女の人生のみならず、戦後、日本の歴史や生活まで入っているのです。そのことばを学び、今に生かすことで大きなエネルギーと力が生まれます。ブレスヴォイスにも、多くの先輩の残してくれたノウハウ、マニュアルが受け継がれているのです。



108.ボイストレーナーの必要性

 その人に、100パーセントの力を出させ、それを何倍にもしていきます。少しうまくなったぐらいでは、だめです。根本的に直してもらうことです。
 トレーナーは、自分に厳しくできる場を与えることが必要です。表面的な技術でなく、練習のやり方や判断の仕方を伝えてもらうのです。
 強化トレーニングには、リスクもあります。だから、間違ったことを、的確に指摘できるトレーナーが必要です。のどにこないように体を使うことと、リラックスをしつつ、声の使い方を覚えていきます。結局、トレーナーは、その人が将来、自分で練習できるようにするためにいるのです。30分のトレーニングを30分、ものにできるのがプロです。しかし、本当ならプロにこそ、トレーナーが必要なのですが、日本ではなかなか、そうはいかないようです。


109.マイクの利用法について

 マイクは頼るのでなく、利用するものです。
 マイクを通すと通用するようになるのでなく、マイクなしで通用してから、マイクを使いこなすべきなのです。
 ことばでの乱れは、歌により、マイクを通じると、大きく荒がでてしまいます。エコーなどでごまかさず、しっかりとアカペラでも歌える力くらいはつけておきましょう。マイクに頼りすぎると、声が伸びていかなくなります。だから、よくないのです。
 歌や声の見せ方として、マイクの特性や利用の仕方を知っておくことは必要です。しかし、ヴォイストレーニングは、マイクなしでやることです。


110.ボイストレーニングでの諸注意

○鍵盤をみないこと

○ピアノでなく声に合わせる方が、最初は音はとりやすいようです。しかし、できるだけ、ピアノのひびきにあわせるようにするか、無伴奏にすることです。


111.ボイスクリニック

Voiceクリニックシステム
1.治癒すること
2.正しくすること
3.チェック
  使えるもの/使えないもの/使ってはいけないもの
4.カルテ
5.検査

プロ
よい
発展
○Newtral

病い、けがのままにやっていくと、より悪くなる


112.部分と全体

1)声のベース(部分)で基本をつくっていきます。
 表情や動作をつけないことです。なるべく単純な方がよいのです。この繰り返しによってした、基本の力はつきません。そして、またどのようなものにも応用ができます。
2)歌のベース(全体)を応用していきます。
 表情や動作がつくことによって、基本力がこわれないことです。そして基本的なものを効果的にみせられるようにならなくてはいけないのです。

第6部 ブレスヴォイストレーニングからみた
日本と世界のヴォーカリストの差と克服法

CONTEXTへ戻る