ブレスヴォイストレーニング研究所

「ヴォイストレーニング大全」専用サイト

目次

新刊「ヴォイストレーニング大全」のご案内 [内容について]

[1]「ヴォイストレーニング大全」刊行について

1)テキストの特徴 2)テキストの企画意図

[2]INDEX

1)本文のINDEX 2)Ⅳ知識編の索引    3)音源の使い方 4)正誤表

[3]一般の人用のプログラムメニュ

[4]「ヴォイストレーニング大全」関連の参考応用文献

[5]「ヴォイトレを始める前に」(「大全」のためのまえがき)

[6]「最近のヴォイトレの状況と、ここまでの歩み」(「大全」のためのあとがき)

 


新刊「ヴォイストレーニング大全」のご案内

CD2枚付(リットーミュージック刊)[2,700円+税別]

Amazon       https://www.amazon.co.jp/dp/4845634376/

 

 

[内容について]

 

本書は大きく「ことば編」と「歌唱編」の2つに分かれています。(CDも各1枚)

「ことば編」では、母音、子音の発声・発音から、アクセントやプロミネンス、間などの基礎技術、せりふ、ナレーション、朗読、口上などの、さまざまなことばの表現に関する基礎トレーニングを紹介しています。

ビジネス面では、司会、コミュニケーション、謝罪まで、具体的な文例とともに、CDで無理なくビジネス力を育成させる練習を加えてあります。社員教育、就活ほか、コミュニケーションに役立つ基本文例(あいさつ、あいづち、ねぎらいなど)を収録しました。感謝、共感ワードもマスターしましょう。人前で話すことや会話での基本の声の見直しから、魅力アップに使えます。婚活、自己アピールにも有効です。

中堅、年配者にも、充分に「声という切り口で魅力アップ」できるように構成しました。落語から般若心経まで、声、表情、呼吸とフィジカル、メンタル面での調整と喉を中心にした口腔ケアで、アンチエイジングにも効果的です。(参考:拙著「人は『のど』から老いる 『のど』から若返る」(講談社))コミュニケーションに悩む人にもお勧めいただくとありがたく存じます。

 

「歌唱編」では、声量、声域、音程、リズムなど、本格的な歌唱のための基礎から応用トレーニングです。合唱、コーラスはもちろん、見落とされがちな発声、音感、リズム感の基礎トレーニング、ハミングから音大やミュージカル受験の教則曲まで収録しています。

一般の方には、カラオケの上達から、日々の声トレ、喉トレ、表情トレと美容、健康などの副次的効果とともに楽しく使えると思います。CDでローレベルからハイレベルまで無理なく学べるようになっています。声を出す快感を得て、ストレス解消にも有効です。初心者のみならず、プロや指導者にまで、対応しています。芸事や教授することなどにご利用いただくにもお役に立てると存じます。

毎日歩くのと同じく、声を出すのが心身のためによいと提唱してきました。その実践のために、このCDを是非、活用してください。

普遍的なトピックを厳選し、「基礎の徹底」に重きをおくことにこだわって、構成してありますので、生涯にわたって活用できる1冊となればと願っております。

 

 


[1]「ヴォイストレーニング大全」刊行について

 

1)テキストの特徴

 

このテキストの特徴は、長年のブレスヴォイストレーニング研究所のレッスンのエッセンスを入れつつ、他のスクールやトレーナーが使える標準教科書としてまとめたことです。つまり、研究所の福島英のヴォイトレや、ここのトレーナーのトレーニングだけでなく、日本や世界のヴォイトレのメニュを統括した上で、精選したものです。

 

さらに、音源としてセリフだけでなく、歌唱サンプルを入れたのは、研究所としては初めてのことです。

 

私がこれまでヴォイトレの教材に、ことばの発声のサンプルは、声優、役者で入れても、歌唱で入れなかったのは、歌唱における発声は、せりふ以上にそのサンプル音源に影響を受けすぎるからです。せりふでも影響を受けますが、歌唱発声は、本人が気づかない点でリスクが大きいからです。(これは、ここでトレーナーを専任一人(あるいは私一人)でヴォイトレを教えないようにしていることと同じです。)「一人のアーティストの歌しか聞いていない人は、早くそれっぽく歌えるようになるのですが、そこから先にいけなくなるのと同じ」と例えてきた通りです。

今回、歌唱のサンプル音源を入れた理由の一つは、巷のヴォイトレのいろんなサンプル見本があまりに稚拙なものが多く、使うどころかくり返し聴くにも耐えないからです。たとえば、「のど声をなくす」というサンプル見本が「のど声」では、聞かない方がましでしょう。それとともに高音やピッチ、リズム、歌唱テクニックがメインで、声そのものをよくするヴォイトレ教材といえるものがほとんどないからです。

(この点は、私も最初のCD付の本である「声がみるみるよくなる本」が、世の中のニーズにあわせたため、ヒットしたものの実のところ、ヴォイトレというよりも、アナウンスの発音、滑舌中心の練習本になってしまったことへの責任を感じたことに起因します。)

 

「あなたのこの声(発声)はどのようによい」、「その声をどうすればよいのか」というのはCDでは伝えられないわけです。声のよしあしは、そのスタンスや目的とともにあるからです。これは、厳密には、レッスンで個別にしか対応できないことと思っています。)

 

しかし、このCDでトレーニングしておくと、少しは高いレベルでの判断を求められるだけの基礎づくり、準備になるでしょう。自主トレの教材として、どんな目的にも充分に使えることを目指しました。

 

本やCDは、啓発やプレゼン的な使い方をすることが多いのですが、(つまり、初めての人にわかりやすくレクチャーするのが目的となりやすいのですが)私の方針としては、トレーニングとしてリピートするのに使うためにつくっています。説明は本文に入れ、CDは生涯のトレーニングに繰り返し使えることをめざして収録しました。そのために聞きやすく、声そのものが邪魔しないように、もっと根本的なところから学べるように流れを重視してサンプル音源としました。

 

本文は、基本的な説明やトレーニングメニュですから、いつも、同じようなものになりがちですが、今回は、全てのメニュを1つずつ検証し、大幅にリニューアルしました。

 

他のスクールやトレーナーにも使える“教科書”ということも考えて、初心者に欠かせないところは、できるだけ残しました。(そこについても、上級者やプロ、指導者が学べるだけの説明を加えたつもりです。)本当の基礎、基本ということがどういうことかをていねいに解説しました。(ここについては、文量の制限のため省略したところがあるので、補足としてお知らせするつもりです。)

 

たとえば「呼吸で10年かかる」というようなことの意味が伝わらなくては、本当の基本のヴォイトレとならないと思うからです。

 

とはいえ、せりふ、歌唱の“教科書”ですから、扱うのが声だけというわけにいきません。間やアーティキュレーション、ピッチやリズムは、もっとも大切なところや弱点となるところに絞り込みました。難しいところもあると思うのですが、そこを楽しんでもらえたらと思います。

総じて、くり返して飽きず楽しく練習できるように構成したつもりです。

 

CDⅠの「ことば編」には、これまでのテキストの欠点を補って、発音や滑舌だけでなく、同じことばを声の力でどう表現するのかを中心にしました。そういう観点で、活用してほしいと思います。

 

CDⅡの「歌唱編」は、最終的にコンコーネ50の1番でまとめました。クラシックの発声も大切というだけではなく、このわずか1オクターブと3度の80秒ほどの曲(音大受験生が扱うくらいのもの)がいかに発声や歌唱にとって大切なのかを感じとってもらうためです。

 

ここは、イメージを大切にしたいので、サンプル歌唱を省き、3つのキィで入れてあります。自由に使って、今の実力を確認するとともに、具体的にギャップを知って練習してください。

 

そこまでの7つのメニュで、この曲のほぼ全てのフレーズに慣れるようにしていますから、初心者や読譜のできない人でもスムーズに入れると思います。(コンコーネ50は、50曲とも歌集、CD共に販売されています。その50曲の1曲目だけで、どれだけ学べるかということです。)

 

尚、メニュは初心者を念頭に入れつつ、プロ、指導者レベルのものも入っています。多くの人は、難しいというのを高音や音域の広さ、地声、裏声のチェンジなどと思っているのですが、そんなことは、声の基礎とは、あまり関係のないことです。発声には、もっと根本的な基礎があるのを知ってもらえたらと思います。

 

全てのメニュを一律にこなすのでなく、今、できるメニュを確実に一歩ずつ、深めるように使っていただくなら、必ずお役に立つと思います。これをどのように、自分に使っていくのかということが学べたら、どのようなヴォイトレやレッスンも、とても有意義なものになると思います。

 

無理なメニュ、使えないところはパスしてください。ヴォイトレにふりまわされ、表現への道を進めないことのないように、広く世に問うことにしたのですから。

 

 

 

2)テキストの企画意図

 

声のことやヴォイトレで、もう迷わないように、ほとんどの人がヴォイトレで迷っていることを解消するためにつくりました。この機に是非、重用してください。

 

このテキストが画期的な点は3つあります。

第1に、よくあるカリスマトレーナーの○○流とか○○式という個人技でなく、多くのトレーナーのさまざまな方法やメニュで共通している要素を網羅したものになっている点です。複数のトレーナーが、あらゆるジャンルの人に使っているものの最大公約数的なものを厳選したので、初級、基礎の教材として、もっとも必要な客観性が与えられるということです。

 

第2に、長期的に持続した上達を目的としていることです。

誰でも使える入門用のメニュは、わかりやすく簡単で人を選ばない代わりに、平均的な成果しか出し得ないものです(カルチャー教室の月1、2回の講座のようなもの、あるいは、その日だけの体験の気づきでの満足を目的とした1日体験レッスンやワークショップのように、その後の持続的成果に結びつきにくいものになりがちです。そうせざるを得ない事情もあるので、それは仕方ありません)。

しかし、このテキストは、そこで終わらないようにすることに留意しました。そのために、「何をもって基本というのか」ということの説明を、ていねいに入れました。また、それぞれのトレーニングの目的と意味も、できる限り加えました。

 

第3に、話すこと(ことば)と歌うことの声の違いの問題について、最終的な解決を図ったことです。日本では、せりふの声と歌の声を別に考えることが当然のようであり、トレーニングや指導機関も分かれています。アナウンサーと声優と役者と歌手と、発声も基礎練習も異なっているわけです。しかし、本当の声の基本トレーニングであれば、相手もジャンルも選ばないものと思います。

 

このテキストは、ことばと歌唱、両方を含めた上で、現状をもふまえて一般の人や指導者が使いやすいように、テキストは前後でCDは2枚に分けました。でも、その連結部のトレーニングの習得は、ヴォイトレであれば欠かすことができないと思い、特別に加えてあります。

 

今や声の仕事もボーダーレスの時代です。現代の声のマルチタレントは、語りも歌もできるお笑いタレントです。そこにも、充分、対応させました。

 

混迷しているヴォイトレの状況下で、ヴォイトレをする人には、混乱しているところが多々あると思います。それを念頭におき、これから始める人はもちろん、すでに一所懸命にやっている人やプロの人から、指導者、トレーナーまで、充分に使えるように配慮しました(上級者、指導者向けの内容は、抜かして進めるようにしています)。もっと詳しいことを知りたい人のために、最後に知識編としてまとめています。

 

私は、これまでヴォイトレに関して、多くのテキストをつくってきましたが、この一冊で現場で充分に役立つように編纂したということです。もちろん、トレーニングに迷いや疑問はつきものです。しかし、どうでもよいことに迷ったり振り回されるのではなく、きちんと問題として捉え、向き合えるようになるように意図してつくりました。是非、ご活用ください。

 

※私はヴォイストレーナーとして、長年に渡り、第一線で数え切れないほどのクライアントと接してきました。あらゆる年齢層のほぼ全職業、特に声に関する職の人にほとんど関わってきたと思います。幸いなことに研究所として十数名のトレーナーと組織で行ってきたので、多くの人に長く関わることができています。すると、5年10年単位での変化もわかります(長い人は、20年、30年といらっしゃるわけです)。

 

マンツーマンというクローズのレッスンでは、盲点となってしまう多くのことがあります。たとえば、そのトレーナーのやり方に合わない人はやめていき、効果が出る人だけが残るので、トレーナーのやり方も、トレーナー本人が気づかないまま、どんどん偏っていくということです。トレーナーは、万人に効くと確信しているのですが、その方法が人を選んでしまうわけです。(声や歌については、そのマッチングこそが、最大の難関といえるのです。)

 

そこで、研究所では、あえて、クライアントに最初から複数のトレーナーをつけ、異なるタイプのトレーナーの指針、価値観、評価基準、方向、メニュを共存させてきました。混乱や矛盾を恐れず、複数のトレーナーの個人レッスンで成果を比較し、検証し、修正し続けてきたのです。

 

そのなかでは、クライアントは、自ずと判断力をつけ、主体性を確立させていくことになります。トレーナーも、他のトレーナーの方法に加え、さまざまな分野のプロや特殊なタイプのクライアントに接し、常に学ばざるをえない状況で真の対応力をつけていくわけです。

 

今回、その総決算ともいえるテキストとなりました。多くの皆様にお役立ていただけたら幸いです。これまで通り、どんな些細なことでもフィードバックを期待しております。共に学んでいきましょう。

 

 

 


[2]INDEX

 

1)本文のINDEX

 

PART I 準備編

(1)呼吸・発声

1 ウォーミングアップと柔軟体操

2 ストレッチと筋肉強化

3 姿勢

4 呼吸

5 発声

6 共鳴とフェイストレーニング

 

PART II ことば編

(2)発音

1 日本語の発音

2 母音の発音

3 子音の発音

4 子音① カ行・ガ行

5 子音② サ行・ザ行

6 子音③ タ行・ダ行

7 子音④ ナ行・マ行

8 子音⑤ ハ行・バ行・パ行

9 子音⑥ ヤ行・ラ行・ワ行

10 拗音・撥音・促音など

(3)ことば

1 アクセント

2 イントネーション

3 プロミネンス

4 滑舌

5 間とリズム

6 緩急とメリハリ

7 さまざまなことば

8 会話

9 ビジネス

(4)せりふを読む

1 ナレーター

2 ラジオパーソナリティ

3 司会者/アナウンサー/インタビュアー/レポーター

4 演劇/ドラマ/アニメ

5 吹き替え

6 朗読/語りもの/落語

COLUMN 「ことば」から「歌唱」へ①

 

PART III 歌唱編

(5)声量

1 ハミングとリップロール

2 ロングトーン

3 クレッシェンドとデクレッシェンド

4 フレーズキーピング

5 ヴォカリーズ

6 レガートとスタッカート

7 低中音を強くする

(6)声域

1 声域をチェックする

2 低音域

3 中音域

4 高音域/ハイトーン

5 地声から裏声、ファルセット

6 声域内の声の統一

COLUMN 「ことば」から「歌唱」へ②

(7)音程/音感

1 音階

2 全音と半音

3 メジャースケールとマイナースケール

4 1度と8度の音程

5 2度/3度/4度の音程

6 5度/6度/7度の音程

7 音感を鋭くする

(8)リズム

1 リズムに慣れる

2 テンポとタイム感

3 拍子

4 強拍と弱拍/表拍と裏拍/強起と弱起

5 ビートとグルーヴ

6 シンコペーション

(9)歌唱技術

1 音の感覚

2 声に気持ち

3 フレーズ

4 アーティキュレーションとダイナミクス

5 ヴィブラート/パッセージ

6 スキャット/フェイク/アドリブ

7 コーラス/デュエット

8 オリジナルフレーズ

 

PART Ⅳ 知識編

(10)声と身体

1 のどと声帯

2 呼吸器官

3 声区

4 音痴/年齢による変化/性差

5 声の管理と注意

 

 

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2)Ⅳ知識編の索引

(p259)1.のどと声帯

「咽頭」 気管 食道 「喉頭」 軟骨部分 「のどぼとけ」 声帯

甲状軟骨 甲状披裂体 輪状軟骨 仮声帯

硬口蓋 口腔 舌骨 喉頭蓋 声門 鼻腔 軟口蓋   口蓋垂 舌根部

(p260)外側甲状披裂筋 輪状軟骨 声門 甲状披裂筋の外側 声帯筋 横披裂筋 斜披裂筋

「喉頭原音」 無声音 「口腔」 「鼻腔」 声道 音色 オーボエ 摩擦音 振動 開閉運動 (声門閉鎖不全) かすれ声

(p261)2.呼吸器官

呼吸中枢 大脳皮質 呼吸筋、喉頭筋、顔面筋 呼気量 「横隔膜」

「胸郭」 「胸式呼吸」 「横隔膜」 「腹式呼吸」 肋骨 胸腔 腹腔

(p262)(横隔膜) (胸郭) 吸気と呼気 気管 肋間筋 外肋間筋 内肋間筋 弛緩、伸長

(p263)(腹筋、背筋、臀筋、骨盤筋) 共鳴器官 咽頭腔、口腔、鼻腔

(p264)3.声区

声区(レジスター) 音色と音域 頭声(ヘッドヴォイス) 胸声(チェストヴォイス)

「地声」「裏声」 輪状甲状筋(前筋) 甲状披裂筋(内筋) 閉鎖筋 (声帯粘膜) 裏声(ファルセット)

(p265)4.音痴 年齢による変化 性差 音痴 大脳の先天的音楽機能不全 聴覚、音声障害(者) 調子はずれ アクセント、イントネーション 音感

第二次性徴期 声変わり ボーイソプラノ 男性ホルモン のどぼとけの突起(喉頭の甲状軟骨) 太い声

(p266)輪状甲状筋 声道 共鳴周波数 音声障害 変声期

萎縮 更年期 女性ホルモン 声帯浮腫(水ぶくれ状態) アンチエイジング

(p267)5.声の管理と注意

長話 長電話 肉体的な疲労 精神的な悩み モノマネの声 寝不足 睡眠 充血 ばい菌やウイルス マスク 風邪 乾燥

(p268)冷暖房 のどの粘膜 運動 表情筋 タバコ お酒 アルコール 栄養価 刺激するもの カラオケボックス

(p269)水分 コーヒー ミルク 炭酸 唾液 のどアメ トローチ 唾液 トローチ類

満腹時 便秘時 空腹時 下痢時 風邪 炎症 痰 共鳴体 体力 摩擦音

(p270)気管支炎 声の障害 生理 ホルモン 自律神経 血液の循環 ダイエット 便秘 過換気症候群 失神 ロックコンサート 過度の換気亢進 手足のしびれや動悸、息切れ 自律神経の過敏反応 呼吸中枢の異常

(p271)過緊張音声障害 急性喉頭炎 嗄声(させい:声がれ) 急性喉頭蓋炎 喘鳴(ぜいめい:ゼーゼーいうこと) 声帯みぞ(溝)症 声帯結節

(p272)声帯ポリープ 粘膜 ポリープ様声帯 ステロイド 声帯粘膜下出血 喉頭ガン

声帯麻痺 反回神経(下喉頭神経) 輪状甲状筋 上喉頭神経外技 上喉頭神経内技

のど荒れ 花粉、乾燥、冷え

(p273)咳 咳払い トローチやあめ 痰 噛み合わせや食いしばり 頭痛、肩こり、耳鳴り 頸椎 胸椎 腰椎 腰痛 消化器官や仙腸関節 生理痛、便秘、膝の痛み 歩行困難 スマホ歩き 姿勢 こめかみの側頭筋 ほっぺたの咬筋 閉口筋

 

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3)音源の使い方

 

(1)音源の使い方

 

ヴォイトレのレッスンでは、同性(同じ声質や声域の)のトレーナーを見本にするとわかりやすいのは確かです。しかし、異性(異なる性質や声域)のトレーナーが教えることも、一般的に行われています。

前者では、わかりやすくまねやすい分、よくないところ、自分には合わないところも知らずに得て、くせをつけてしまうリスクがあります。後者では、自分と異なるタイプから、声そのものをまねしにくい分、発声、共鳴といった人間に共通の原理を学べるメリットがあります。

そこで、この音源では、ことば編で男女2人(メインは男性)、歌唱編で男女2人の4人でサンプルを入れています(同じメニュを男女2通りで入れているのではなく、どちらかで入れています)。

 

 ことば編は声優、歌唱編は声楽家です。これも一人のトレーナーの声の個性に影響されすぎないための方法です。ことば編を男性にしたのは、日本人は総じて深く太い低い声が苦手な人が多く、そこのヴォイトレが盲点となっているからです。私の知る限り、これまでの音源などでは、見本の発声は、必ずしもよくないし、個性的な発声はくせとなってうつりやすいので最大の害となっています。オペラ歌手のように歌いたくないという人もいるのですが、これは、歌唱といっても基本の発声のためのトレーニング教材です。つまり、役者、声優や声楽家のもつ体、呼吸、発声、共鳴を身につけていくのを第一目標としています(発音、メリハリ、音程、リズムなども、その副次的な効果として考えています)。

 

歌唱フレーズの展開する音域については、メニュによって異なります(ドを中心に、低い方へソ、ミまで、高い方へ1オクターブ上のド、ミ、ファ、ソ、シまで使っています)。

ほとんどは、女性が地声か裏声かのどちらかでも歌える1オクターブほどを中心としていますので、子供でも使えます。とはいえ、その人には低すぎたり高すぎたりするところがありますので、出ないところは無理に出さずスルーしてください。

※女性は、ピアノで聞いた音と同じ音高をとりますが、男性は声変わりで1オクターブ声が低くなり、1オクターブ低い音を出すようになります。

地声と裏声を合わせた声域では、女性の方が個人差が大きかったのですが、今や歌唱では男性でも女性の声域まで使う人が珍しくなくなったので、歌唱編でも、男女を分けずに一本化しています。どのように定めても、キィの合わない人は出てくるからです。

 

 演奏のパターンは、「基本フレーズ(イントロ)+サンプル歌唱フレーズ+トレーニング用フレーズ」です(イントロが短くなっているのもありますが、見本フレーズの後を同じように練習してください)。

 たとえば、01は、ド(C4)から始まり最高音がミ(E5)に届くまで、「トレーニング用フレーズ」が半音ずつどんどん上がっていきます。

原則として、女性は男性の見本より1オクターブ高く、男性は女性の見本より1オクターブ低く出してください。大半の人は、意識しなくともそうなります。

個人差やレベルがあり、無理な声域も含まれているので、そこは、カットするか聞くだけにして声を出さないでください。途中で1オクターブ上げたり下げたりして使ってもかまいません)。

 

 

(2)CDⅠ、CDⅡの使い方の解説(補足版)

 

本文を基礎として読んだ上でお使いください。

 

ことば編

 

これは、ことばの表現トレーニングです。しかし、ことばだけでなく、声そのものの使い方や音色についてこだわったところに独自性があります。

 

 

・全体の概略~ことばの表現トレーニング

 

50音 日本語の母音子音などの発音トレーニング。

目的とする発音が2~3音入っていることばのトレーニングです。

日本語の高低アクセント

イントネーション

プロミネンス(強調)

早口ことば、難しいもの

 

せりふ、ことばの表現技法、メリハリ

2音から15音まで→歌唱編でも使えるように

声をお腹から出しやすくする

声色 同じことばを音色を変えて言う

 

挨拶、ていねいなものと同僚や部下にかけるものと2通りです。声のトーンやニュアンスを使い分けましょう。丸ごと覚えると、社会人として、ことば遣いのレベルアップに役立ちます。

気持ちや言いたいことを伝えること

ビジネス常用語、謝罪、感謝、共感のトレーニング

 

プロの職業のせりふ、MCのトレーニング

般若心経

 

 基礎トレーニングは、上記のように大きく4つに分けられます。この4つを分けると、次の仕事に向きます。

アナウンサー、ナレーター

俳優、声優

ビジネスマン、一般

歌わないという人もCDⅡ歌唱編の10、01、06は、やっておくとよいでしょう。

同じく03(04、05)、11、13、07もお勧めです。

 

 

・メニュの使い方(本テキストの補充説明)

 

50音~日本語の音の数について

日本語は、50音といっていますが、母音5つに子音カ、サ、タ、ナ、ハ、マ、ヤ、ラ、ワで、マトリックスにして5×10で50音です。しかし、ここでヤ行のイ、エ、ワ行のイウエオヲは、今は同じ発音なので省き44音、ンを加えると45音です。濁音がガ、ザ、ダ、バ行、半濁音パ行で5×5で25音、合計70音。拗音が3×11、鼻濁音が拗音も入れると5+3で8、促音「ッ」、近年では外来語が加わります。どう教えるかにより変わらざるをえません。

「ん」も発音では5つあるのです。母音はアイウエオの5つとなっていますが、意識しないでいろんな「ア」を使い分けているともいえます。

他の言語のように二重母音、三重母音はないと言われても、実際は使っていますし、日本語には長音(ー)もあります。つまり、基本としては、文字で書き表されたものを練習しておくのにすぎないのです。そういう点では、外国語などに学ぶ方が、少なくとも発音から共鳴については、深められると思います。(→外国語のメニュ)

 

母音のことば

基本の母音、5つのそれぞれの文例です。

1.発音に気をつけてしっかりと読む

2.感じが伝わるように読む

それぞれの母音には、構音からくる性格があります。それは、言語の違いを越えて人類に共通する音感覚です。「アー」「オオ」とか感情を込めた、意味内容はなくとも、人類が共通して発する音(感嘆詞など)があります。そこから言語も生じたのです。

このテキストにオノマトペなどを入れたのも、そういう感覚を音色として捉えておくことが大切だということです。その上に発音があるということです。音―言語、感じ―ことばの二重構造を捉えて欲しいのです。感嘆詞、そして、そこからのことば、「ア」は、「アー」ということばを発するニュアンスは、口内の感覚と共にあります。「朝」「さわやか」と解放されていく感じがあり、それは共鳴、ひいては、歌声にまで大きく影響していくのです。「イ」「ウ」「エ」「オ」に関しても、ご自分で感じてみてください。(→母音と共鳴)

 そういう感覚に鋭くない人は、是非、オノマトペで発音の感じを吸収してみてください。(→オノマトペ)

 

※本テキストは、発音を学びつつも、その根底にある言語のベースの音、声づくりに焦点をあてています。大げさに感情を入れて言ってみてください。

 

母音

 ここからは、特定の音を3音くらい入れた文例で日本語の発音を学んでいきます。それぞれテキストに細かな注意や間違いやすいところを述べてあります。

音声としては、1.発音練習、2.アクセントやイントネーションなどの練習、3.伝わる表現としての練習です。例文から古風なもの、今風なものと、できるだけ広範囲に入れてあるので、それも感じて言語感覚を磨いてください。次の早口ことばに入る準備の練習です。

 たとえば、1.サンプルと全く同じに言う、2.早口で言う、3.目一杯ゆっくりと言う、4.情景や心情の描写を入れる、5.相手に語りかけるように言う(誰にどのように)、6.ふりをつけて言う、7.適当なメロディで歌い上げる、など。歌の基礎トレーニングにもなります。

 

高低アクセント

 アクセントでの高低の感覚を身につけます。頭高型と尾高型がもっとも逆になっているのでわかりやすいでしょう。高低(低高)の音程をどのくらいの幅でとるかは、個人差や使う状況で変わりますが、強調して練習しておきましょう。大体は、3度(ドーミ、ミード)くらいまでです。強弱アクセントの言語の方が高低が強くつくようですので、この高低を強弱で捉えてみてもよいでしょう。

 ことばでは強く言うと普通は高くなります。もちろん、脅す、怒る、ドスを効かせるときなどは、より低く強く言うこともあります。方言と切り替えられない人、特に西の出身の人は、この共通語のアクセントを学んでください。アクセント辞典を参考にしましょう。

 

イントネーション

 高低の動きを捉え、次に、意味が伝わるように読みましょう。

26では、同じことばなのにイントネーションで意味が全く変わります。ことばではなく、その言い方一つで誤解されたり意味を曲解されたりすることがあります。思い当たる人には必修です。高低だけではなく、音色やニュアンスに敏感になりましょう。

 

プロミネンス

 同じことばなのに、どこを強めるかで伝わるものが違ってくる文例です。サンプルでは、これまでのナレーター調から声優、役者調へトーンが変わります。

強弱、高低、音色、テンポ、メリハリのつけ方など、どう変えるとどのような表現効果を生じるのかを学んでいきましょう。

 

早口ことば

 滑舌のトレーニングですが、これまでの要素が全て入っています。速く、つっかえないように読むのも練習ですが、最後の方のメニュの「外郎売」と同じく、口上として表現が伝わるように練習しましょう。舌がよくまわれば、発音がもっとも伝わるというわけではないのです。  「立て板に水」で滑ること(伝わらない)こともあるのです。

イメージや熱意など、いろんな要素があります。それを感じていってください。

 スピードにも挑戦してください。サンプルを追い越してどこまで読めるか、やってみてください。

 

 サンプルでは、不しぜんなほど間のとり方を変えてみました。実際にはありえない読み方ですが、多くの人は、間をあけず早く読むので聞きずらくなり伝わりにくくしています。緊張すると、なおさらそうなります。

読むときは、間違ったりつっかからないことばかりに気がいくと、読み終えたことで満足してしまいます。すると、しっかりと伝わらないという失敗に気づきません。そういう人は、録音、再生をすると、常にショックを受けるほど気づかず、直せずにいるのです。

このくらいに間をとることは、人前ではとても難しいです。しかし、相手が幼児なら、あなたもそうしませんか。実際のシチュエーションでは、このくらいの間でも、いえ、もっと間をとっても通じます。きちんと伝わるのです。

つまり、適切な間をとることは、最高のレベルの技術であり、伝えるための秘訣と知って欲しいのです。文と文の間の間は、リーダーなどはマスターしているものですが、文の中の間をとれる人は少ないものです。大げさに間をとることを練習しておくとよいでしょう。

 

チェンジオブペース

 これは、サンプルとしては、実践的に(使用例のように)入れました。

全体的に、サンプルは大げさにして、表現に慣れない人が口先の声だけでなく心身を使うことを誘うように心掛けています。練習する人には、「サンプルより大げさにやってください」と言っています。それでもサンプルの半分くらいしかできないものなのです。「やり過ぎと思うくらいやって、初めて練習になります」とは、どこでも指導するときに言う常套句です。

 でも、これは逆の例です。普通の人には読み上げただけにしか聞こえないのではないでしょうか。ペースのチェンジなのに、そのことには気づかないのではないでしょうか。「わたしの友だちは」で、少し切ったなとわかればレベル1、「国に」のあと、「住んでいます」で少し小さく納めたと気づけばレベルアップしたのです。

声の大小は、わかりやすいのですが、日本人はスピードやテンポの変化にうといです。速く→ゆっくりの違いがわかりましたか。単に速く読み、ゆっくり読みつなげてみてください。 

うまくできない人は、全文を1.速く読み、2.ゆっくり読み、3.速く―ゆっくり読みでやりましょう。不しぜんですね。意味をとり、伝えようとして、そこで呼吸が動いて、それで速くしたらしぜんと呼吸が間をとり、次にゆっくりとなって、そのあとは、(指示がないところ)しぜんと納まるのです。簡単そうにみえますが、速くする、ゆっくりするというのは、秒速10文字と6文字とかいう違いではなく、車の運転のように加速度がつくのです。ともかく、最初は、速く―ゆっくりという違いが分かれば充分です。

 

緩急

 これは、緩急としては大げさに聞こえますが、実際にこのくらいのメリハリは使います。合わせてやると自分のが浅く薄くわざとらしく聞こえませんか。それが、心身を使っているかどうかの違いなのです。

息の使い方、体の使い方(イメージですが)に着目してください。2パターン入れています。後の方が応用で、より感情を入れ、体も深く息を使い、伝わる度合いも高くなります。ナレーターと役者の違いのようですが、どちらもできることを目指してください。

 

メリハリ、抑揚

 「大きく構えて取った」という一文をどう表現するかです。サンプル文例のように「おーおきく」とかニュアンスを文として使うことはありません。それは、状況が決めるものでしょう。演者の個性、あるいは、ディレクターの感覚で判断されることもあります。どれでも、できること、いや、10パターンくらいに演じ分けられることが望ましいでしょう。

 

抑揚、強調

 4つの要素で言い分けるというよりは、それを目安に、いろんな表現をしてみてください。まずは、4つを充分に聞いて、味わってください。どう感じるのか、どう受けとめられるのかを書いてみましょう。「どの場合に」「どういう人が」「誰に」、というシーンを思い浮かべてください。

あなたなら4つのうち、どれがよいと思いますか、まずは、それをやって聞いてみましょう。何十パターンもやってみましょう。いくつくらいになりましたか。いくつもやると、大体、似通ったものが多くなるはずです。自分の得意なもの、不得手なものがわかるでしょう。その上で、この4つの要素に着目して、言い分けてみてください。

 

感情を入れる

 短いことばで感情を表現します。前半は意味のないことば、後半はよく使うことばです。イメージがないと心が入ったことばにはなりません。わざとらしくならないために何が必要なのかを学びましょう。

 

感情を表現

 ことばに与えられた感情を入れる、感情を切り替えるといった、いわば、多重人格トレーニングです。得意、不得意を知り、長所を伸ばし短所を補いましょう。

 

ヴォリューム

 これは、声量の変化に絞りました。大きな声が出せない人が増えています。これを、1、2、3倍ではありませんが、大げさにやってみましょう。その上で、小さな声で言いましょう。案外と伝わるでしょう。なぜでしょうか。

 

ことばの表現(2~15音)

 声をあなたのイメージで表現してみてください。できたら自分の文例をつくってみるとよいでしょう。あなたのなかにあることば、あなたのつくったことばが、あなたのイメージ通り表現できますか。それができないのに、他人の与えたことばをすぐに表現することは難しいと思います。

※サンプルは見本として使いますが、言うためだけではなく、聞くことによって学べることを忘れないでください。できないところは、聞き続けているだけでよいのです。無理にやるよりも、聞いて感じて、イメージや表現する心を養うことです。プロのテクニックに気づくことを深めていってください。

 

声を出しやすくする

 これも、大声のトレーニング(55)と同じで、日頃、声を出さず、出すところがなく、出していない人のための心身の解放から声を体(腹)から出すトレーニングです。朝に声を出すと一日、元気に過ごせるでしょう。

 

声色

 TPOで人の声は変わります。役割を演じるのは、役者だけではなく、一般の社会人でも同じです。声と人格、キャラづくりを学びましょう。

 

挨拶

 研修では、このメニュのそれぞれの2パターンのうち、ていねいな方の挨拶を気持ちの伝わるように言うトレーニングとして使っています。「おはようございます」とさわやかに言うだけでも、けっこう難題です。しかし、地でできる人、よい見本も1割くらいはいるものです。「すいませんでした」だけが全員よかった会社というのもありました。

ビジネスマンに関わらず、あいさつは基本です。特に、これは今日から使えるもっとも実用的なメニュの一つです。

加えて、親しい仲に使えることばを入れたのは、丁寧語よりも心が入りやすいからです。短いということもあります。

ここをしっかりと学ぶと、周りによい見本、悪い見本がたくさんあることに気づくでしょう。表情やしぐさも声に関係しますので、ジェスチャーを交えて練習をしてみてください。外国語などの挨拶を使うのもよいでしょう。12×2の文例ですが、TPOによって、それぞれ何パターンも考えられるでしょう。

 サンプルをよく聞くと、日常で、一般の人でもこのレベルか、それ以上に使っている人がいるのに気がつきませんか。周りに、そういう人がたくさんいると、大体、全体のレベルが上がっていくものです。全くいないなら、あなたが最初の一人になりましょう。挨拶は、伝搬していくものです。ここをマスターするだけでも、本テキストの意味があります。

 

気持ち

 ずばり、気持ちを伝えることばとして、よく使われているものをあげました。その前にも、同調、切り替え、反応などの文例を入れています。

※もうおわかりと思いますが、間、チェンジオブペース、緩急、メリハリ、抑揚、ヴォリューム、声色という感情表現は、分けられるものではなく、また、感情や気持ちを伝えるといっても、項目として分けているだけで、本来、一体のものです。どこからどのように使ってもかまわないということです。

 

関心

 俗に「さしすせそ」といって、相手に好かれるためのことばがあります。「さすが」はその一つです。

言われてうれしい、褒められる、認められることばなどを取り上げます。挨拶のことばとしてはよくても、その言い方で効果は大きく違ってくるのです。

 

あいづち

 あいづちは、人とのコミュニケーションにとても大切な隠れたツールです。覚えておいて使って損はないでしょう。

インタビューで「そうですね」ばかりくり返すスポーツ選手のコメントを聞いていると、ことばを変えなくとも言い方を変えるだけで、もっと共感を得られるのにと思います。必ずしも、実績のある選手順に解説者として呼ばれないのは、言葉力を考えてのことでしょう。彼らも後輩の指導などにあたるとなると、ことばの力や大切さに気づきます。そして話し方の教室に行く人も増え、ヴォイトレにもいらっしゃるようになりました。

 

ねぎらい、いたわる

 これも、人間関係でコミュニケーションに関わるメニュです。お互いの声かけが良好な環境をつくります。

 

語尾

 ビジネス関係のことば遣いで、よくある指摘は「語尾までしっかりと言えていない」ことです。日本語は、語尾まで聞いて肯定、否定がわかります。しかし、そのためもあって、そこをあいまいにすることばがいつも流行します。日本人がいかに自分の意見を明確に打ち出したくないのか、周りがいかにはっきりと言われることをよしとしないのかは、婉曲などのレベルでなく、国民性、日本の文化と言えるでしょう。

とはいえ、ビジネスや芸能ではそれは通じません。ということで、特別に語尾を切り取ったメニュです。イントネーションで学んだように否定は下げ、肯定は上げます。「か」の言い方一つで疑問になるのですが、そこまでの調子も微妙に違うのです。

ここでは、言い切るのがポイントなので、若干、ドライな印象になっています。TPOにあわせて加減して使いましょう。

 

謝罪

 丸ごと文例として、声とあわせて覚えておくとよいでしょう。

電話受付代行サービスの会社で、もっとも大切なのはクレームの処理のノウハウです。それがビジネスの死命を決するところです。そのため、この業界では、声の分析ソフトなどが開発され続けていたのです。

ヴォイトレでのビジネスリーダー、経営者、芸能人などの研修においての主要メニュの一つです。謝罪の仕方一つで、本人も会社も立ち行かなくなったり生き永らえたりするのです。人間関係において、大切なのは言うまでもありません。ビジネスマンや各界のリーダーには、ここだけでも千金の価値があります。言うだけではなく伝わるように学ぶことです。

 

感謝

 挨拶の応用ですが、前向き、プラス面でのことばです。明るく言いましょう。

 

共感

 これも、気持ちの一連のメニュのビジネス版、年上の人などに対する丁寧語バージョンです。共感力も行動から、そこでは、表情、ことばが問われます。

 

CM、ナレーション

 ウィスキーなどのCMが思い浮かぶと思います。

 71、よい声のアンケートで、かつて必ず上位にあげられていた人は城達也さんです。ラジオの深夜放送の音楽番組、JET STREAMのMCであり、「ローマの休日」ほか、グレゴリー・ペックの吹き替えでも有名な声です。これは、そのMCを参考につくりました。BGMがあって、この後にも音楽が流れるというつもりで読んでみるとよいでしょう。

 

司会

 司会は、常套句を覚えておき、通常は、きちんとそのなかで納めます。しかし、時には、その組み合わせで即興で凌いでいく必要に迫られます。場面の切れ目、切れ目でしっかりとまとめ上げ、言い切ることが大切です。

特に、最初、盛り上げるところ、そして、最後のエンディングに失敗は許されません。言い淀まないように、しっかりと心身に入れておきましょう。

 

アフレコ、吹き替え

 対役として女性の声サンプルが入っています。掛け合いや間を学んでください。特に、待って入ると間に合わないところは気をつけてください。

ストーリーの展開によって、これまで学んだあらゆる技法が使われています。子供役と大人役、パパと知人役と、同じ声でも印象が全く違うように使っています。

 

朗読

 ここでは、朗読にふさわしいものを選びました。詩では中原中也、ほかに萩原朔太郎、立原道造、まどみちお、谷川俊太郎など。小説では、芥川龍之介、夏目漱石、尾崎紅葉、樋口一葉などを読んでみましょう。

 

落語

「寿限無」早口ことばの応用になります。

「たらちね」声づかいや口調を学んでください。

 

口上「外郎売」

 滑舌練習によく使われます。メリハリをつけて、芸になるほど完成させて、物売りの口上にしてください。ものを売るのは、価値があるかをみるのに最適です。つまり、ものが何であれ、口上の芸で買う気にさせてしまえるかです。今の香具師は、路上やデパート、TVなどでの物品販売です。ジャパネットの高田明さんにまでつながるのです。営業職はもちろん、プレゼンテーション、ネゴシエーションに役立ててください。

 

般若心経

 これは、つのだ☆ひろ氏が第九(ベートーヴェン)にのせたゴスペル調の絶唱がありました。日本人にもっとも親しまれているお経です。最後の「ぎゃていぎゃていぼじそわか」がサンスクリット語での元の音で、あとは、漢訳ですから、声ではそこだけをくり返してもよいのです。日本人、特に年配の人は馴染んでいるので、毎朝、読経に使ってください。早口で3~5回くり返すのもよいでしょう。

 実際には、息継ぎや休みはなく、木魚を打ちながら、それに合わせて一音ずつ読んでいきます。お坊さんが唱えたものがCDでたくさん販売されています(お寺で売っているところもあります)。グッズもたくさん出ています。意味を学んで読むのもよいでしょうが、まずは、音に馴染んでください。日本語の訳がわかりにくいときは、外国語訳で読むと明確になります。もちろん、訳者によって解説や意味が若干異なります。

 私が日本人の好きな写経より読経を勧めるのは、声にも健康にもよいからです。書くのは正座ですが、読んだり唱えたりする方が運動になるのです。

あとは、「祭りのかけ声」を入れたかったです。是非、そういう生きた声、リズムや動きから学んでください。

 

 

2.CDⅡ歌唱編

 

これまでよく知られている声楽でのパートの分類をかなり大ざっぱに簡易にしてみます。(声楽でも個人差がかなりあり、いろんな分け方があります。ここは、無理にほぼ2オクターブで揃えました)。

参考までに、

(男)低 バス    E2-E4(伴奏E3-E5)

(男)中 バリトン  G2-G4(伴奏G3-G5)

(男)高 テノール  B2-B4(~D5)(伴奏B3-B5)

(女)低 アルト   E3-E5(伴奏同じ)

(女)中 メゾソプラノG3-G5(伴奏同じ)

(女)高 ソプラノ  B3-B5(~D6)(伴奏同じ)

 それぞれ2オクターブで、男女を1オクターブ差(ただし、伴奏は同じ)で、男女の主なパートを6つの声域に分けました。

その上で、全メニュ通しての最低音をE3に、最高音をB5にしました。

このCDの全メニュを通して、最大で使用する声域E3-B5です(ソプラノやテノールの歌曲の最高音には届かないこともありますが、基礎としては、この2オクターブ弱で充分だと思います)。

 

 なお、この音名は、英語表記です。ピアノの真ん中のA(音名ラ、440~444HZ)をA4(ドイツ語表記ではa’)として、そこから低い(ピアノの鍵盤で左)のC(ド)がC4、高いC(ド)がC5です。

このC4は、もっともよく使われているドレミのドです。女性の話声域にあたり、男性は、その音を聞いて1オクターブ低く出すので、男性にも低い方のドと聞こえます。つまり、普通の1オクターブというのは、伴奏でのC4―C5といえます(あるいは、A3―A4くらいで、地声の声域にあたります)。

 E3―B5の音域で使うということは、低いところはバスの低音(E2)からソプラノの高音(B5)まで対応しているのです。

わかりやすく3分割すると、E3-C4が低音域、C4―C5が中音域、C5―B5が高音域です。

A3、B3、C4、D4、…A4、B4、C5、D6、…)と、この表記法では、B-Cのところで数字が変わります。

以下、本文は、声ではなく、伴奏の音域で示しています(男性の実際に出す声は、その音名の1オクターブ下です)。

 実際には、男性は、伴奏ではC4―C5中心にA3-E5くらいの1オクターブ半を使いますし、女性もまた、裏声を加えて、そのあたりです(男性の1オクターブ上より、やや低くなることが多いです)。JポップでもハイC(C6)あたりまで使う人もいます。そのため全体的に広めにしました。

一つのメニュでも高すぎたり低すぎたりするなら、半分くらいで無理せず止めてよいでしょう。その後のところは、流して喉を休めるとよいでしょう。もちろん、途中で1オクターブ上げたり下げたりして使ってもかまいません。

1時間弱のなかに63メニュありますが、30分くらいを使えば充分と思います。組み合わせて自分の使いやすいようにしていってください。

 

 

・全体の概略

 

 01~14までは、男性サンプルでの基礎メニュです。

ドックブレスで体をほぐし、リップロールで表情をほぐし、ハミングや息から声で、準備するとよいでしょう。

ロングトーン、ヴォカリーズ(母音)、レガート、この3つが基本中の基本メニュです。

声域メニュは、その日の調子や自分の声域の目安に使うとよいでしょう。無理に出さないようにしましょう。11、13は低音域、14は中音域です。

 

 15~20は女性サンプル(裏声)で入れています。高音域、裏声、ファルセット、ミックスヴォイスなどのトレーニングです。

20は、ことばと歌唱を結びつける特別なメニュです。

 

 21~50では、21~27がスケール、音感、ピッチトレーニング、28~35が音程トレーニング、36~46がリズムトレーニングと、楽理に基づいた基礎トレーニングです。音大やミュージカル、合唱、オーディション向けに使えるでしょう。

51~60は、やや高度な発声、フレージングのメニュです。(59、60、16などは、初心者は抜かしてもよいでしょう。)

 

コンコーネ50の1番は、(市販のコンコーネ50の高声用、低声用とはKeyが違います)、中声用だけで充分です。

 

  • ことば編を応用してみる

 CDⅠのことば編のメニュのことばを使ってみるのもよいでしょう。ことば編にはあらゆることばの組み合わせがあります。50音から母音、子音、ことばのトレーニング(2~15音)など。オノマトペはスキャットに使えるでしょう。20の「マリア」のところは、COLUMN「ことばから歌唱へ」①、②をよく読んでから使ってみてください。

 

  • 歌唱サンプルについて

 歌唱サンプルは、ヴォリュームをやや薄めて伴奏が聞こえやすくしています。発声そのものを声から学ぶのも大切ですが、できたら呼吸や体を読み込めるとよいと思います。メニュの使い方のサンプルとして入れてあります。

 サンプルの発音を外すと、どれもフレーズのトレーニングとして使えます。つまり、メニュのハミング、リップロール、ヴォカリーズ…など、「この音で行いましょう」というところとメニュのフレーズを組み替えてみると、さらに応用できるでしょう。極端にいうと、全メニュをハミングや「ア」でやってもよいわけです。

 できるだけフレーズのスケールが同じようにならないように入れてあります。ですから、使っているなかでフレーズの形をみてメニュの編集をしなおしてみるとよいでしょう。その形での分類を下記に掲げておきます。

 

  • フレーズの形での分類 

展開とは、半音ずつ、高低に移動するスケール練習のこと

 

<基本展開スケール>

01 ドドドドド 01↗E5高めへ、07↘G3(↗C5)低めへ、 03~08で応用

08 ドレドレド 08↘G3↗E5、12↘E3↗B5広域

11 ミレドレミ ↘G3低い

13 ド#ドド ↘E3低い

10 ドレミレドレミレドレミレド ↘G3低い

02 ドレミファソファミレド ↗E5(半オクターブ)

09 ドミソドソミド ↘G3↗C5(1オクターブ)

19 ドレミファソファミレドレミファソファミレドレミファソファミレド ↗E5(半オクターブ)

51 ソーソファーファミーミレーレドー ↗E5(半オクターブ)

56 ドレミファドファミレドレードシラソファミレド ↗F5(1オクターブ)

18 ドレミファソラシドーシラソファミレド ↗G5(1オクターブ)

 

<変則展開スケール>

21 ドレミファソ→白鍵 ↗E5

20 ラドドラレレラミーレ ↗E5

(コンコーネ50の1:展開あり、14↗E3、15↗G5、17↗B5高音、52↗C5、54↘A3)

 

<リピートだけのスケール>

グリッサンド

3/4拍子

6/8拍子

コンコーネ50の1:55、54、

全通し61(62、63)

 

このようにみると、音域において、ほとんどの基本のスケールはC4から始まり、高い方はC5(ド)、E5(ミ)、G5(ソ)まで(最高音は17のB5)、低い方はG3(ソ)、(最低音はE3)で終わっています。54の↘A3、56の↗F5は、その例外です。

 

 

・メニュの使い方(本テキストの補充説明)

 

ハミング

「ン(hum)」で5つですが、切らずにひびきをつなげてみましょう。共鳴から発声をつかみ、呼吸の支えまで確立していく基礎練習です。調子を整えるのにも使えます。

低い方は、胸に充分ひびかせる感じで、高い方は、しぜんと顔面(鼻の奥や眉間)にひびきが集まってくるようならスムーズにいくでしょう。

ハミングというと、とかく頭声や裏声の練習に使われることが多いのですが、それだけではもったいないことです。慣れてきたら、次のメニュ2もハミングを使ってみるとよいでしょう。

☆[上級向けアドバイス]上のドまで胸のハミングで強めに出してみます。上(頭部)のハミングを使わず、高いド(できたらミ)まで胸でひびかせ、そのときに、倍音のようにマスク(マスケラ)に小さくひびく点を感じ、どの音域でも、すぐに移行できるのが理想です。のどに負担をかけてはなりません。

 

リップロール

リラックスを目的として軽く行うことが多いのですが、いろいろと使えます。一定の息の量でコントロールします。多すぎたり少なすぎたり、唇がしめやかにほどよい強度で合わさっていないとうまくできません。口笛なども練習するとよいでしょう。

地声、裏声、母音(ヴォカリーズ)と使えます。

口先で音をつくると、のどの解放になるのと舌のリラックスになるので、よく取り入れられます。その点では、口内を狭くするハミングよりもとっつきやすく、効果を感じやすい人も多いのですが、その分、あいまいに使われていて、発声そのものに結びついていない人も少なくありません。

高音、裏声、ピッチ(音程)に、普通の発声とは、別のアプローチで効果を狙ったものといえます。

ハミングと同じく、活かせる人は使えばよいし、苦手な人は、どちらも使う必要はありません。発声がよくなると、両方ともしぜんとできるようにもなるので、うまくできないなら、その原因を探ることもよいでしょう。 しかし、この2つができないと、あるいは、行わないと発声、共鳴、歌唱ができないのではなく、補助手段としてのトレーニングメニュです。しかし、まるで万能の魔力があるように取り上げられているのは、頼り過ぎでしょう。

「トゥルル…」とタングトリルに応用してみてもよいでしょう。これは電話の呼び出し音をまねしてみましょう。

 

ロングトーン

レガートと並び、歌唱や発声、共鳴の基本中の基本メニュです。ヴィブラートも同じ類です。クレッシェンド、デクレッシェンド、メッサ・ディ・ヴォーチェは、その強弱、ヴォリュームの変化での共鳴や圧のかけ方の応用練習です。

ヴォカリーズでの母音の発声を共鳴として揃えていくこと、S→Zという無声音から有声音、ドッグブレスの呼吸トレーニングと、形こそ違え、全て基礎メニュといえましょう。

 

深い声

ことばを深い声にして「ハイ」として、それを音に合わせてスタッカートして、レガートの「ラーラーラー」につなげます。

☆軽くあてるのではなく、深く暗く太い音色、つまり、歌唱のイメージよりは、せりふのイメージ、しかも、腹からの声、ドスの効いた声、シャウトと考えます。そこから「ライ」や「ララ」につなげ、歌唱の声につなげるということでは、高度なメニュにもなります。この場合、のどの解放や深い声の芯、ポジションができていないと、のどを痛めるリスクがあります。ただでさえ、日本人は、深い胸声や低声が苦手な人が多いので、無理はしないでください。

 

声域のチェック

 ここでは、ドレミレドC4(男性はC3)D4E4D4C4のスケールで、低い方はE3(アルト、バスの最低音)まで、高い方はB5(メゾソプラノとソプラノの間、テノールの最高音に近い)ところまで、2オクターブ半を低音域―高音と移動して、チェックします。

すべての音域を出す必要はありません。人間の声の声域として考えてください。きちんと出すなら、一人でこの3オクターブ近くをマスターすることは、あまり意味のないことです。むしろ、このなかの1オクターブ半くらいをパーフェクトに出せるようになるように集中してください。

 

低音域 

半音のスケールです。胸声を養います。ハミングも胸を響かすようにするとよいでしょう。

1オクターブ上げると中音域の練習となります。

☆30秒弱なのでノンブレスでできたら、けっこうな呼吸保持力です。

 

中音域

 そのまま高音域の練習に入ります。14、15、17、52~55のメニュは、61のコンコーネ50の1の解説も参照してください。

 

高音域

 頭声の裏声メニュですが、最初は1オクターブ下げて使ってみるとよいでしょう。

 

ハイトーン

☆グリッサンドは、難易度が高いです。低いところでやってもよいでしょう。

 

裏声、ファルセット

 裏声、ファルセットです。下げて地声で使ってもよいでしょう。

 

声域の統合

 地声―裏声の切り替えをスムーズにするメニュです。どの音でもかまいません。上がるときと下がるときが異なってもよいです。少しずつ自分の喚声点を覚えていきましょう。調子のよいときは、なるべく地声で広くとりましょう。

 曲によって喚声点は変えるとよいと思います。ですから、いつもチェックしつつ、柔軟に使ってみましょう。12と合わせて使うとよいでしょう。

 

共鳴

 「イ」「ウ」で高く出すのが苦手な人が多いのですが、それは、発音と共鳴に問題があります。深く鋭い「イ」でロングトーンやヴィブラート、レガートを処理するのは難しいものです。「イ」は共鳴での究極の課題といえます。難しい人は、ハミング「オ」「ア」「エ」で始めてもかまいません。

☆「イ」は頭にも胸にもたてに鋭く通り、レベルが上がるにつれ、音域をもっとも楽にとれるし、ひびくようにできる音です。最終的には、「イ」(本当はi)で完成度をチェックしてください。

 

フレーズ「マリーア」

 COLUMNの「ことば」から「歌唱」へ①、②で詳しく解説しています。Mariaのmaとriのつながりもですが、ri-aのi-が大切です。19が、この基礎練習となります。

 

全音半音

 このスケールは、ドレミファソです(この中の音程はドーレが全、レーミが全、ミーファが半、ファソが全で、全全半全となり、長2度、長2度、短2度、長2度です)。順にレミファソラ(全半全全)、ミファソラシ(半全全全)、ファソラシド(全全全半)、ソラシドレ(全全半全)、ラシドレミ(全半全全)とズレていきます。形としては、ドレミファソとソラシドレ(メジャー)レミファソラとラシドレミ(マイナー)が同じです。ここでは省略したシドレミファ(半全全半)を合わせて全5パターンになるわけです。

 

半音

 半音を使った軽快な曲です。少しずつ音楽的な基礎を発声発音に加えていきます。

 

スケール

メジャーとマイナーについては、14、15を対比することです。マイナーの3パターンは、まずは、よく聞いて違いを捉えてください。半音の感覚を磨いてください。特に24、25、26の上降のところを聞き比べてください。

 

アルペジオ

 スケールの発声練習の応用として、曲らしくなっています。発声やスケール練習は単調なので、歌曲と別のように捉えてしまいがちですが、今回、工夫したのは、発声のスケールがそのまま曲の中に入っていることをわかってもらうことです。発声やヴォカリーズ、ロングトーンでさえ、上級者が練習すれば歌に聞こえるということを知ってください。

 楽器のアルペジオ練習が曲の演奏そのものに通じるように、これらのメニュも歌曲の一部、あるいは、歌曲そのものと捉えてみると、より一層、深い練習ができるでしょう。

「ドミソミドミソミドミソミラファレシレソド」と、階名でも歌いましょう。

 

音程

 音程トレーニングの基本練習は、コールユーブンゲンなどがよく使われています。ここでは、ポップスの人も親しみやすいメロディのなかで、テンポや曲調を変えて、それぞれの音程を入れてあります。聞いたり歌ったりしているなかで音感が磨かれていくとよいでしょう。

違和感を感じるところが慣れていない音程です。大体は、31の4度、33の6度、34の7度などでしょう。同じ音程のなかでも、長短、増減とあります。半音の感覚で違いをマスターしておきましょう。

 

転調

 Cから後半のソラシでGへと調が変わったことがわかるでしょう。

 

リズムトレーニング

 拍子としては、4拍子以外に、37が3拍子、40が8分の6拍子、どちらも日本人が苦手とするものです。38に16分音符、41に3連符、45に2拍3連、後は、タイ、休符のシンコペーションなどです。

 

リズムトレーニング

 リズムは、手などで打つ方がはっきりしますが、せっかくですから声でやってみましょう。「タ」「ラ」「マ」などをあげておきました。スタッカート気味のはタ、カ、バ、ヤなど、レガート気味なのはマ、ラ、母音、ハミングなどを使うとよいでしょう。もちろん、階名で読んでもよいです。リズムトレーニングですがメジャースケール、マイナースケール、音程トレーニングなどにもなります。

 

拍子

3/4と6/8の違いを感じてください。まずは手で打ち、次に歌ってみましょう。3拍子と2拍子系の違いといえます。<1、2、3>と<1(2)(3)2(2)(3)>です。

 

アウフタクト

 頭打ちの感覚の強い人は、うまく外していってください。

 

シンコペーション

 強リズムのずれに慣れてください。まず、ズレないように歌ってみてから較べてもよいでしょう。

 

発声

 一度、基本の発声に戻ります。下降形ですので、ピッチに気をつけましょう。

1オクターブ上げたら高声用、下げたらかなりの低声用として使えます。

 

音色

 音色を暗めにして、情感を入れてみましょう。

 

メッサ・ディ・ヴォーチェ

 伴奏にあわせ、強めてから弱めてみてください。

 

アーティキュレーション

 メリハリをつけてみてください。テヌート、アクセントほか。

 

ヴィブラート

 メニュに加えるほどの特別なものではないのですが、少し強調してヴィブラート気味にしてみてください。

 

パッセージ

 発声、共鳴、フレージング、喚声(地声、裏声、ミックスヴォイス、頭声、胸声)、音感、リズム感など、総合的に養えます。ハミング、リップロールの応用で準備運動としてもよいでしょう。

59 Ninaと言うのは、ハミング、i、鼻母音に近い組み合わせです。応用練習ですが、56と同じくベルの音でいろいろと使えます。

60 Naは、これもハミング、リップロールに替えられるメニュです。使いやすいものを使いやすい音で使ってください。

 

コーラス

 2部コーラスの高い方を歌っています。慣れてきたら低い方を歌ってみましょう。

4度は、かなり特殊なケースです。

 

コンコーネ50の1番

 中音域、高音域、裏声、ファルセット、音色、アーティキュレーションのメニュは、コンコーネ50の1番のフレーズから2小節くらいをとって、低音域や高音域に展開(半音ずつ上下降)しています。

 メッサ・ディ・ヴォーチェとヴィブラートは、(9~12小節目、13~16小節目)で、そのまま、それを強調した練習としています。

つまり、ここまでの7つのメニュで、コンコーネ50の1番のほぼ全ての旋律のパターンをふまえたことになります。

 

これまでのメニュとコンコーネ50の1番との対照表

1~2小節目 ドーレー ミーファソ休 低中音域 上降(メニュ14)

3~4小節目 ラーシー ドーレミ休  中高音域 上降(メニュ15)

5~6小節目 ミーレ ドー(シ) 下降(メニュ17)

7~8小節目 ラ―ファミーレ(メニュ52)

 

9~12小節目 ソーシードーソ レーソーミード(メニュ53)

13~16小節目 ソーシードーソ ファソミソレー(メニュ55)

17~20小節目は、メニュ14、15と同じです。

21~24小節目 ミーレドーラソード(メニュ55)

 

メニュ14、15、17、52/53、55/14、15、17、54が入っています。

6節目のシは抜け(メニュ17のあと)、22小節目のドは重なっています。(メニュ17と54)

これは、ブレスの関係でやむなく異なる処理をしました。

6小節目はミーレドで切り、7小節目のシをつけて、メニュ52(ラーファミレ)を始めると(シラーファミーレ)となり、つながります。

22小節目はミーレドで切り、メニュ54(ドーラソード)の23小節目のドを省いて(ラソード)にするとつながります。

 

1曲を通した伴奏が入っています(リピートはなし)。

最初の音は、メニュ61ド(C4)、62ミ(E4)、63#ソ(#G3)

61 中声用は、ドから始まり高いミまでです。階名や母音で歌ってみましょう。

62 高声用は、ミからですので、裏声、ファルセットを使うことになる人が多いでしょう。

63 低声用は、#ソ、地声用ですが1オクターブ上げて歌うと、超高音用となります。ハイトーンや裏声で歌いたい人は、そうして使ってみてください。

 

 この3つは、1オクターブをソ(#G3)、ド(C4)、ミ(E4)と3つに分けています。ドを中心に、半音で5つ低い低声用と、半音で5つ高い高声用にしています。(市販のテキストの低声用はbシで、ほとんど変わらないので、ここでは、かなり低くしました。高声用は、市販のより、半音高いです。市販のものは、高声用は高声の人だけ、低声用は低声の人だけ、その1冊で50曲を使うための移調だからです。1番は、50曲のなかでもっとも声域が狭いために、あまり差がつけられなかったのです。)

 

62は高い声用、63は低い声用に1オクターブを3つに割って、1オクターブの1/3高いのと1/3低いのを入れています。しかも、1オクターブ(12半音)の1/3は4半音ですから、1番はC4~E5ですから、ちょうど1オクターブと1/3(4半音)の音域となるので61、62、63は、C4→E5、E4→#G5(♭A5)、#G3→C5と、きれいにずれていくのです。音楽の成り立ちの不思議、美しさを知ってください。1オクターブと4半音(16半音)くらいが、歌として多く使われる声域でもあるのです。

 

 

3.<コンコーネ50の1番を使った練習>

コンコーネ50の1番を使って 基礎と応用練習をします。

 

「コンコーネ50」は、声楽の練習曲として、もっともスタンダードなもので、よく使われています。練習曲が、50曲入っていて、低声用、高声用も販売されています。

作曲者ジュゼッペ・コンコーネ(Giuseppe Concone)[1810-1860]は、イタリアのトリーノ市に生まれました。27歳でパリに移り、作曲家・ピアニスト・声楽教師・歌手として活躍しました。後年、故郷に戻り、トリーノ王室教会オルガン奏者、声楽指導のなかで、声楽練習曲コンコーネ50番、25番、15番、40番、ミサ曲、ピアノ曲、オペラ(サンケミーレ物語、他1曲)などを創りました。

 

コンコーネ50は、日本の音大受験などにも必修の教材です。中声用での最高音は、A5までのが2曲あります。CDも出ていますので、50曲全てとは言いませんが、最初の10~15曲くらいは練習するとよいでしょう。

 

[参考]曲集「コンコーネ50番(中声用)」全音楽譜出版社 畑中良輔(高声用、低声用もあり)

CD「CDコンコーネ50番(中声用)」範唱入り(フォンテック) 監修・原田茂生

 

 

・伴奏を使っての基本練習(解釈と実践)

 

1.準備 全体的な見通しと注意

コンコーネ50の1番は、全40小節ですが、まずはリピートせず、1コーラス24小節として使いましょう。

最初の8小節を完璧に歌おうとするだけでも、とても勉強になります。音が上がっていき(ドから始まって1オクターブ進み、高いミまで)、その後下降していきます。

共鳴を統一させて歌うことはとても難しいことです。無理なときは感覚だけでさらりと逃がすか、飛ばすか、高いドレミをドドドに変えてもかまいません。あるいは、キーを下げて始めましょう。

レガートに同じ共鳴で歌うには、支えと、それに応じた息が必要になります。スムーズにいかないときは、息だけで、練習したり、ハミングで練習したりするとよいでしょう。

 

最高音がミで、声のチェンジもしくはチェンジする前後の音にあたります。最初の1、2小節目でいきなり1オクターブ以上、続く上行形を歌います。

歌う前に発声練習で、ミまで声を出しておくとよいでしょう。ミの前後の音をしっかり喉を開けて歌えることをめざしましょう。喉を開けて歌ったときの感覚、体のポジションや高音を歌うときのテンションをイメージしてから取り掛かるとよいでしょう。ミを歌うときの体の状態を先に整えておくのです。

最初はメロディが緩やかで、音が跳躍せずに、音階をたどります。メロディをなめらかに歌うことを意識しましょう。すべての音が一直線上に並ぶように、すべての音が一直線上に並ぶように、どの音も、粒をそろえて歌うようにイメージします。

自然とクレッシェンドになるように上がり、下降でディミヌエンドになるように、滑らかに歌えばおのずと音楽的な構成がみえてくるでしょう。

声区の転換部分に休符や息つぎが入れてあり、胸声と頭声の変わるところが合理的に動かせるようになっています。中音域が苦手な人は、休符や息つぎを意識して歌うとよいでしょう。

正確な音を歌うことはとても重要なことなのですが、音を狙いすぎてしまうと歌いにくくなってしまいます。高音域を狙いすぎないことも重要です。

まずはメロディラインを覚えてしまうことです。楽譜に頼るのではなく、録音したものを聞いて覚えてしまいましょう。覚えてしまうことで、次の段階に進むことができます。

 

フレーズの終わりが、きちんと歌えれば、なめらかなフレーズになり、仕上がりがよくなると思います。最後まで、きちんと、支えた声で、声の行き先を見届けるような感じで歌いましょう。

最初は、細かい、アーティキュレーションにとらわれず、優しい感じで歌えればよいと思います。極めていくにつれ、曲想に気をつけて歌うことです。

この曲は、ABAの構成です。最後を最初と同じではなく、少し、変えて歌ってみたり、Bの部分を張って歌ってみてはいかがでしょうか。

 

2.発音

歌うときは、階名(ドレミ…)でも、「ア」や「オ」などの母音でもよいです。得意な母音で歌いましょう。慣れてきたら他の母音でも歌ってみましょう。ヴォカリーズは、歌詞がないからこそ、自由に歌える、というよい点もあります。二つの母音を組み合わせて歌う(例えばアとエ、アとオなど)のも、よい練習になります。

 

音階名で「ドーレーミーファソ、ラーシードーレミ」と歌います。母音で歌うよりも少し難しいですが、音階で歌うことで音感も正しく身についてきます。この音名を歌詞のつもりで覚えるとよいと思います。

いろいろな子音も使って、どれでも歌えるようにしていきましょう。

 

3.展開

1~4小節目

最初の2小節と次の2小節がきちんとレガートで歌え、強弱記号にしたがって出せるようになることからです。最初の2小節と次の2小節では、チェンジを意識しておかないと上手く歌えませんが、その声の配分も声種や趣向によって何通りも考えられます。難しくも、楽しい部分です。

出だし2小節は比較的低い音なのであまり頑張り過ぎないで、声量よりも高い響きにいくことに備えてください。ここでがんばってポジションを落としてしまうと後が苦しくなります。

4小節3拍目のミの音の後、四分休符があります。そこで休まないことです。次が前と同じ音なので休符で体が離れてしまうと音を作り直さなければいけなくなるからです。

 

最初の2小節に大きなクレッシェンド、ディミヌエンドがついています。2小節を一つのまとまりと感じて歌ってください。2小節目の頭に重きを置くようにしましょう。

上行の途中に「チェンジ」と言われる声の変わり目があります。人によって違いはありますが、ラシドレのどこかがチェンジに当たり、超える際に声がひっくり返ったり、声が浮いてコントロールできなくなったりしがちです。それを継ぎ目なく滑らかに乗り越えられるようにすることが目標です。

中にはチェンジに引っかからない人もいます。チェンジは回避するものではなく、真正面から挑んで、ものにしましょう。

胸声区から頭声区へ受け渡す音の高さ(パッサッジョ)で声を開かないことです。特に、一番高いミの音を「イ」の母音で発音するところまでは難易度の高いテクニックです。浅いイの響きにならないことです。

 

5~8小節目

5小節~8小節にかけては下降形なので高いミのポジションをキープしながら低いレの音まで降りてきましょう。ここでキープできないと声がどんどん重たくなってしまいます。跳躍もなく自然な下降音型なので、ついついそのままレガートで進めてしまいがちです。

高い音からの下降では、お腹を緩めすぎず支えを忘れないように気をつけましょう。

 

9~16小節目

9小節~12小節にかけては、でこぼこな形の音形です。3回ソが出てきます。これが落ちすぎないようにしましょう。いつでも高い音へ跳躍できる体勢や響きの位置で出すことが大事です。

休符があるものの、4小節ひとまとまりを意識してください。長い音符の多い曲なので、常に支えを意識し、息がずっと前に進んでいくように歌っていきましょう。

10小節目からは4度以上の跳躍が始まります。レガートな跳躍とそうではない跳躍、その対比をどのように表現していくかです。声と息の配分を、上手くコントロールしていかないと、発声の弱点が見透かされてしまうところです。

15小節目から低音が続きます。同様に音が上行することを見据えてポジションを(下げずに)保ちます。

 

4.構成と展開

構成は、リピートなしとして24小節で、これを8小節×3のABA’として、さらに8小節を4×2で2つに分けると、A、A1、B、B1、A、A2と捉えられます。

Aは、音程でみるとドレミファソラシドレミ、コードではCメジャーにAマイナー、つまり、ドーソ、ラーミで長調に短調。そこからA1では高いところから下がって戻っていきます。ミレドシラ、ソをとばしてファ、そして、ミレで止まってドまで戻りません。その継続感をもって、サビフレーズBへ入ります。これもソシドソ、レソミドとソからドまでをソ(ラ)シドー、ソ、レーソ、ミード、これをソド、ソレ、ソミでドレミと捉えるとドレミードとなります。

次のソーシードーソーは同じくり返しです、B、B1は、b2-b3、b2-b4の形です。b3のレーソーミードに対し、b4はファソミソレーです。A-A1と同じく、レで止めています。

つまり、b2b3b2A1A2a3a4、b4A1A2a5a6となります。大きくは帰結のAブロックのA1A2がくり返され、まんなかの転じるBブロックではB2がくり返されています。また、a3とa5はミーレドーシとミーレドーラと最後の1音が違っているだけです。

 

曲の構造とハーモニーについても、触れておきます。この曲はハ長調です。ハ長調は純粋でのびのびしています。ベートーヴェンの交響曲第一番、運命の4楽章、ビゼーの交響曲などがハ長調です。調性から名曲をたどって、調に対するイメージを持ちましょう。

この曲は3部形式でABA’の各部分が8小節。3部形式の中間部は通常少し高いテンションで演奏します(蛇足ですがメヌエットのトリオは逆に少しゆっくりになります)。この曲の場合、特に属音ペダル(伴奏左手の下でソがずっと鳴っている)があるので、その傾向が強いでしょう。

曲始めの6小節まではハーモニーにほとんど変化がありません。7小節目がIVの和音でサブドミナント、8小節目がVの和音です。ここを半終止と取らないこと、つまり1小節目から少しずつ上がり、7小節目で広がりながら8小節目を目標としてテンションを上げるのがポイントです(音の高さと音楽の緊張感は何の関係もありません。はじめ8小節の音楽上の頂点は8小節目の低いミの音です)。

そのテンションを保ちながら9小節目に入ります。必要以上に突っ込まないように(8小節目で半終止して9小節目から急に上げるのはよくないということです)。

16小節目でおさめて(全終止)Aに戻ります。戻ってきたAはサブドミナントが1小節早くくるので早めに準備しましょう。カデンツして終わります。

 

5.その他

音程や音域によって口の形が変化しすぎないように、口が狭くならないことが大事なことです。

四分休符では少しゆったりしたイメージでブレスをとることを心がけると、余裕が出てくると思います。ブレスの印がある部分では、焦らずブレスをとるように心がけてください。

 

クレッシェンド、デクレッシェンドは、できるだけ意識してかけるようにしましょう。

スラーでつながっているところはレガートに、スラーがついていないところはマルカート気味にリズム感を引き出すように歌いましょう。

ダイナミックスの面では、4小節目のミをフォルテではなくピアノで出すように求められています。練習としてはフォルテで出すこともやっておくとよいと思います。

15小節目の強拍弱拍が逆転する歌い方も見落とさないように注意しましょう。

実際に、この強弱記号などを忠実に守って練習することは、あまりないとは思います。現段階の発声レベルに応じて、練習するとよいと思います。

 

初心者の方は、歌う際に、支えや意識が体の上のほうに上がってこないように気をつけてください。歌に慣れていないと、支えることを忘れて、喉、首、肩で歌いがちです。歌声は体で支えられ、最終的には、頭の上や体の外に空気の振動として響いていくことを忘れないようにしましょう。

 

女性は地声から頭声へのチェンジがあるので難しいと思います。最初の低音を押さないようにしましょう。

繰り返される上行形ではテンションが落ちないように。高音ほど下の支えを意識して下さい。

下降音型では高いポジションを保つために、昇って行くようなイメージを持つことです。全体的にゆっくりなので歌いにくいと思いますが、次の音、次の音を意識し、音楽が停滞しないようにしましょう。

 

ある程度できてきたら、リピートをつけて、通して歌ってみましょう。

コンコーネ50の2番以降にも、是非、挑戦してみてください。50番まで一通り歌いながら、何度も1番に戻って、くり返し練習してこそ力がつくというものです。         (コメントby研究所トレーナー一同)

 

 

2.伴奏を使っての応用練習

 

使う音について

1 音色 ハミング、リップロール、母音アエイオウ、子音ラガマ、ことばをくみあわせます。アエイオウ、イエアオウ、ガゲギゴグ。地声で歌う、裏声で歌うなど、変えてみる。

 

2 テンポ Moderatoを変える、テンポはModeratoです。これをAndante、Lento、Adagio、Largo、さらに遅くします。次にAllegro、Vivace、Presto、さらに速くします。

拍子を変える。4拍子、2拍子、(→3拍子)

 

3 発音 音名、階名、スキャット

階名 ドーレーミーファソ

階名を母音にする。オーエーイーアオ

 

4 高さ 移調、C→D→…、声区[融合]、ミックスヴォイス、低音域、中音域、高音域

a原調、b低声バージョン、c高声バージョン

 

5 大きさ mf、mp、f、p(ff、pp)を変える。

 

6 アーティキュレーションを変える。ヴィブラート/ノンヴィブラート、レガート、スタッカート、テヌート、マルカート、フェルマータ

 

7 リズム タンで読む。→リズムパターンを変える。

 

8 音程を詳しくみる。

9~16小節目 

3度 ソーシ(半音4つ分上)

        ミーソ(半音3つ分上)

       ラーファ(半音4つ分下)ミード

    4度 ドーソ(半音5つ分下)

    5度 レーソ(半音7つ分下)

 

9   その他 ブレスを変える、解釈を変える。

 

10 歌詞をつける

 

 

————————————————–

4)正誤表(誤→正)

 

P51 図         「イエアウオ」→「イエアオウ」(右の図が正しい)

P57 表     破裂音 有 歯茎音 「t(ダデド)」→「d(ダデド)」

P65 22行目 「竹たけかけた」→「竹立てかけた」

P67 2行目   「「蝶蝶」の調はハ長調だ」

        →「『蝶々』の調はハ長調だ」

P73 2行目   「外来語や擬声語(パタパタ、ピカピカなど)、促音(ん)」とともに

      →「外来語やオノマトペ(パタパタ、ピカピカなど)とともに」

P183 表 英米(読み)「シー シー シー シー シー シー シー」

           →「シー   ディー  イー   エフ   ジー   エイ   ビー」

 

 


 
 
[3]一般の人用のプログラムメニュ
 
 
 

・健康づくりやアンチエイジングのためのプログラム

 

これは、老化(フレイル)防止、口腔ケア、嚥下障害防止のほか、喉を傷めていた人のリハビリにも共通します。

 

CHAPTER(1)呼吸、発声のメニュ(CDなし)は、一度、すべて使ってみてください。自分なりに変えていってかまいません。特にフェイストレーニングは有効です。(全てで30分、毎日、5~15分)

 

P40フェイストレーニング(あご、舌、唇、…)中、高校の放送部や演劇部のトレーニングと思ってください。

声のトレーニングは、心身と結びついているので、大げさに感情を入れた方が効果的です。手振り身振り表情もつけて行うと演出も含めて、実践的になります。それと反対に基礎を声だけに集中して、しっかりと行っておくことも大切なので、うまく両立させてください。

 

以下(2)~(4)は、CDⅠ

(2)発音、日本語の発音は1通り行ってみるだけでもよいと思いますが、面倒でない人は毎日使うとよいでしょう。

☆☆母音の発音は、毎回行いましょう。

子音の発音は楽しんでください。毎回どれか一つか二つを選んで変えていくのもよいでしょう。本文の別メニュやオノマトペなどにも挑戦していきましょう。 最初は、質より量でかまいません。

(3)ことば、苦手なところは、よく聞いて学びましょう。好きなように楽しみましょう。

☆滑舌は、特にお勧めです。

(4)せりふ、好きなものを一つ選んで、続けて行うのもよいし、毎回一つでもよいでしょう。

 

以下(5)~(8)はCDⅡ

(5) 声量、☆☆ハミングとリップロールは無理のない範囲で挑戦しましょう。

☆2.ロングトーンも行いましょう。

(6)声域、(7)音程/音感、(8)リズムはカラオケ上達などに大変に役立ちます。

手で叩く、足でリズムをとると身体でのトレーニングに役立ちます。

 

息から声、ヴォカリーズ(母音発音)、レガート、で発声するとよいでしょう。

呼吸のトレーニングは、ドックブレスを無理のない範囲で5~10回で使ってください(すべてやる必要はありません)。

声をよくしたいときは、深い声、低音域、フレーズ

声のコントロールには、クレシェンド、デクレッシェンド

高い声などには、51~をお勧めします。

 全てをハミングややりやすい音で行うことも可能です。息だけでもかまいませんし、リズムなどは、手で叩くだけという使い方もあります。

 

(10)声と身体の基礎知識 一通り読んでおきましょう。

 

CDは、目的に該当するところを選んで使ってみてください。

リハビリやアンチエイジングのために使うときには、CDⅡでもフレーズのスケールの上下降を続けていくことは、それほど必要ありません。トレーナーサンプルのあとに一度、くり返すだけでも充分です。前半10分行い、5分休み、後半10分行うくらいで充分です。

 

 他の先生方の使っているメニュ、アイウベ体操(ベで舌を出す)、パタカラ体操なども併用できます。CDⅡ の01や07などに合わせて行うとよいでしょう。

ことばやせりふは、サンプル音源と一緒に読むと楽に進められるでしょう。

 

いきなり声を出さず、(1)でのウォーミングアップを軽く行って始めてください。発音も大切ですが、五感を大切にしましょう。オノマトペなどは大変に楽しく、役立つメニュです。英語など外国語の発音も取り入れるとさらによいでしょう。

 

 音源のメニュは選んで使いやすく並び替えて、ご自分に合ったプログラムをつくっていくとよいでしょう。カラオケなどに使う人は、別にもう一つ、自分用のメニュとして編集するとよいと思います。どんどんと発展させていってください。

(ホームページhttp://www.bvt.co.jp/new/taizen/に、近日中、トレーニング用に追加音源などをする予定です)

 

ベレ出版の「きれいに話すための発音・発声トレーニングCD BOOK」(現在、電子ブックあり)滑舌や外郎売(音源に全文収録)をご利用ください。

 

以下、参考:「人は『のど』から老いる、『のど』から若返る」(講談社)より抜粋改訂

(http://www.bvt.co.jp/new/kodansha/)

 

 

 


(4)「ヴォイストレーニング大全」関連の参考応用文献

 

関連参考書(拙著ほか)

CHAPTER(1)体操→「ヴォイス・トレーニングの全知識」

CHAPTER(2)~(4)ことば編→「声ことばのレッスン」「声優・朗読入門トレーニング」「英語耳ボイトレ」

CHAPTER(7)~(8)音程/音感/リズム→「ヴォーカルの達人2【リズム&音感・トレーニング編】<CD付>」

CHAPTER(9)歌唱技術→「読むだけで、声と歌が見違えるほどよくなる本」「ボーカル上達100の裏ワザ」「コンコーネ50番(中声用)」全音楽譜出版社 畑中良輔(高声用、低声用もあり)

CHAPTER (10)知識編→「声のしくみ『人を惹きつける声』のメカニズム」「人は『のど』から老いる、『のど』から若返る」

全体→研究所jテキスト「声とことばのトレーニング帖」「Master of Singing」

 

関連サイト(ブレスヴォイストレーニング研究所)

「発声と音声表現のQ&A」ブログ

「ヴォイストレーナーの選び方」ブログ

「ヴォイトレの論点」ブログ

 

 

 


[5]「ヴォイトレを始める前に」(「大全」のためのまえがき)

 

○トレーニングの盲点

 

最近、私がよく話すことを加えて、アドバイスにします。

ヴォイトレというのは、「トレーニングですから、役立つように、自分を変えるために使えばよい」ものです。つまり、役立たなければ、よい方に変わらないなら使わない方がよいのです。「ヴォイトレをしないと○○になれない」というのではなく、足らない分を補強としてするからトレーニングなのです。

そこでは、目的やレベルの具体的な設定こそが肝心なことなのですが、声に関することは、とてもあいまいです。そこで、きちんと基準を設定できる力、判断できる力をつけていくのが、トレーニングの目的の一つです。

ヴォイトレが普及したのはよいのですが、「もともとなかった」のですから、それに囚われすぎるのはよくありません。ヴォイトレのなかで、いろんな考え方、方法、メニュがあるのは、よいのですが、それを「間違っている」とか「効果が出ない」などと論じる人まで出てきました。なぜ声を出して何かをするというポジティブな分野に、ネガティブに人生の時間を浪費するような考え方、使い方をするのかと思うことがあります。ヴォイトレは、トレーニングです。“効果を上げるために”使ってください。

 

〇声の力の減衰と歌の凋落

 

歌も声の使い方の一つですから、その使うレベルが下がれば、業界も凋落していくのはあたりまえです。これまでも、そうして多くの芸は消え、また新しい芸が生まれていったのです。役者も同じで、声の力は、明らかに不足してきています。他に補える要素が大きくなったので目立たないだけです。声優も、ベテラン勢の声に太刀打ちできなくなってきています。それは、どういうことなのかをよくよく考えてみる時期にきていると思います。

トレーナーにも責任がありそうです。いかにも自分の“特別なヴォイトレ”が絶対に必要だとクライアントに思い込ませてしまうようにもみえるからです。相手の必要に応じ、もっともよいメニュを使うのは当然のことですが、引き受ける前に、今の本人にとって、自分よりもよい専門家がいないかを考え、思い当たったら、そこに委ねるくらいのことはすべきだと思います。現状の複雑な状況では、いかにカリスマトレーナーでも、一人で全てのタイプのクライアントにベストな対応ができることはありえないからです(最初につくトレーナーの影響力は大きいので、その前に一歩、立ち止まって考えてみることをお勧めします)。

 

私は、声楽、ミュージカル、ポップス、演歌といった歌い手、声優、ナレーター、アナウンサーなど、声を使う職業で分けてみたり、どれかの分野に固執したりはしていません。早い時期から政治家からビジネスマン、就活、婚活する人のニーズにまで応じてきました。

声であれば、基礎の基礎は同じです。少なくとも、そこで行うのが本当の意味で基本のヴォイストレーニングと思うのです。

 

○素振りの話 ~声は自明

 

確かに、素人には発声はわからないし、歌の評価も好き嫌いといえるものかもしれません。しかし、声は日常で使われ、誰であれ、それなりの効果を生かしうる社会性をもちあわせています。そうである以上、声のよしあしとか歌やせりふのよしあしは、日常で「誰もがわかる」といえばわかるのです。専門家のようには説明ができないだけでしょう。(このあたりは、自分の声よりも、まわりの人の声でみるとわかりやすいと思います。)

たとえば、誰でも一つの声だけ、長く伸ばして10回出すと、そのうちどれがよく、どれが悪いかぐらいの区別はつくでしょう。次にその中のよい声だけ10回出せるようにし、また、そのなかのよい声だけを判断して集めてみてください。

素振り10回で素人でもよし悪しがわかるものです。いえ、声に素人などいません。体の実感から磨いていくのを忘れたら、基礎トレーニングではありません。

こうしたことは、歌の自主トレで誰でもフレーズ単位で応用していることです。勘がよく、喉がそれに合っていた人は、歌手や役者に、それだけで誰にも習わずプロになれているわけです。

 

ヴォイトレに特別な方法や秘訣があるのではなく、普通のことを徹底してていねいに詰めていけばよいということです。それに個人差があり、限界があるので、そこを助けるためにヴォイトレのメニュがあるということです。

 

〇声は変わる

 

ヴォイトレでなくとも、決まった時間、しっかりと声を出すことを3~5年もやれば、個人差はありますが、声は変わっていきます。よく変わったら、そこでやったことが、まさにヴォイトレなのです。ところが、巷でヴォイトレを行っている人は多いのに、こうした声の素振りで基礎を固め、判断力をつけることと声そのものを実践の結果にまで結びつけられている人は、とても少ないです。

それは、ヴォイトレといいつつも、ほとんど「準備体操としての発声」と「正しく歌いこなすための歌唱(リズム、メロディ、歌詞)」だからです。緊張する人のためのメントレであったり、発声に至る状態の調整=応用練習がほとんどだからです。声そのものを見ずに、声そのものをトレーニングしていないのなら、声そのものが伸びないのはあたりまえです。

プロやトレーナーのものまねでは、外側ばかりを固め、くせがついて、可能性が閉ざされてしまいます。その結果、難しいメニュは、こなせるようになっていくのに、シンプルに声を大きく出すことは、いつまでもできない人がたくさんいるのです。

 

自己満足したり行き詰まったりして上達が止まるのは、「現状への厳しい判断」「次の目標設定」「そのギャップを克服する方法」が決められなくなるからです。でも、周りに認められ、それでよければそれでよいし、それ以上求めるなら、そこから、よきアドバイザーにつけばよいのです。つまり、それらを明示してくれる人ということです。

 

○階段の話~「間違いでなく不慣れなだけ」ということ

 

もう一つは、医者(音声クリニックなど)から、紹介されてくる人に多いパターンです。器質的な障害がなく、機能性障害といわれるケースなどに多いのですが、いわゆる「発声法が悪い」「腹式呼吸ができていない」などと言われていらっしゃいます。ただ、これも「声を出していない日常で、声が出るようにはならない」というあたりまえのことが原因であることが大半です。

私は、「一日1000歩しか歩いていない人が、10階まで階段を上がったら、足が痛くなった。だから、その上り方が間違っていると思いますか」と尋ねることがあります。声の問題は、今だけでなく、過去からの積み重ねです。この場合、少しずつ声量を増やしていけば、そこそこにはクリアできるでしょう。声域とかピッチ、リズム、発音以前の問題なのです。リハビリもまた、まさにその類です。(ですから昔、体育会で大声を出し、喉を荒らして歌えなくなったなどという人が、ヴォイトレでプロやトレーナーになったからといって、そのヴォイトレが、元より声の弱い人や声をほとんど使ってこなかった人には、通じにくいわけです。)

 

〇習慣と環境づくり

 

本当に声を変えたければ、毎日の生活習慣から変える、環境づくりが必要です。フィジカルの管理ができていない人は、整体やマッサージ、ヨーガ、ピラティスなどでもよいでしょう。それだけでも声が出やすくなります。

このご時勢、ヴォイトレのメニュにも最近はそういうものが多く入ってきています。しかし、その分、肝心の声の基礎づくりが忘れられているのを憂うのです。(ヴォイストレーニングがフィジカルトレーナー、メンタルトレーナーを兼ねるのはわかりますが、肝心のヴォイトレは、ということです)。

 

発声の基礎固めは、スポーツ競技よりも判断が難しいと思います。なのに、このレベルでさまざまなヴォイトレメニュや声の使い分け、発音から音程、リズムトレーニングなどを始めるので、肝心の声の養成に手がついていないのです。それよりは、ジムでの体力づくり、柔軟を含めた体づくりなどを優先するとよいことが多いはずです。それで声が出やすくなるのであれば、そこがその人の最初のヴォイトレでしょう。

 

○“イメージ言語”を呼吸法(1)

 

指導で使われる用語は、イメージ言語として説明しています。トレーニングの効果を出すために使うのですから、トレーニングを行う上でのインデックスとして、トレーナーとクライアントの認識が一致していたら、どんなことば、用語もパーソナルなレッスンでは問題ありません。

ただトレーナー自身がイメージと実際のことの違いをわかっていないケースも多いようです(だからといって、トレーナーが使っている“イメージ言語”を生理学的、科学的にみて「間違っている」「使うな」「正せ」と言うのは浅はかなことです)。私も、さまざまなイメージ言語を使っています。

たとえば、「胸式呼吸はだめで、腹式呼吸で」というのは、初心者の肩や胸の上が動いていることと喉頭の安定を欠くことで呼吸のコントロールがしにくいためです。しかし、胸式呼吸は、腹式呼吸と切り離せません。胸の下部は、柔軟に動いているのです。

横隔膜は、お腹の底でなく、その前部はかなり上にあります(胸骨)。それを丹田のあたりに考えるのは、おかしなことです。しかし、「お腹から声を出して」とか「丹田を意識して…」と言って相手の状況がよくなるのなら、“イメージ言語”として使っても問題はないでしょう。

 

 「胸を上げる」より「胸を下げない」、「背中を広げる」とするなど、ことばのイメージ一つで、結果も大きく違ってきます。だからこそ、ことばの使い方は、とても大切なのです。正しい使い方ではなく、イメージをうまく与えて正されるような使い方ということです。

 トレーニングは、意識的に行うので動きやすいところ、みえやすいところが使われやすく、それ以外のチェックや動きがおろそかになりがちです。なので、そちらに注意を向けることが大切といえます。(でも、それは元のところがあたりまえに機能していたらということで、それを怠ってしまうケースも増えています。)

「お腹より横や後ろに入れる」というのも、前腹は動きやすいからです。ですから、背筋中心に、広背筋、外股斜筋、内股斜筋などの強化が必要です。しかし、前の方の腹を固めてはなりません。

私が「深い息」というのは、出す息のことですが、そのために深く吸うのは、できるだけ体の底に入れるためです。それは、吸えるだけ吸うのとは似ているようで全く違います。

 

○“イメージ言語”を呼吸法(2)

 

 例としては、くどく長くなりますが、せっかくの機会なので呼吸(法)について詳述します。

呼吸とお腹の動きの関係は、よく問われますが、厳密には説明しにくいものです。腹式呼吸は、お腹がへこんで息=声が出るというように考えられています。しかし、声楽や邦楽などでは、「息を吐いてもへこませない」とか、「押し出す」「張る」というのが、教え方としてよく使われています(逆腹式とか丹田、逆丹田なども、言う人によっても違うので、ここでは用語にこだわらないで進めます)。

まず、息の支えとお腹の横を張って固定することは、混同されやすいのです。固定すると、喉頭が下がりやすくなり、発声上、効果的に見えるので、よくセットで使われていますが、別のことです。「横隔膜」などのことばを使いだすと、さらにややこしくなります。「横隔膜を広げる」というのも、イメージ言語です。

「横隔膜を使う呼吸」などと言うより「腹から声を出す」の方が直観的に本質を把握しやすいでしょう。それが、科学的、生理的に誤りを訂正された今の教え方が、昔のすぐれた人の教え方より大きな結果を出せなくなっている理由の一つです。主に、生理学的用語と科学的説明で、正しいと思った動きは、イメージ言語よりもはるかに効果を歪ませてしまうことが多いのです。☆

息を吸い過ぎたり吐き過ぎたりすると、よい発声ができないのは確かです。しかし、結論からいうと、トレーニングですから、その結果、「いつ、どう変わったか」で問うしかないのです。「どこが」が入ると、かなりあいまいになります。いや、「変わる」というのではなく、「しぜんに吸収され、ものになった、身についた」という方がふさわしいでしょう。

 

どのトレーニングをどう組み合わせても、そのときのお腹がどうであれ、発声や歌唱時は、お腹は柔らかいし、喉もしなやかで自由に最も有利に動いていればよいのです。そのときに、お腹は止まっているか動いているか、外見的にはさまざまでしょう。膨らんだり引っ込んだりも、ある幅で行われているはずです。表現によっても大きく変わるものでしょう。

人間の表現行為、まして、肉体芸術においては、日常以上に集約され、過度に動くのです。それが、しぜんにみえるよう、ふしぜんなものでないようにこなされていて、自由といえるのです。(喉声も同じで、表現を優先するなら、決して否定されるものではありません。)

 それでも、「どうしても説明を」と言う人もいます。そこで、私は、「自分の通常より呼気時に少し胴回りが膨れ、その膨れた幅○㎝分くらいへこむ動き、つまり、通常±○㎝が目安など」と余計な説明をしています。囚われぬ程度に参考にしてください。

 

本当に上達するためには、寝転んでしぜんとそうなる腹式呼吸くらいでは、発声のコントロールなどに足りるわけがありません。そこに備えて、ヴォイトレで体づくり、息づくり、ブレスのトレーニングなどを行う意味があるのです。

たとえば、バスケットボールでの指導では、「膝でシュートしろ」とか、野球やマラソンで「腰で打て」とか「腕の力を抜け」とか、いくつもの“イメージ言語”があります。こうした中での脱力の指示は、力をつけるトレーニングではなく、力を発揮するプレーのためのものです。力をつけるトレーニングは、別に行っているのです。

「今日のトレーニングの結果が今日、明日に出るようなものは、トレーニングではなく、調整にすぎません」ですから、それを続けても大きくは変わりません。

この時間差をどうみるのかがトレーナーの手腕です(トレーニングとは、今は役立たないし、一時、逆効果にもなりかねないことを将来のために、あえて行うことです)。

 

〇定義できないことについて、とらわれないこと

 

 似た問題をいくつか、加えておきます。

邦楽では、地声と言っていながら、高い声は、裏声を使っています。同様に、鼻呼吸だと言いつつ、口呼吸も使っています。「地声で歌ってはいけない」と言う師匠もいます。

所詮、マニュアルと実践は違うのです。定義もしないのに、何をか言わんやです。でも、定義できないものもあります。それを無理に定義して使う方が、よくないと思います。だから、イメージ言語を使うのです。トレーニングでは、こうした机上の些細なことにあまりこだわらず、鷹揚に構えておくとよいでしょう。

 

「ハミング」「リップロール」「タングトリル」なども、ヴォイトレで定番となってきたメニュですが、目的によって、注意することもやり方も異なるのです。むしろ、苦手な人が、そのまま行うと逆効果となりかねないことも多いです。

リラックスさせるのが目的なのに緊張させて無理を感じる人、苦手な人は、そういうメニュは、がんばらずに抜かして進めればよいのです。絶対に必要なメニュや方法などはありません。

 

デスヴォイス、グロウル、グラント、エッジヴォイス、ボーカルフライ、ホイッスルヴォイス、フラジオレットといった、いろんな声の種別についても、こだわらないでください。誰がどう分類しようと、それは仮説のようなものであり、「どの声か」などと考えても仕方ありません。「一般的に」とか「誰かの」は無意味なのです。

あなたの声は一つです。それを強く、いろいろと柔軟に使えるようにしていけばよいのです。

レッスンでは、こういう分類をうまく使えることもありますが、それに囚われて邪魔してしまうくらいなら忘れましょう。まして、トレーニングを複雑にしてはなりません。

 

用語は、説明や説得するのに便利な手段の一つに過ぎません。「このアレンジがヒットのノウハウ」といっても、それはヒットした説明であって、そのアレンジを入れたらヒットするわけではありません。

ですから、(後述する)“ヴォイトレ市場”で、本やネットの情報に振り回され、理屈に走るとわからなくなります。トレーナー間を行き来したり、偏向してしまうのです。“トレーナーショッピング”となってしまうのです。

実際のプロのアーティストは、そういうことに関与せず、活動しているのです。なぜ、これまでヴォイストレーナーという資格やヴォイストレーニングという分野が、ここまで確立しないのかを考えてみるのもよいのではないでしょうか。

 

〇ミックスヴォイスのブーム

 

 ミックスヴォイス(ミドルヴォイス)の流行は、一時の現象と思っていたのですが、いろんな学会や論文などでも取り扱われ、学会などで数人の異なる発声を全てミックスヴォイスとみせる様には、驚きました。

共通点は、かすれた声(高音域での統一された共鳴でない)ということのようです。もしかすると、声楽の発声だけを正しいと思う人が集まると、大体こうなるのでしょうか。となると、統一されたものとそうでないものは、どこで分けるのでしょう。それでは、結局、声楽の発声以外の全ての歌声は、ミックスヴォイスとなりましょう(ちなみに、声楽というと、第一声で、出したところから「間違い」と言われてしまうような歌唱の発声の基準も、その前に何があるのかに立ち返って考えることでしょう。声そのものに間違いなどありません)。

 裏声、地声は、発声の原理で声区(レジスター)として分けられます。その間の声を名付けるなら、これまでの「融合(ブレンド)」ということばで充分でしょう。

 

トレーニングとしては、どんな名称も方法もあってもよいと思います。しかし、これは、裏声と地声の音色の違いを目立たせなくする調整の区間、その移り変わりにあたる声なので、どれがよいとか正しいとかもなく、目的とするものではないのです。

用語として使うにも、個人差の方が、はるかに大きいからです(まして、定義の異なる人同士での議論は不毛です。そんなところで時間のロスはしないでください)。用語を使いたいなら、自分なりに、あるいは、トレーナーとの“イメージ言語”として、どうぞ、と思います。

 

○具体的なケース(セカンドオピニオンとして)

 

 セカンドオピニオンとしてアドバイスするときに、他のトレーナーの指導のプロセスで、偏っているのを知りつつ口を出せないことは、よくあります。たとえば、その人の音がフラットしていたら、高めに直すため一時的に高くとるトレーニングをすることになるため、そこだけを第三者がみると「少し下げなくては」と注意したくなりがちです。

そうしたプロセスでの偏りは、トレーニングでは必然です。大きなギャップを設けて埋めようとするほど、目立ってしまうものです。もちろん、長時間かけて目立たせず、そのリスクも減らすのが正攻法ですが。早く大きく変わろうとするほど、一時、大きく偏るのです。でも、変わるために、トレーニングはするものでしょう。

「後に器が大きくなって吸収されるまで待つ、それでだめなら戻せるように見極めておく」、他人の声と共に心身を扱わざるをえないレッスンは、そうしたリスクを受け入れることに他なりません。そこはプロセスなのであって、一時の偏りを否定したら、大きくは伸びようも変わりようもないのです(そのため、ステージを控えるプロ歌手などには、本番や活動状況次第で、トレーニングメニュをセーブし変えざるをえないわけです。トレーニングにもオンオフがあるということです)。他のトレーニング法もそれ自体をみて、そのスタンスを位置づけ、メリットとデメリットは、アドバイスできるのですが、深いところはそのトレーナーのみぞ知る、そのトレーナー自身を知らずに踏み込めない領域もあるのが、当然のことなのです。

 

〇用語に対してのイメージでの解決の補助

 

一般的な注意と必ずしもそうでないことの例をいくつかあげておきます。

ハミング→口開けてもよい

「喉頭下げる」→必ずしも無理に下げなくてもよい

「軟口蓋を上げる」→上げ過ぎてもよくない、鼻音にしない

「喉をあける」→必ずしも無理にあけようとしなくてよい

「お腹に空気入らない」→肺に入るが、胸とお腹(肋骨[筋]と横隔膜)の動きで入る(呼吸筋のトレーニングとは別)

「腹筋は使わない」→本文参照

「胸式呼吸はだめ」→本文参照

「強い息を声にするのはだめ」→本文参照

「頭声・胸声(頭部共鳴・胸部共鳴)」→発声の体感(共振)での区別、頭や胸にひびくのを体感する

「共鳴腔にあてる、集める」→あてない、あたる

音程、リズム、発音への注意→発声とは別

地声と裏声→発声の様式(声帯振動)での区別(女性は裏声、男性はファルセット)

 

○「せりふ」と「歌唱」の両方を学ぶ

 

 歌唱のためには、せりふのトレーニング、せりふのためには、歌唱トレーニングをしましょう。「歌は語るように、せりふは歌うように」と言われます。それは底で結びついていて相互に補充しあっているのです。

日本の歌手やヴォイストレーナーの弱点の一つは、話し声が一般の人と変わらないことです(しかし、この弱点は、必ずしも、職において致命的なものではありません)。

「歌い手だから、話すのは声をロスするので、歌以外は声は使わない」これは、日本人らしい考えであり、確かにその通りでもあるのですが、まさに“歌唱用(合唱団用)の声”に囚われているのです(調子のよくないとき、本番前や特別な基礎レッスンの期間での、このストイックさを否定するわけではありません)。

 

○リラックス、脱力~柔軟体操とストレッチ

 

リラックス、脱力は、くせをとったり体の柔軟性を回復させるのに大切なことですが、どんな分野でも、それだけで身につくものはありません。これらは、身についているものの発揮が妨げられないようにするためのものです。身についているものが不足していたり補強が必要なときには、ただリラックス、脱力しても何にもなりません。

緊張で声が出ない人が、リラックスして声を出せても、オペラ歌手にはなれないし力強い声さえ出せないでしょう。でも、そんな必要もなく、とりあえず声が出せたらよいのなら、リラックスで目的達成です。

とはいえ、声の必要性を高め、そこを目指しトレーニングすることが、確実に効果を上げる最大の秘訣なのです。つまり、緊張してリラックスどころでない状況で、どう声を使うのかを学ぶことが、実践としては大切です。心身の不調時でさえ動じない確固たる声を身につけるために基本があるのです(ちなみに、ストレッチは筋を伸ばすし、柔軟体操は関節を柔軟に動かせるようにしますから、こうして分けるのなら、本番前は、柔軟体操をする程度に留めることです)。

 

○体で覚える~見本の選び方が重要

 

機能として、目覚めさせる、解放し、バランスをとり、合理的に使う。 

足らないところを補強、鍛錬する。

体で身につける見本を表現者やトレーナーを参考にする。

見本といっても、それぞれにタイプも得意不得意(専門)も違うので、それを自分にプラスになるように選ぶのは、ヴォイトレと同じことです。それなりに時間もかかることでしょう。

この見本の取り違え、つまり、憧れの声、歌、アーティストと自分のもっているもの、個性とのギャップが、うまくいかない最大の要因であることが多いのです。ヴォイトレでの上達を妨げるのです。いかに自分に合った見本を選ぶことが難しく、大切なのかということです。

 

 発声の技術とその土台づくり、さらに表現と音楽性や芸術性、これらは、習得のプロセスでは、お互いに矛盾したり邪魔したりすることもあります。オペラ歌手などのように、目的とそれに必要な条件(期間、到達レベル)がかなり明確な場合は、指導者にプランニングも任せたいものです。

しかし、大体は、目標そのものから明確にする必要があります。そのためには、その世界や自らを知る期間が必要です。

 

元より、ことばと共鳴でさえ、対立します。リラックス、自然体というのも、どんな動き、発声もすぐにとれるということですから、大体は、両立しがたいわけです。

あなたが一つの声と思っているものでさえ、私には、いろんな声が聞こえてきます。徹底した整理の必要があるわけです。

 

○大は小を兼ねる☆~本当のトレーニングとは

 

 歌える人は、歌えない人のまねができます。せりふの言える人は、言えない人のまねができます。それは、まねするときに、部分的に力を抜いたり入れたりアンバランスにしてくせをつけるのです。

私は、「あなたの声なら首から上だけで出せます」と言うことがあります。息を吐いた後でまねします。つまり、私の体の充全な機能を抑制して出すと、初心者と似た声になるのです。トレーニングとは、その逆を行うことにほかなりません。つまり、最初は大きくつくるのです。ていねいに使えるために、です。

 

 運動能力や外国語の会話能力のように、慣れていくだけでも人並みに行うと人並みになります。つまり、発声器官そのものにさほど違いはないのです。

 それを、単に、目標レベルを、早く簡単に誰にでも楽に効率化したものにするか、最高レベルにセットするのかは、本人次第です。私は、後者の実現のためにあるのが、本当のトレーニングだと思います。

生来の発声器官のよし悪しでなく、使い方のよし悪しのところまでは、トレーニング次第なのです。ならば、目標と必要性を目一杯、高めた方がよいのです。そして、早く限界に到達して、そこからスタートをするのです。いつも、一つ上の高みを目指してがんばってください。

 

 


 

[6]「最近のヴォイトレの状況と、ここまでの歩み」         

(「大全」のためのあとがき)

 

○私と声の研究

 

 私は、音声、表現、舞台のための声の専門の研究所をつくり、ずっと指導と研究をしてきました。いつしれず、声がライフワークとなったわけで、医者や声楽家のように、それを専門にしたかったわけではありません。声、歌、芸能の世界についても、業界を客観視しうる立場にいるように努めてきました。声について知るには、文化、風土、歴史だけでなく、国際社会も日本のビジネス社会も学ぶ必要があります。それゆえ、早くから声を生涯賭けてのライフワークにしたともいえます。

出版やレクチャーなど、外向きの活動が多かった分、養成所をつくってからは、矢面に立たたされ、業界の内外を問わず、いや、むしろ、それ以外の分野の専門家や勘のよい人たちに、多くを指摘され、学ばせてもらってきました。今も、業界ではなく社会に目を向けて動いています。

 

未だ、日本人の音声の弱さは、「ヴォイトレの失敗」ということさえ問えない状況で、これは声の力が現実の社会に関わり切れていないことを表します。歌や芝居においては、スポーツ、芸能ほか、多分野のめざましい世界進出に比べると、もはや、ガラパゴス化してしまいました。

有能な人材は、歌よりお笑いを選び、音楽プロダクションまでお笑いタレントで支えられています。今、声の力を活かせているのは、お笑いタレントと日本各地のお祭りか、と思うのです。声の力でみれば、です。

私は、カラオケからヴォーカルスクール、ヴォイストレーニングまで、普及に努めたものの、その線上に活路を見出せないままにいます(カラオケも、自分のキィやテンポで自分の歌を歌うように使えば、すばらしいツールなのに、この日本では活かしきれず、です)。そうして、自らが先頭に立って立ち上げてきた“ヴォイトレ市場”と距離はとりつつ、研究所は、声楽家を中心としたトレーナーと共に、声の基礎レッスンや音声表現・舞台への研究を必要とする人にオープンしています。

 

○時流の変化と声楽のメリット

 

プロへのヴォイトレのあと、一般向けの養成所をつくって、ある時期からは声楽家のトレーナーを中心とした体制にしていったのも、ニーズに合わせたためです。それは、私自身が、目指したものと世の中とのズレの修正です。2000年前後に、ダメ押しのように、なおも変わっていった日本の業界への対応をせまられたためでした。ヴォイトレの対象は、歌手や役者だけでなく、声優、ミュージカル俳優、邦楽家、噺家、お笑い芸人、そして、講師、各界のリーダー、一般のビジネスマンと広がりました。

一方、平成で、歌とともに歌の中の声の力も、社会的影響を失っていったのです。それは、ここでいう“ヴォイトレ市場”とあまり関係のないことです。ヴォイトレは、実質、トレーニングでなく、ケア一色になっていったからです。その背景には、過保護な日本で育ったメンタルの弱い人、そして高齢者(ベテランのリバイバルも含め)の増加があります。

 歌い手は、声の力でなく、ヴィジュアライズされた魅力に存在基盤を移しました。演劇もミュージカル化して、ミュージカル(日本のミュージカル)に合う歌い手が求められるようになりました。つまり、強烈な個性派のアーティストではなくエンターテイメント化し、つぶしのきくタイプが実力派とみられるようになったわけです。Jポップやカラオケと連動し、音響技術に支えられた歌は、ハイテンポ化、ハイトーン化していきました(多くは、本人の生身の体や心と離れていったともいえるわけです。声とは、本来、体と心の表れ、象徴でした)。

 

そのトレーニングに“日本の声楽”という日本人のソプラノ、テナー中心に、西欧の模倣でそれなりに実績をあげてきたものがピッタリとはまったのは当然のことでしょう。その延長上に何があるかはともかく、10年を発声中心に磨き上げるメニュとしては、声楽には、世界の人々が長く継承してきた実績と基準があります。何よりも、全世界の人にも日本人に対しても、声が出せるようにすることに長らく貢献しているプログラムです。

その点、邦楽は、実績はあっても、発声において一般化するには、いくつもの複雑な課題があります。一方、私は、声楽を邦楽家、役者、声優のヴォイトレに使うことで、大きな効果を実感してきたのです。

声楽家は、2オクターブ近くのオリジナルキィ(原調)での歌唱発声、特に共鳴についての専門家です。今の日本のミュージカルなら、そのレベルを必修の基礎と考えるとよいと思います。

もちろん、声楽にも声楽家にもいろいろと問題はあります。声楽のノウハウも人それぞれ似て非なるものです。しかし、声そのものの力をていねいに10年がかりで養成していく点では、研究所の指針と一致していたのです。

 

○私と声楽と役者声

 

 私が、アンチ声楽から入ったのは、私の公にしているものを読んでいる人や90年代に接した人には、よく知られていると思います。日本のオペラ歌手育成の実績は、決して世界に誇れるものではありません。

私が目指したのは、「一声でプロとわかる声」でした。十代での声は、素人並みより弱かったので、徹底して変える必要を感じ、10年、鍛え続けました。その後、トレーナーとして、毎日10時間のレッスンをして、結果として鍛えられました。

当初、劇団などで、声楽家が教えている役者の方が2、3年で声が大きく変わるのをみてきました。そのうちに、日本人にとっては、発声練習以前に、役者の声をベースにすることの必要性を実感しました。そして、ともかくも本質的なものへの勘と実践からの実感でスタートしたのです。今、思うとこれこそが開発すべき能力です(個人史は省略します)。

 

○目的の変容とレベルの低下

 

 研究所では、当初、プロの声の鍛錬中心でしたが、それだけでは、当然、偏りかねないので、感覚を育てるため、一流のアーティストの声や歌を徹底して聞かせることになりました(研究所史も省略します)。

そのころまでの私のやり方では、感覚として音楽などで磨いた耳から発声へ結びつけられない人と、元より、声の器質として鍛錬して開発できる余地(伸びしろ)の少ない人が課題として残りました。

これは、今では、その人の喉にふさわしい複数の声の見本と特定のトレーナーを個別に設定することで、ほぼ解決しています。その人の喉の可能性に合った見本と複数のトレーナー指導に委ねるのです(「自分の見本をどう選ぶか」ということです)。

この体制づくりの途上には、他の声楽家や外国人のトレーナー、プロデューサー、師匠など、他の専門家のフォローも随分と協力していただきました。つまり、研究所という組織でこそ、この弱点の克服も可能であったのです。

 

○低迷するヴォイトレ

 

 こうしたプロセスを、身をもって知ってくると、個人で教えているトレーナーのように自分以外の考え方ややり方を間違っていると感じ、自らは正しいなどとは言えなくなります。本当にそう思い込んでいる人が多いゆえに、ヴォイトレの全体のレベルが向上しないといえます。

問題は、どのレベルに目標をとるかということです。かつては世界を目指していたのに、その人の満足するところまでとなれば、それはトレーニングではなくケアです。そのくらいのことがヴォイトレであるなら、リスクも失敗も、あり得ません。

そうしたレベルで、生理的とか科学的ということでの理論や用語をもって批判や説得することには、現場にいる私は何ら意味を見出せないのです。

ヴォイトレに研究や科学、医学、生理学的知識が不要というのではありません。それを裏付けとして理解することで、よりよい考え方や方法が生み出せるし、何よりも、致命的な誤りを避けることができます。

しかし、その多くは、欧米のものや論文の引き写しのままで、そこからの実証はなく、いつまでも個別の体験評価、あるいは、権威の借用だけだからです。

医者というのは、ケア第一ですから、安全第一でリスクゼロをとり、リターンは考えません。そして、ヴォイトレという分野、ここに関わる人や関わりたい人もまた、メンタル面やフィジカル面に弱い人が増えているのがその傾向に拍車をかけているのです。

トレーナーも、克服したのはメンタル面だけで、フィジカルでは変わっていない、本人自身、変えてきていない、つまり、声も人並みか、それよりも弱い人がほとんどです。なのに、いや、それゆえ、理論とか方法に振り回されているようにみえます。そういうところで学んでも、足らないと思えば、研究所に来ていただければよいので、今は、それも役割分担と思っています。

 

○お坊さんの読経に学べ

 

私は、日本では、「ヴォイトレは失敗している」と言ってきました。世界に名だたる歌手も役者も出せていない。声楽でもそうでしょう。かつては、「日本では、お坊さんだけが日々の読経ヴォイトレで結果を出している、そこに学べ」と言っていましたが、最近は、お坊さんも喉を痛めるようです(とはいえ、お経を毎日、読んでいることで10年も経たずに声ができてきます。その声に、強さもひびきも説得力も敵わないとしたら、ヴォイトレとは、一体、何なのでしょう)。

つまり、日本人の心身が弱っているというところに嵌め込まれたのが、“ヴォイトレ市場”で、同様のことは、最近のフィットネスジムなどにも通じます。

そこでは、生理学や科学や知識での正確さが競われます。用語や言語の問題、喉頭周辺や声帯周辺の仕組みは、無視してよいものではありませんが、現場のヴォイトレで扱うのは、生身の人間の喉から出た声とその作品です。

 私は、現在も、国立障害者リハビリセンター学院のST(言語聴覚士)科の講師を続けています。ケアや知識、研究については、各専門家から最新のことを学んでいます。しかし、実用としては、分けています。ケアとして求められるなら、その対応をせまられるのは、仕事だから当然です。その点で、いつも両面から考え、アドバイスしています。

 

○メンタルの克服

 

 初期の私のメニュのいくつかは、喉の弱い人、声をあまり使ってきていない人、状態が悪くなった人などに確かにリスクがありました。しかし、当時は、20代半ばの健康優良児がメインだったので、トレーニングで喉を壊す人などいなかったのです。体づくりから始める余裕もありませんでした。

それが一般化していくと、本を読んで判断力のないまま思い込みで行う人が出てきました。そこで改訂してはトレーニング上の注意を増やし、トレーニングの分量も減らしていかざるをえなかったのです。

スポーツや武道の経験があれば、「応用と基本は違うこと」「基本は2、3年も経たないで身につかないこと」「それでも、まだ充分な基本ではないこと」「基本の力がなくて無茶をするとケガをすること」などは、わかるのです。そういう人の中では、真面目すぎてやり過ぎてしまう人に注意しなくてはなりません。頭で考えたり体だけを酷使しようとして、勘と実感を遠ざけてしまうからです。スポーツや武道をたしなんだといってもそこで一流のプロだった人は少数ですし、そうでない人は、その違いにこそ学べるものが大きいはずなのです。

こうしてみると、フィジカルでのトレーニングで、一つのことを長年かけて身につけていくプロセスを経験していない人がたくさん出てきたことも低迷の要因の一つでしょう。それが変革の理由です。

ヴォイトレそのものの目的は、日常のレベルへといくらでも下げていけます(私も、ときどき口腔ケアの仕事で呼ばれます)。

仕事や芸なら、その他の方法でも総合的に補えます。むしろ、声よりも他の能力を磨く方が早道です。そういうことで、発声専門のトレーナー、声そのものを養成していく、といえるだけの人は、そうはいないのです。むしろ、少なくなってきたと思うのです。

 

○パワーをつける~器づくり

 

 私は、10年以上、しっかりと声の研鑽を積めるように研究所をセットしてきました。そこは変わりありません。

2、3年でうまくなって、そこから先、頭打ちになるのは、声のパワー、インパクトがないからです。それは、後からつけにくいから、最初が肝心なのです。

昔は、「大きな声が出なくては歌手や役者になれない、声の職につけない」と言われていました。生の声の力で問われていたからです。今は、そうではなくなりました。 しかし、長く仕事を続けるうえで大切なのは、「タフさ、声の強さ、喉の強さ」です。そういうことでは、今も同じです。そういう基礎がないから、30代、40代でも声に変調をきたすのです。人生100年時代、それでは通じません。

 

本当に大切なのは、声量や声を強くすることではありません。そうして「自分の器を大きくするトレーニングで自分の限界を知り、個性を知り、さらに、自ら、声を管理できるようになること」です。

 初期のトレーニングの大切さは、どの分野でも基礎の徹底です。肉体を使うものなら体づくりです。それを、メンタルトレーニングばかりやフィジカルトレーニングばかり、あるいは、応用ばかりとか、基礎と応用のどちらも中途半端に行っているのが現在のヴォイトレのように思えます。

海外も似てきていますが、正しいとか間違いを超えて、ソフトなものとハードなものなど、その人の個性重視でいろんなものが共存できているところもあって、そこは、さすがだと思います。

たとえば、セス・リグスは、すばらしい声をもつ世界一著名なカリスマトレーナーの一人ですが、それゆえ、偏ってもいます。特に日本人に対しては。だから、彼が教えても彼のような声にはなりません。しかし、彼の周辺には、全く逆のタイプの方法のトレーナーもいるということです。

 

○美空ひばりにみる話し声と歌声の一致

 

 美空ひばりは、現在でも、日本の歌い手の女王で、その声は天才と言われるほどすぐれた使い方をしていました。彼女のベースは、大正期の一流の歌手、役者です。そして、子役として男の子を演じてきました。日本人の歌手には少ない太い声は、役者としての喉声がベースだったと考えられます。

昭和40年代のスランプのときは、太い声に偏り過ぎていましたが、かつて、作曲家、船村徹が見出した裏声の復活によってオールラウンドな歌手となりました。端唄、小唄からビートルズのコピーまで完璧にこなせたのです。30曲くらいは、途中で水も飲まずに一気に歌っていたようです(まねてはなりません。念のため)。

日本の声楽家は、歌のためにしゃべるのをセーブし、しゃべる声は普通の人が多いのですが、海外のオペラ歌手では、しゃべる声もすばらしく、そのまま歌います。一般の人のレベルで、日本人とは大きな差があるのです。本当は、歌い手はしゃべるところでも鍛えることが必要です。しかし、それは歌唱に入り、ハイトーンなどの調整期には両立しえないのです。

できるだけ、早めに声量、大きな声を意識して伸ばしたいものです。十代までの合唱団の歌唱、発声法のようなものしか知らないようでは伸びにくいようです。スポーツクラブでも複数の種目を経験した人の方が伸びると言われています。

 

○毎日、歩くように声を使う

 

 「毎日1時間、声を出していない人が、1時間、せりふを演じたり歌えるわけがないでしょう」。しかも、歌は、高低強弱で、まさに“階段”です。すると、そういう人は、声を小さくして、つまり、段差をなくして凌ぐのです。マイクに頼るのです。これでは、「歌になっても声のトレーニングにはなりません」。

鍛錬ということばが、嫌われているようでもありますが、それをスポーツのように「全力で精根尽きるまでやると力が抜けて身につく」ように思ってはなりません。喉はそこまで耐えられないからです。いや、耐えられる喉をもつ人もいますが、かなり少なくなっています。そこでは徹底して合理的に鍛錬していかなくては変わらないでしょう。

 

メンタルの問題が大きくなってきましたが、これもフィジカルからメンタルを鍛えるのです。いえ、勘と実感を磨いていくと言った方がよいでしょう。

このフィジカルにおける総括的な発声の問題は、結局のところ、解剖生理学やケアの医学で「神経系などのコントロール」というように説明されています。筋トレ・呼吸トレ害悪論の根拠になったようなものです。

しかし、そうした正論と思われる批判を受け入れたところで、トレーナーや本人は、よりローリスクローリターン傾向になるだけです。

ハイリターンが目的であれば、期限や成果などのリスクとどう兼ね合わせていくのかです。そこは、全くスタンスが違うのです。そこを逃げずに、前向きに挑戦させられるのが、トレーナーという存在でありたいと思っています。

 

 喉を酷使しない、充分休める、声を無理に使わない、風邪のときは出さない云々は、当然ふまえておくことです。しかし、現場での仕事は、そういうリスクのオンパレードです。

 下手なヴォイトレをするよりは、「海外へ行って生活する」「出家する」ことをお勧めしてきました。あるいは、当初からずっと提唱してきましたが、「腹から笑い転げる」方がましです。全ては、結果をみて声がどうなのかです。ここではヴォイスのトレーニングですから、声の結果をみてということです。

最後に、日本人はコピー好き、原調好きですが、ファンはともかく、業界の関係者には、アーティストの喉への手厚い配慮をお願いしたく存じます。楽器のように弦を張り替えたら済むものではない、本当に貴重なものなのですから。