ブレスヴォイストレーニング研究所

 

レッスン受講生について(さまざまな分野の受講生)

 

  現在、ブレスヴォイストレーニング研究所には、いろんな分野のプロの方も、いらしています。もちろん、一般の方も歓迎しております。(1994-2000年はプロより一般の方のグループ指導が中心でした。)

 日本トップクラスの劇団の役者(劇団四季正会員、準会員(複数名)、宝塚歌劇団)、声優(『千と千尋の神隠し』や『24時間』出演のプロの声優など)から、紅白出場などのベテラン歌手までいます。

 これまでにミュージカル、エスニック、民族音楽、人形劇などのパフォーマー、落語家(噺家)、お笑い芸人、邦楽、長唄、小唄、端唄、義太夫、浄瑠璃、清元、浪曲、謡曲、雅楽、詩吟、声明、ご詠歌、常磐津節、新内節、民謡などでは、師匠や人間国宝のお弟子さんも多数いらっしゃっています。

 

レッスン受講生の職業(ここ30年の在籍数年平均200~400名)

 

  一般の方やプロ志願者だけでなく、すでにプロとして活躍中の皆さん、師匠、トレーナーなどもいらしています。

1.ビジネス:社長、ビジネスリーダー、人前で話す人や声でのコミュニケーションの必要のある人、会社研修、就活、婚活ほか日常のためのヴォイトレ希望者

2.邦楽:長唄、小唄、端唄、義太夫、浄瑠璃、清元、浪曲、謡曲、雅楽、詩吟、声明、ご詠歌、常磐津節、新内節、民謡ほか(人間国宝のお弟子さんなど)

3.芸人:お笑い、噺家(そのお弟子さん)

4.声優:有名な役どころ出演者多数(代々木アニメーション、ナレーション研究所など)

5.俳優:劇団四季、ミュージカル、劇団多数、そのオーディション受験者  

6. アナウンサー、ナレーター:キー局、タレント、司会、パーソナリティ、朗読家、詩人(NHKほか民放、地方の方) 

7.指導者:合唱団、コーラス、トレーナー

8.声楽、ヴォーカル:オペラ歌手、音大生、音大受験生、ポピュラー、ロック、ジャズ、オールディズ、シャンソン、パンク、ヘビメタ、バンド、弾き語り、シンガーソングライター、エスニック、フラメンコ、バリ、ハワイアン、サルサ、サンバ、ボサノヴァ

9.学者、医師、演出家、劇作家、日本語教師、外国語教師、言語関係、研究者など(特に音声医の紹介中心)

10.大道芸人、影絵、芝居、パントマイムほか

11.声の弱い人、病気や手術後の人(医者と共に)、すぐに声の支障の出る人、性同一性障害

12.その他 大きな声を出せるようになりたい人、強い喉にしたい人

 

構成比(重複あり)

・プロ 25% ・プロ志願者 35% ・一般、その他 45%   ・一般・ビジネス 45% ・歌手 30% ・役者・声優・ナレーター 30%

 

 プロの所属、あるいは出身プロダクション、劇団、出身の一例

 

 徳間ジャパン、ソニー、バーニング、東音、オスカープロモーション、マウスプロモーション、アーツビジョン、青二プロダクション、アシューズ、81プロデュース、大田プロダクション、キリンプロ、圭三プロダクション、ジャパンアクションエンタープライズ、松竹芸能、ディスカバリーエンターテイメント、ゆーりんプロ、ぷろだくしょんバオバブ、ホリプロ、吉本興業 ほか 劇団四季、宝塚歌劇団、演劇集団円、オペラシアターこんにゃく座、加藤健一事務所、劇団新感線、新宿染山泊、劇団スーパー・エキセントリック・シアター、劇団昴、青年座、音楽座、テアトルエコー、俳優座、劇団ひまわり、文学座、俳協、A-team ほか

 

レッスンの受講生のデータ(2010年時、複数回答で集計)

 

 ここではどんな人が受講されているのか、よく聞かれます。簡単にまとめておきますと、  

1.カテゴリ・ジャンル  ・歌 30% ・せりふ 25% ・声そのもの 45%    ポピュラー、ロック、エスニック(フラメンコ、バリ、サルサなど)、ジャズ、シャンソン、邦楽・伝統音楽    ミュージカル(劇団四季(正会員、準会員ほか)、新感線、こんにゃく座など   劇団(関東の劇団関係者、韓国)    声優(事務所、養成所の所属者)ほか   ビジネスマン、OL、経営者、自営業者、弁護士、外交官

2.受講のきっかけ  ・本やマスコミ 40% ・HPやネット 40% ・紹介や研修 30%など

3.受講の目的   ・声を強くする ・声をよくする ・歌をうまくする ・声を直す(治療補助) ・作品のチェック、アドバイス

4.年齢   ・12歳から80代まで ※ほぼ20代から50代まで同じくらいの割合です。

5.男女比   ・ほぼ半数

 6.住んでいるところ(通信受講を除く)   ・首都圏,、東海  80% ・関西10 % ・その他 10%

 7.方法   ・通学 80% ・通信 10% ・その他 10%

 8.レベル(ヴォイストレーニングでの初心者 全体60%)   ・プロレベル 20% ・セミプロ 20% ・一般、初心者 50% ・その他 10%

 9.出身スクール  ・他からの転入 30% ・初めて 40%   ・他とのWスクール 40% ここだけ 40%

 

レッスン受講生の方々の目的

 

  ここにレッスンにいらっしゃる人について、よく尋ねられます。いろんな方がレッスンにいらっしゃっています。そういう方々のここに通われる目的や仕事、それをとりまく環境、トレーニングの現状や指針などについて、参考にしてください。

 

 (1)ビジネス、一般

 

1.声が聞き返されたり、相手にうまく届かないという一般の人

  この10年、多くいらっしゃるようになったのは、若い人から年配の人まで、一般の方々です。大きく分けると、すでにかなりの力がありながら、さらにトップレベルにまで高めようとする人と、まわりのレベルに達しないために、追いつけ追い越したいという人が多いようです。   

 この研究所の第一の目的である、言語音声力をプロ、役者、外国人並みレベルにするというところに沿っているため、ここだけで可能ではないかと思われる徹底した声の基礎づくりと、その応用としての表現力を磨いてもらっています。                                                    

 多くのヴォイトレがその人の状態をよくした(リラックスした)声で満足させているのに対し、ここは根本から体と感覚を変え、小さくても通る「芯のある声」を養成させています。一言聞いて違う声、通る声になるまでを目的としているのです。

 

  英語耳シリーズの「英語耳ボイトレ」(松澤喜好×クレア・オコナー×福島英 共著(アスキーメディアワークス))発刊の影響もあり、外国語教師もいらっしゃいます。(NHKの中国講師など)一般の人でも、放送や吹き込み、司会、ナレーションのプロと違わないレベルに(声だけなら、それを超える人もいます)なっていきます。日本語教師もいらっしゃっています。

 

2.経営者、二世やベンチャー企業も含め、ビジネスリーダーのためのパワフルな声とその演出

  聞き取りやすい声、信用や説得力のある声、TPOに応じられる声、大きな声で長く話していても、かすれない声づくりなどがメインです。(ここにもお招きした平田オリザ氏が元首相のスピーチ演出についたように、この分野の必要性はとても高まっています。私も経営合理化協会の社長演出塾で、ヴォイストレーニングを行っています。)

 

3.声に支障のある人のケアとフォロー

 加齢や声の病気、手術(脳も含む)後のケアを、医者や言語聴覚士レベルよりは、健常な状態からフォローしています。(病院と提携しながらのときもあります。)日常で何とか話せるレベルから、声として人並みに使えるレベル、さらにその上を目指しています。声がつぶれた人が、使いすぎた人のフォローも行っています。

 

4.アンチエイジング

 声を若々しく保ちたい人です。拙著「人は声から若返る」(祥伝社)をお勧めします。 

 

5.人間関係 

 コミュニケーションに悩む方、就活、婚活対策にもどうぞ。

 拙著「人に好かれて、きちんと伝わる声になる本」(中経出版)。「「愛される声」に生まれ変われる本」(宝島社)をお勧めします。 

 

(2)声優、俳優

 

1.吹替の声優・アニメの声優

  声量がないといわれ、いらっしゃるケースが増えています。日本ではどの業界もアナウンサー、ナレーター、声優、タレントと、アイドル的に、声が現場で通用しないままに、合わない役や無理な仕事を2、3年やって、つぶれるパターンが多いのです。

 

  ここでは現場優先として、プロとして通用する見せ方(声の使い方、マイナスを消すこと)とともに、本当の基礎力をつけていくトレーニングを別に必ず通しています。この二段構えの戦略は、個人やトレーナー1人では、とても高度で難しいものです。                                                

 アニメなどについても、その人の声と合っていないときは、割り切って痛めない形で演じさせつつも、トレーニングとしては本人のもつ本来の声を伸ばすとようにしています。アニメ声も声を壊す原因となっています。

 

2.俳優・役者・劇団員

  ここには多くの著名な方が、ある人は劇団やプロダクションから、ある人は個人で、こっそりいらっしゃいます。(残念なことに、日本では外部に習いにいくのを知られるとまずいケースがけっこうあるのです・・)                                                               

 ときには若手の教育指導役として、後輩を一緒に連れてこられることもあります。発声のしくみや方法をモデル(模型)や図で、理解して音声学などに関する知識を身につける人もいます。

 

 かつては、大声トレーニングや腹筋の鍛錬で、現場で大きくはっきり発音しながら、声を鍛えてきた人が多いのですが、今はそれだけでは通じにくくなっています。体型も顔の作り、舌やのどの筋肉も鍛えられる条件を満たしているとはいえなくなっているからです。顎関節症、歯の矯正なども含め、まずは一人ひとりの体とのどの健康のチェックから、トレーニングを選んでいきます。

 

 すばやい動きを取り入れた反面、体や呼吸がしっかりとできていない役者さんがほとんどです。口の中でつくった顔面でひびかすような声でしのいでしまうのです。そうでないと、のどに負担がかかるからです。豊かな太い声のない日本人、今更ながら、なぜ多くの専門家はそこに気づかないのか、改善できないのでしょうか。もっとも研究するときは、「アー」と一言出したときのパワーの違いを埋めることから始めるべきでしょう。

 

3.お笑い芸人・噺家

  お笑い芸人は、もうそういう呼び名でなく、マルチタレントやアーティストといってよいでしょう。かつて音楽プロダクションが、芸人をよこしたのにびっくりしたのが嘘のようです。今やタレントとしての力、歌唱力、ナレーション力をもち、司会、ナレーター、声優、役者(歌手)、作家、映画監督と、すべてにおいて、才能を発揮している人が多いです。                                                                      

 ドリフターズにみるまでもなく、音楽とお笑いは同じ分野でしたし(エンタツアチャコのしゃべくり漫才の前は、一般的に漫才には楽器があったのです)、お笑いにミュージシャン志望だった人がたくさんいるのは明らかでしょう。(かぐや姫など、コミックバンドはお笑い系ですし、さだまさしさんなどは噺家を目指していたので、そのステージはトークショーですね。というより、日本の歌手のステージは、今やMCなしにもたないのです。)噺家(落語家)やその弟子さんには、ここはおなじみの場となってきています。

 

  私がみるのは、声の表現力です。M1グランプリで、これまでに3組ほどだけがみせた、声の使い方と間とタイミングの完璧さ、並のミュージシャン以上の体、声、ことばの説得力、アドリブ、対応力などに、私はロックやジャズを感じるのです。                                         

 現場には笑いという明瞭な結果を伴う厳しさがあるので、1つのネタをやるにも、今時の歌手の何倍も練り込み、完成度をあげています。高音域に届かせたり、マイクに頼って無理に伸ばさないから(まさに読経でヴォイトレと同じことをしているお坊さんの声のように)、声も滑舌もよくなるのです。ここでは、ネタだけでなく、滑舌、声量、声のトーン、声の高低などを基礎トレーニングにして、応用性を高めています。

 

(3)歌手、その他

 

1.Jポップス歌手、ベテラン歌手、リバイバル歌手

  若いときに天性と感性だけでプロとなった歌手の5年、10年、20年たったあたりでの声の調整のレッスンは、口コミも通じてかなり一般化しました。年配の人では、拙著「人は声から若返る」(祥伝社)を読んでいます。                                                               

 ベテランの歌手がいらっしゃる目的は、プロとして活躍してきたけど、本当に声の能力を活かせたのか再検証したいとか、基礎の固め直しやエイジング対策(アンチエイジング、老化防止)が多いです。

 発声やそれを司る器官の働きが衰えたり、若い頃のようにうまくいかないということでいらっしゃる人も増えました。

 ポピュラーの発声にも理解があり、その指導実績のある声楽家をトレーナーとしている私どものところでないと、なかなかプロの細かい要求には、応えられないことでしょう。(歳とともに声や歌がよくなったから、もっとよくしたいといらっしゃる人もいます。)

 

  研究所はいろんなタイプのトレーナーがいます。日本のほとんどのヴォイトレの基本ノウハウや声楽のベースのトレーニングとしては、ほとんどのタイプに当てはまるヴァリエーションを持っています。音源を聞いて、声の微妙な違いや歌い方をチェックして、元に戻せるのか、先にはどうなるのかのアドバイスもしています。基礎レッスンから、レコーディングやライブのアドバイスまでしています。ときに過去と現在との声紋分析のデータなども参考にします。

 

2.邦楽家、エスニック音楽の歌い手

  異色分野の方が数多くいらしているのが、研究所の大きな特色であり、誇りともいえます。長唄、小唄、端唄、義太夫、浪花節、詩吟、民謡から歌舞伎、狂言、能楽、神楽など。人間国宝のお弟子さんから何名もいらっしゃいました。その都度、こちらも一から勉強でした。そういえば、噺家やその弟子、ブレイク前のお笑い芸人や、レゲエやラップ、DJなどのアーティストが来ています。

 

  私どもは、それぞれの芸事はわからなくとも、声の伝わるところが把握できます。そこで、一度、その分野でのしばりを外して、世界共通の人間の体から発声の基礎の基礎のところで声を取り出し、そこからはご自分で考えてくださいというスタンスで対応します。師匠が「お前も柔軟になってきたじゃないか」といったら、オンの字とお考えくださいで行っています。                                                                   

 ここでの複数トレーナー体制と同じで、教えることをメインとせず、すべては、あなたが学んでいけるために気づきの材料として置いているのです。これまでの発声や唄やせりふの「やり方」をなくし、体も感覚も鍛え直してしぜんに本来もっているものが、先に生きるように導いていくことなのです。

 

 3.ミュージカル俳優

  子供ミュージカルで声を痛める人が少なくありません。是非、解決しにいらしてください。劇団四季は正会員、準会員もいらっしゃっているだけでなく、オーディションに対してもいらっしゃるようになりました。

 日本のミュージカルでデビューするなら、声楽は必修です。東宝、宝塚の人もいらっしゃいます。                                                        ミュージカル志望なら、ここで、音大卒業と同じだけの力をつけることを目的にしています。声楽家のレッスンだけではどうしてもポピュラー特有のリズムやオリジナリティに欠けるので、別に補強しています。(日本のミュージカルでも、大きく欠けているのですが)

 

  期限が切られているオーディション、受験対策などには、プランニングして進めます(他の劇団や音大の受験も同じ)。信用やコネクションも大切です。きちんと力をつけていけば、長く続けられる、歌唱技術を活かせる職として数少ない残っている分野となりました。

 

  劇団のトレーニング法や目指す発声はそれぞれに大きく違い、あまり感心できない(それゆえ、世界一流やブロードウェイレベルにならない)のですが、日本のミュージカルという興業を成功させられたのも、それゆえという、残念な矛盾があります(これは今のJポップスにもみられる傾向です。個人の歌や歌の力が弱まっていく一方、トレーナーもそれに迎合しているのは、どうも困ったことです)。

 

 4.ゴスペルクワイア、合唱団

  30年ほど前、ゴスペルの講座を開き、15年ほど前は黒人のトレーナーにもレッスンをお願いしていました。毎年、レクチャーに20人以上いらっしゃり、ここでがんばっていらっしゃいます。指導方針は、ミュージカル俳優とほぼ同じです。                                                                       

 

 5.ジャズ、ボサノバ、ラテン、ハワイアン、シャンソン歌手

  地方でプロとして活躍している歌手は、月に1、2回しかレッスンできないことが多いため、そのときに4コマ(90~120分)まとめて2~3人のトレーナーがみるようにしています。(私やトレーナー1人のときもあります)                                                      

 ここのレッスンは、最初は回数もトレーナーも多くつけ、3,4年経ったら、月に1,2回とか年に何回かという形でフォローするのを理想としています。       

 10年以上いる人も増え、休会しても会報購読をして自主レッスンに励んでいる人が三ケタ)もいるというのは、ありがたいことです。こういう人たちの残してくれた経験で、新たな研究とよりよいトレーニングが日々、行われていくのです。

 

6.オペラで歌いたい人、オペラ歌手、声楽家

  声楽家でも先生の選び方や相性で悩んでいる方が、少なくありません。日本のクラシック界において、上意下達のまま、今の時代にとても合っているとは思えません。

  私は、声楽に、すべての日本人に必要となる確かな基礎があることを認めています。ただそれが必しも様々なタイプの人にうまく対処できていないので、その問題を解決する試みを続けてきました。                                                                一流のオペラ歌手を育てるにはまだまだ日本は人材不足ですが、一流のオペラトレーナーにつくまでの基礎づくりや日本のオペラデビューには対応できます。一般の方でオペラを歌いたい人にはもっとも適していると思います(ベテランのポピュラー歌手にも、オペラのための発声トレーニングで、喜んでいただいています。)

 

7.ヴォイストレーナー

 なぜトレーナーが、ここのトレーニングにくるのでしょうか。クラシックでも邦楽でも生涯、師をもつのは珍しくありません。人を教える立場になってこそ、自分とは違うタイプの生徒さんにどう教えるのか、自分の方法がベストなのか、もっとよい方法はないのかなど、たくさんの経験を積んだ先達に聞きたいことは山ほど出てくるものです。ちなみに、わからないことがたくさん増えていくことが本当に学ぶということなのです。

 

  私もここのトレーナーも、師および、いろんな専門家に絶えず教えを仰いでいます。専門家であればこそ、専門のことを学び続けるとともに、専門外のことは、専門家に依頼できるようにしなくてはなりません。                                                            

 ここでは、本人の声力アップに加え、ケーススタディでアドバイス、もしくは共同研究しています。主観に頼りすぎないために、最新の科学技術も併用しています。

 

(4)その他

 

その他に、こんな方もいらしています。

 

1.アナウンサー、ナレーター 2.政治家、うぐいす嬢  3.経営者、役員、セレブリティ 4.セールスマン 5.電話交換手、コールセンター、オペレーター 6.受付(レセプション)  7.接客、サービス業全般  8.教師  9.お笑い芸人  10.会社への面接対策(社会人、学生)  11.歌手のグレードアップ

 

1.アナウンサー、ナレーター

 ここのところ、もっとも人気の職の一つは、女子アナウンサーといわれています。アナウンサーという職業の人には、よく接してきました。彼らは、声や話し方に興味、関心があり、最初は発音や滑舌、次にアクセント、イントネーションや話法を勉強しています。                                    

 アナウンサーには、大学やカルチャーセンターなどで、日本語の話し方の先生をしている人もいるくらいですから、話のプロです。

 しかし、声としては、専門が違うのです。一言でいうと、客観的な報道という使命ゆえに、彼らの声は、最初は不自然なのです。

  アナウンサーは、誰にでも(日本人すべてに)、同じように同じことを伝える仕事です。報道という事件や事実を伝えるのですから、個人によって差があっては困ります。感情移入もタブーです。華やいだニュースと死亡ニュースを並べるのですから。これは、伝え手としての標準化が求められているということです。(それゆえ、個性を排除するところに、アナウンサーの技術もあるのです)                                                       

 読む人が違うことで、伝わることが違っては困ります。(私は、それもよいと思うのですが…)。つまり、客観的な事象の伝達ということでは、なるべく個性や個人の感情が入らない方が無難なのです。                               

 ここには「放送に立場があるとよくない」という、日本らしい判断基準が、少しでも考えたらムリな建前が、残っているのです。(かつて久米宏さんの政治的立場が問題になりましたが、彼はキャスターとよばれています。)                                   

  私が考えるに、アナウンスは「伝えること」、表現は「伝わること」、一字の違いですが、意味合いは、大きく違います。                 

A.アナウンサー、ナレーター、日本のクラシック歌手(見本、手本、正解あり)                                         B.パーソナリティ、キャスター、落語家、役者、ポピュラー歌手(個性、キャラ、オリジナリティ)                                 

 このように並べると、少しわかりやすいでしょう。

  さらに、                                                                         A.標準語(共通語)、高低アクセント、イントネーション、言語    B.方言可

A.正しさ、一貫性、内容    B.強さ、意志、感情、思い

 アナウンサーの声を愛せるかどうか、考えてみてください。アナウンスは、電話の一般的な応対などには充分です(それでも、喉が弱い、声の耐性がなくて来る人はいます)。特に、最近は、朗読や歌や芝居、あるいは一つ上のランクのビジネスをやるときに、アナウンスの技量が邪魔をして不自然、しかも声の力が必要となりますから、学びにいらっしゃるのです。パワー、太い声、低い声、説得力、情感のある声など、キャスター職や朗読にふさわしい声を求める人が多いです。                                                                 

 余談ですが、日本の公共放送のアナウンスは、欧米のかっこよい語り口調を模範にしただけあって、一つの型にまで高められていたと思います。私は、松平定知アナウンサーや加賀美幸子さん、草野光代さんあたりは、声もこなれ、人間国宝級と思っています。

 

2.政治家、うぐいす嬢

  選挙の後盤に入ると、皆、声がガラガラになります。私は、これは日本人の人情、浪花節に訴える選挙のやり方と思っていました。しかし、本当にのどをこわしているのですね。政治家も応援演説者も、ガラガラです。                                                             

 政策もつくらず、声も出ない政治家って、何になるのかというような、うがった本質論はさておき、映画俳優以上の演説をする他の国の大統領選などを楽しんでいる私には、やはり人前に立つには、ほとんどが失格とせざるをえません。                                                    

 欧米では、大統領も首相も社長さんも、声には努力しています。スピーチティーチャー、日本でもカラーコーディネーター、スタイリストなどは、政治家につき始めているようです。形(服装や色)でみせるのも大切ですが、声はもっと大切でしょう。                                            

 でも、日本人はそこまで声には敏感でないのでしょうか。                                                      

 もともと肉声でよびかけ、人の心を動かし、鼓舞して、民意を一つにする。政治とはそういうものでした。戦国の世からリーダーや武将は、声が届かないと務まりませんでした。名のりもあげられません。そう、まさに政治家は、声のエリート、戦いの指揮官だったのです。                                 

 その証拠に、かつての政治家は、大学では弁論部で、声と語りとを磨いていたのです。これまでにもっとも多くここにみえたのは、外交官でした。少しずつ政界の方もいらっしゃるようになりつつあります。

 

3.経営者、役員、セレブリティ

 “笑っていいとも”で「セレブを当てよう」という企画がありました。三人の出演者のファッション、そのセンス、着こなし、身のこなし、話の受け答えなどから推察して、その中の一人のセレブを当てるのです。                                                             

 これは声のトーンや声の感じからけっこうわかります。成金タイプは、あるときに急にそうなったのですから、声が変わることはありません。不自然な勢いがあり、品はあまりない。自分一代で成り上がるだけ、声の力を使ってきたので、声力があるのです。声力や説得力がなくては、成り上がれません。                      

 名家、名士は、落ち着き、ものごし、声のトーンでわかります。育ちでの声の使い方が出るからです。品よくおっとりしている人も、少なくありません。           

 つまり、これから世の中で活躍したい人は、声から変えていくということでいらっしゃいます。また、リーダーとして部下の声の指導も必要です。セールスや接客の能力が一変し、サービス向上、売り上げに結びつきます。

 

 4.セールスマン

 日本のセールスマン教育では、“ソ”の音で声を出すことといわれた時期がありました。男性が実際に出すのはピアノの実際の音高を聞いても、その1オクターブ下です。ソから上で話すと、声のカン高いおじさんとなります(声のピッチは、高く聞こえるのと、実際に高いのとは違うのですが、ここでは音高とします)。   

 私は男性の高い声は、あまり好きではありません。声が高いだけならよいのですが、こういう人は、早口で、一気にまくしたてるタイプが多いのです(俳優なら、ウイル・スミスあたりでしょうか)。通販番組のテンションでは、売りにくいものもたくさんあります。

 

 5.電話交換手、コールセンター、オペレーター

 ビジネスの中では、あらゆる分野が声と関わっているといえます。なかでもコールセンターは、声と深い関係があります。電話は姿は見えず、声の力だけで問われるからです。今、声の使い方がもっとも必要とされている一つが、コールセンターです。

 コールセンターというのは、お客さんの声と企業を結ぶ仕事です。コールセンターとして需要のあるところは、クレームの処理ができるところです。クレーム処理の技術というのは、声の使い方の最前線なのです。

  日本は歌がうまくなりたいという人に対して、カラオケを開発し、ハード面から片付けていきました。私は声の計測や分析に、そういうハード面も取り入れてきました。警察の科学調査や耳鼻咽喉科の医者、言語学者も使っています。ビジネスで実現化されているのは、コールセンターです。                        

 今のコールセンターの最新システムというのは、かなり進歩しています。お客さんの声とオペレーターの声をグラフでみて、お客さんが怒っているから、このオペレーターでは処理できないという判断ができるような機器もあります。                                                    

 オペレーターがお答えするときに、できるだけ日本語として、相手に聞こえやすく、音声を加工することもしています。声が聞こえにくい人とか、あまり声がよくない人でも、マイクを通すといい声に聞こえるというようなことをしているということです。

  ビジネスの中では、直接、声の威力がわかるのは、電話です。電話は相手が見えませんから、耳へ働きかける声で決まっていきます。たとえば、電話のアポインターの仕事です。そこで電話の講習をやることもあります。新入社員研修で、大きな声で返事ができるようにしてくれという依頼もありました。今は、相手に好まれる声にというニーズが多いです。学生の就職セミナーにも関わっています。

 

 6.受付(レセプション)

  私もいろんな劇団、学校、そして会社をお訪ねしています。「いらっしゃいませ。どちらさまですか。お約束ですか」と、声がかかります。その受付に「会社の顔」として、「声に難が」、ということが度々あります。応対の話し方トレーニングはしているので、ことばづかいは丁寧ですが、気持ちが伝わるには、やはり声のトレーニングが必要です。

 

○ホテル、フロント(コンシェルジュ)                                                             海外では、ホテルの格式もドアボーイやフロントが支えています。年配の、そのホテル一筋、「ホテルのことも街の歴史も誰よりも知っている」という人の声に、客は安心するのです。

 

○ガイド、ツアーコンダクター                                                                 ガイドやツアーコンダクターには、なかなかくだけた人が出てきました。ラジオのパーソナリティのような日本語で、ネタ連発で、そのプロ根性に感心したことがあります。                                                                             海外の動物園でしたか、そこでのアナウンス・ガイドは、映画の役者さながら、プロフェッショナルなみせ方、しゃべり方、「声の使い方とはこうだ」と、学ばされたことは多々ありました。

 

 7.接客(コンビニ、ファミレス、ファーストフード、コンパニオン、居酒屋の店員)など、サービス業全般

  コンビニもファミレスも、居酒屋まで、あの大声やカン高い「いらっしゃいませー」。コンビニで何も買わずに出たときの「ありがとうございましたあ!」、声をかけることがリピーターにするもっとも強い手段という方法は確かなようです。スマイル0円、声も0円。

  彼らは、開店前に挨拶のトレーニングをしています。                                                      私も「実践的なヴォイストレーニングなら、居酒屋に勤めろ」と言ったことがあります。セールスの強い会社なども、朝礼での発声練習は徹底しています。3分間でスピーチなども、はやりました。

  「声をあげる」ことは、人前で話すことに慣れていない日本人にとっては、けっこうイヤなことで、それが快感になるとき、大きな成果をあげることになるでしょう。                                                                           本当はこういうトレーニングは、家庭や学校で受けていなくてはならなかったのです。ところが日本では、音声教育がなされてこなかったのです。昔は寺小屋でやってましたが。大きな声が出ない人、続けて大きく声を出すと、のどを痛める人が多くなりました。

  コンパニオンのマニュアル声は、仕方ないです。でも、声の使い方に、もう一工夫すれば、ひどくはならないのです。客が1人のときと4、5人のときは、声のテンポや大きさは、変えましょう。                                                                   タクシーの運転手さんも含めて、サービス業は、声のかけ方一つで決まります。床屋さんから、エステ、医者から教師まで、サービス業として考えると、必要です。

 

 8.教師

  子どもたちは皆、お腹から声が出せなくなりつつあります。今や、しゃがんで和式トイレも使えないそうです。おんぶもできない。正座とそんきょは、日本人の証しでした。                                                                             

 一方で運動会や卒業式などは、声をそろえて言うのが流行しています。「楽しかった運動会」、「たくさん歩いた秋の遠足」、というようなことで声量不足を感じたら、トレーニングが必要です。                                                                         幼稚園の発表会などでは、声は吹き替えというか、テープに入っていて流れ、子どもは出てそのテープの声に合わせて演じるだけです。せりふを忘れないのと、時間通りに終わらせる。ということで、先生たちの労力をさくとともに、誰もが同じように役を演じることができるのです。よくありません。声を身につける最大のチャンスなのです。

  「声の出ない教師は失格」  「体育やクラブ活動で危ないと言えなければ危ない」と、私は述べてきました。

 

 9.お笑い芸人

  今の人気ナンバーワンは、お笑い芸人でしょう。私は、彼らを役者であり、マルチタレントと思っています。コメディアクターでもあります。売れると司会やゲストとしてモテモテです。                                                                       

 歌手がTVで歌わなくなったのは、芸の力がなくなったからにほかなりません。お笑いの人のセンスと修業に負けているのです。アナウンサーもキャスターも、その座を彼らに奪われようとしています。つまり、彼らは総合力で秀でているのです。                                             

 かつてお笑いの人の仕事場は、劇場や深夜ラジオのパーソナリティでした。トレーニングよりも現場で鍛えられていったのです。5分間で、1回もかまないほど、厳しい場をもつから、同じ歌をリバーブかけて、何ヵ月も歌っている歌い手の比ではありません。

  ときおり、お笑い芸人の歌がヒットチャートに入ったものです。彼らほど効果的に声の力を利用しているタレントはいないのです。声で、いろんな役とシチュエーションを豊かに表現します。                                                                            

 もともと、落語家は、この能力に秀でていました。そこから音声だけ独立したのが、声色芸や声優でした。                         

 いくらすぐれたネタでも、声が伴わないと、生きません。                      

 よい声かどうかは別として、その魅力は、声抜きには語れません。ものまねのトップクラスは、声をコントロールする高度なテクニックをもっています。音色やオリジナリティをもたない歌手では、かないません。

 

 10.会社への面接対策(社会人、学生)

  私は声が専門ですから、ファッション評論家がきっと無意識に服装チェックして、その人を格付けしているであろう、と同じように、しぜんと声から人をみます。何百人と声でおつきあいをし、これまでの人生のなかでも、多くの人の人生を見てきたのです。「この人は、きっとこうなる」というのは、へたな占いよりもずっと正確に声で知ることができます。                                                                       

 スピリチュアルの江原啓之さんは、音大声楽科出身です。                                                     

 声は日本人の盲点です。どんなに着飾っても、メイキャップしても形はごまかせますが、内心は、声にみえ隠れします。化粧やファッション、アクセサリーほどに、そこまで声については、本人が練っていません。                                                            

 本当に人間をみてきた面接官や人事担当者は、私と同じように声についても大きな割合で判断の材料にしているのです。経歴詐称なども、顔と声をみたら、だいたいわかるものです。それでわからないなら、その経歴相当の声の力があるから、構わないともいえます。

 

11.歌手のグレードアップ

 歌には、[自分の表現を自分の呼吸で声としてとり出すことが基本]です。その[作品はリアリティ(立体感、生命力)に、あふれている]かどうかでしょう。

 次のような場合も、状況さえそぐえば、大化けすることもあります。歌というものは、おもしろいですね。日本人(客)の好みも反映されます。

 よくいるタイプをあげておきますので参考にしてください。

 

○唱歌コーラス・ハモネプ風の人・・・感じられない、得意ソウ、“うざい”  唱歌風の歌い方は、発声トレーニングを受けてきた人に多くみられます。共鳴に頼りすぎて、ヴォリューム感やメリハリがない。一本調子、正確さだけが取り柄で、おもしろみがない。つまり、誰が歌っても同じ、その人の個性や思いが出てこないのです。      

合唱団、音大生、プロダクションの歌手、トレーナーなど、正規の教育を受けてきた人にもよくみられます。音楽を表現するのに必要なパワー、インパクト、リズム・グルーヴ感がないのです。生まれつきの声のよさだけに頼ってきた人にも多いです。先生の言うままにつくられた“日本では、歌がうまいといわれる”優等生タイプです。

 

○アイドル型・タレント型の人・・・やっていることがわからない、カワイイ、“ガキっぽい”  しゃべり声で、甘えた感じで歌う。喉声にならないように浮かし、やや発音不明瞭で鼻についた声です。タレント型ヴォーカルに多くみられます。他の人がやると、くせのまねにしかなりません。カラオケでは目標とされています。とはいえ、高度なレベルでは、ニューミュージックやJポップス、演歌の歌い手など、声が高く生まれついただけで、作詞・作曲・アレンジ力で通用しているヴォーカリストにも多いようです。他のタイプの人には、真似て百害あって一利なしです。

 

○役者型、喉シャウト型、語り調の人・・・のれない、くさい、“くどい”  ことばを強く出し、せりふとして感情移入でもたせます。個性やパフォーマンス、演技からくる表現力でもたせているため、呼吸がことばに重きをおく反面、音楽性、グルーヴ感に欠けます。存在感とインパクトの強さで、個性的なステージになります。シャウトもどきの声でやる人は、調子をくずしやすく、選曲のよしあしで良くも悪くもなります。もう一つは語り調で、雰囲気づくりにたけ、ぼそぼそと歌うタイプです。テンポ感、リズム、ピッチに、甘いです。

 

○日本のシャンソン風、ジャズ風の人・・・格好ヨサソウ、インパクトがない、“たいくつ”  上品さや気品を上っつらだけをまねた、自己陶酔っぽい歌い方です。中途半端に声楽家離れしない人や役者出身者に多いのが特長です。それで通じた昭和の時代は、古く遠くなりつつあるように思います。                       鋭い音楽性、深くパワフルな声のない語りものの日本のジャズもまた、雰囲気好きの日本人に期待された結果の産物だったのでしょう。センスとパワーの一致を望みたいものです。

 

○日本のオペラ、カンツォーネ風の人・・・押し付けがましい、自慢げ、声だけ“うるさい”  声の美しさ、響きに頼った歌い方で、個性や表現の意志に欠けます。声量だけは感じさせるのですが、一流の声楽家や本物の歌い手と比べられて聞かれるので、マイナス面をみられがちです。発声や技術が前に出てしまい、人間性が感じられない。不自然な表情や動きになります。

 

○日本のブラック、ゴスペル、ラップ風・・・なんか変、みせかけ、ちぐはぐ“ウソッポイ”  洋ものを真似て、声をハスキーにしたり、やわらかく使う表面的な歌い方に終始しています。日本人特有の雰囲気、甘さ、コミュニケーション先行で、厳しさやしまりがないため、おもしろさに欠けた退屈なものになりがちです。精神性が感じられず、洗脳されたような薄気味悪さがあります。ビジュアル、笑顔、一体感、振りなどの演出に逃げ、個としてのパワー、インパクトに欠けます。しかし、不思議に日本人はそういう歌い方を評価するようです。                                                                

 こういった多くの歌い方は、世界で受け入れられたアーティストの個性や雰囲気を、表面的に真似て、インスタント加工したものです。体、呼吸、心、音といった根本での声、歌、音楽の生まれる条件を、踏んでいないのです。ピカソやシャガールの絵を真似て、上手といっているようなものです。それで通用してしまう日本の状況が、私は有望なヴォーカリストにまで才能を甘んじさせているように思います。トレーニングとして、自分の声や歌を知る材料の一つとして出してみました。