ブレスヴォイストレーニング研究所

ブレスヴォイストレーニング100メニュ

 

【ブレスヴォイストレーニング100メニュ索引】

 

はじめに

 

メニュの目的

 

(1)EXCISE
1.息を吐く
2.息よみ
3.息から発声にする
4.声を息で保持する
5.発声の終止 発声から息(体)にもどす
6.「ハイ」のチェック
7.「ハイ」から「ララ」へ
8.「アオイ」
9.「なんてあおい」(二度 長二度 短二度)
10.「アー」(しぜんな発声)
11.聴くこと(LD、VTR、DVDやCDの鑑賞)
12.発声のポジションのキープ(同じ音)
13.発声のポジションのキープI.高→低(ミド)[低音]
14.発声のポジションのキープII.低→高(ドミ)
15.高い発声→低い発声のメロディ処理I(ことばと高低アクセントが同じとき)
16.低い発声→高い発声のメロディ処理I(ことばと高低アクセントが同じとき)
17.低い発声→高い発声のメロディ処理I(ことばと高低アクセントが異なるとき)
18.高い発声→低い発声のメロディ処理II(ことばと高低アクセントが異なるとき)
19.同じ音の上で、ことばを処理する
20.ことばを捉え、メロディにする
21.ことばでフレーズをとらえる
22.レガートのトレーニング
23.母音レガートのトレーニング
24.母音から子音にする

 

(2) 声の底を捉える
25.息を吐く
26.たてに捉える
27.抵抗を捉える(キャッチ アンド リリース)
28.キャッチ→リリース
29.日本語を発声にする
30.ことばの表現
31.ことばとメロディ
32.体づくり
33.同じ音でことばを変えてみる
34.発声と息のミックス
35.ことばのエ(イ)のポジションを深める
36.低音域(声域)
37.低音域のポジションをキープしたまま上へ
38.半音スケールでのことばの処理
39.半音の差をつめる
40.ハミング1
41.ハミング2
42.即興から入る
43.即興でセンスを磨く
44.音数やリズムの制限から、ことばを離して生かす

 

(3)中音域の役割と考え方
45.中音域(声域)でのヴォリュームづくり
46.高さによって音質を変えない
47.「ラ」でフレージングのトレーニング
48.BestとPeak
49.ピークの波
50.同じ歌を聴いて、チェックする
51.声域の拡げ方の考え
52.鋭くやわらかく声を出す(フォーム)
53.日本語の表現について
54.声を吐き出す(シャウト)
55.共鳴とシャウト
56.共鳴と支え
57.共鳴とシャウト
58.共鳴(pp)からシャウト(ff)へ
59.ジャンル別の発声スタイルについて
60.ゴスペル、ヘビメタの発声

 

(4) フォームづくり 
61.フォームから発声にする
62.くせをとる
63.胴体共鳴のチェック
64.体を起こす
65.発声にするイメージをつかむ
66.あごの固定
67.発声を確実にものにする
68.声を見つけ、大きくする
69.日本語に体をつける
70.シャウト
71.ことばを動かす
72.上がる前の発声発音にアクセントをつける
73.フレーズに情感を入れる
74.ことばにフレーズをつける
75.フレーズの基本 声をそろえる
76.ロングトーン 寸法を変える
77.メッサ・ディ・ヴォーチェ 高低感覚を強弱感覚におきかえる
78.ことばからフレーズ
79.フレーズでのバランス
80.フレーズ
81.フレーズの応用 構成
82.サビ(ff)から出だし(pp)に
83.フレーズの展開
84.フレーズを大きくしていく
85.送り込む
86.サビの前後
87.高音発声へ移行する
88.音域
89.ブレスヴォイストレーニングでの声域の考え方
90.声区のチェンジについて
91.表現するということの重要性
92.表現すべきで、発声すべきではない
93.発声の完成度をチェックする

 

(5) ボーカリストとしてのトレーニング
94.基本トレーニングメニュ(1)目標 フォームづくり
95.基本トレーニングメニュ(2)
96.基本トレーニングメニュ(3)
97.感情移入を支える
98.ワンパターンからの脱出 慣性、リズムにはまらないようにする
99.音感音程トレーニング
100.スタイル 歌う立場ともっていき方を定める
101.かけあい(コミュニケーション)と間
102.学ぶこと
103.歌に自分を
104.表現に思いを
105.実力について
106.ボーカリストの姿勢
107.伝統を学ぶ
108.ボイストレーナーの必要性
109.マイクの利用法について
110.ボイストレーニングでの諸注意
111.ボイスクリニック
112.部分と全体

 

(6) ブレスヴォイストレーニングからみた日本と世界のボーカリストの差と克服法

~本当の声、ジャズ、ブルース、ヘビメタに対応できる声にするために~ 応用メニュ
113.体で押し出す
114.発声をかくす
115.強調
116.強調から落とし込み
117.ダイナミックに
118.ひびきでつなぐ
119.歌唱としてまとめる
120.フレーズのまとめ方
121.声量の支えと増し方
122.歌詞とメロディの解釈
123.1オクターブを体に入れる
124.声区の差を埋める

 

さいごに

 

あとがき

 

 

 

 

はじめに

 

 ブレスヴォイストレーニングとは、表現から声を純化してとり出し、声楽的基礎も踏まえながら、ポピュラーの多用な個性的な声として使うスタイルを構築していく方法といってもよいでしょう。 ○声のベースづくりは、声量から  ほとんどのヴォーカルトレーニングは、声域ばかりを伸ばそうとま違った発声を教えています。自己流でやっている人も同じです。その結果、正しくやれば一年ごとに力がつくヴォイストレーニングさえ、何年たっても身にならないどころか、のどをこわしたり、いつも不安定ななかで歌うことを余儀なくされているのです。   それに対し、ブレスヴォイストレーニングは、最初に声域よりも声量を重視しています。叫べもしないのに歌えないということです。ですから、体が鍛えられるとともに声の可能性がどんどん開かれてきます。しかも、表現するために必要な音感やリズム、センスは、このトレーニングのなかでしぜんと身についてくるのです。

 

○歌と声について  

一般的に発声で“1オクターブ半でると、1オクターブ半近く歌える”と思われています。しかし、この場合の発声というのが単に声がその音に届いているというだけの場合がほとんどです。   ブレスヴォイストレーニングの発声は、声のみのチェックゆえ、とても厳しく、1音、完全に声を出せるなら、半オクターブ出せ、1オクターブ発声でしっかりと音がそろうなら、2オクターブで歌えるといっています。たとえば、2~3オクターブ使って歌っている人でも、私がチェックすると、たった一音もまとまな声が出ていないことがほとんどです。歌は、声だけではないということは、声の完成度がなくとも、相当、カバーできるということです。声だけを聴かせられるわけでは、それでよいのです。声よりも声で何を創り出すかの方が大切なのですから。しかし、だからこそ、ヴォイストレーニングにおいては、しっかりと、完全に使える声をめざしてがんばることが大切なのです。

 

○声そのものだけで伝える表現  

ヴォーカリストであるのなら、声のみで伝わるものがあることを忘れてはいけません。感情も心も入れずとも、これが声の技術の部分です。トランペットを一吹きしたときに私たちの心に伝わるものと同じです。メロディもことばもなく、純粋な一音で伝わるもの、それをヴォーカリストは求めなくてはなりません。   これができないところの歌など、まやかし(それでもよいのですが)です。表現そのものの求める強さに対し、歌は弱さを飾ってみせがちです。それでも、歌ってしまえば、何とかなるのでしょうが、どうも歌が声の邪魔をしたり、表現を妨げるだけで終わってしまう場合が多いようです。体からあふれる声とそれに感情を入れたことばがぶつかって、しのぎあうところに、本物の歌が生まれてくるのです。どうせやるなら、本物をめざしませんか。ヴォーカリストにとっての体は楽器、音は声なのです。その完全な調律ができずに、どうして人を魅了できるのでしょうか。そこから考えてみてください。

 

○体に順う 体にきく(声の判断)  

可能性のある声を選ぶことです。本当に正しい声の判断は、一流の声を聞き、自分の体や息を使いこなし、体にきき、さらに、自分が表現していこうとする世界への欲が教えてくれるものです。この声なら、今から先、伸びていくと、大きな可能性が、世界の一流のヴォーカリストと張り合えるかもしれないという声の兆しがなくてはなりません。このことは、すぐにはわかりませんが、声を理解し、体を使っているうちに、体が教えてくれます。

 

○すべての声を一つにまきこむ  

体を入れれば感情がでてくるように、感情から歌を表現していきます。声に体は出ます。心や感情とともに体が伝わる声をもつことです。そのために、絶対に身につけなくてはいけないもの、深めなくてはいけないものをつかむことです。それは、最初は、使いにくく重いものですが、使っているうちに、自分の体が軽くなり、羽がはえたように飛んでいきます。よく飛ぶボールも適度に重いのです。

 

○体の使えるところまで声は出せるようにしていく  

体は鍛えるほどに強くなります。しかし、最初は声を思いきり出すには貧弱なのです。ほとんどの人が体から声を出せないからです。だから、清書に体と声とを結びつけていきます。すると、体を使った分だけ声が出るようになります。やがて息も深くなってきます。すると、今度は体が使えるところまでしか、声が出せなくなります。しかし、それでよいのです。そこで体がついている声は即、プロとして使える声なのです。あとは、ゆっくりと体とともに本当の声量、声域を伸ばしていけばよいのです。メロディラインのなかに声の線がみえてきます。

 

メニュの目的

1.高い音まで聞いて息を出すトレーニング…高いところほど息も体も使うという感覚に正しくします。

2.低い音(1オクターブ)を聞いて声の太さを調整します。高いところほど、強い息を吐き、体を使う感覚を見につけます。

3.高いところで吐くようにすると声(ポジション)がとれなくなります。しかし、そこでとれるのが正しいとのです。ですから、高い音でも息が吐けるようにしていきます。そのために声になる芯、ポジションを確実にとる必要性があります。

4.息を吐いて、声を出せることをまとめたり、ひびかせて、音にあてることより優先します。

5.器は最初につくっていきます。あとでは大きくするのは無理です。

6.レガート    5音なら、5音を1つと捉え、そのなかで音をおいていきます。

7.まとめる時期について    器を大きくし、声を強くするためには、できるかぎり、遅い方がよいです。何年かたって、いつでも正しく声が出るようになったら、声を出すことと歌うことは一致します。

8.息の量と声の輝き(ひびき)    息の量をたくさん吐いても、声をはなさないでおける強い体をもつことです。しかもそこで余計な力が抜ければ、声は正しくひびいてきます。それは強く美しくやわらかいひびきです。   

※日本人の20歳までの誤ったヴォイストレーニングと海外ヴォーカリストのステージで歌のなかでできているヴォイストレーニングの差を知り、埋めることが早いでしょう。

 

 

 

 

 

 

ブレスヴォイストレーニング100メニュ

 

第1章 EXCISE

 

1.息を吐く

息を吐くには体の底から息を吐くイメージで行ないます。(ハー)と吐きますが、トレーニングにおいては、少しでも強く伸ばせるようにがんばります。 

 

1.(ハー)

2.(ハイ)

3.(ハーー)

4.(ハイ ハイ ハイ) 

 

□肩、首に力が入らないようにします。

□上半身、動かないようにします。

□のどをしめないようにします。

□のどがかわくのは、あまりよくありません。

□のどで音がならないようにする。 

力が入りやすいので注意

 

2.息よみ

 

1.ハイ ハオ ラオ トオイ アオイ

2.ヤマのウエから、お月さまが出る、出た。

3.わたし、あなた、ひとり、ふたり、あした、きのう

4.とおくできてきをききながら

声を出さずに、息だけで読みます。

弱く小さな息でなく、強く大きな息を使いましょう。

これは、体と息を結びつけ、強い息が吐けるようにするとともに、息を吐いたときに体が鍛えられるようにする効果があります。 

 

□感情を込めて読みましょう。

□なるべく大きく表現するつもりでやります。

□体から息を出しましょう。

□腹筋が疲れるような読み方が効果的です。

□ゆっくりとしっかりと読みましょう。

□適当なところでブレスをしましょう。 

<応用>

○声が出にくいとき、早く体の状態を整えるのにも有効です。

○のどを痛めたときのトレーニングとして、なるべくリラックスしてやるとよいでしょう。

 

3.息から発声にする

 

 息 → 声

(ハイ) ハイ 

 

□体の動き、体の使い方を学びます。

□息が出て声になる感じをつかみます。

□決して高くしないようにします。

□太く大きく強い声をめざしてください。

□常にいつもより深いところで声をとることです。 

○声たてについて

 息から声にする瞬間を声たて(声の発生)といいます。その息を100パーセント確実に声にします。効率的に声にしていかなくてはなりません。 

 

4.発声を息で保持する(呼吸法)

 

1.「ハアーーー」

2.「ラアーーー」

3.「アオーーー」

4.「マアーーー」

○急に、ぶつけなるようにして声にしないことです。

きちんと声にするポジションを意識して、そこに声をとりにいくつもりでやります。

声を息で保持する

○息が声になったら、それを体からの息でしっかりと支えます。これを声の保持といいます。 

 

□同じ音質の声を保ちます。

□息と声を完全に一致させます。

□まっすぐにストレートに声を出します。

□体で支えます。のどはしめないようにします。

□ひびきがバラバラになったり、かすれてはよくありません。 

※最初は、5秒くらい、徐々に伸ばしていきましょう。

 

5.発声の終止 発声から息(体)にもどす

 

1.「ハアー(ッ)」

2.「アオイー(ッ)」

3.「マアー」

4.「ハイッ」 

声の切り方です。お腹で必ず止めるようにします。声として、伸ばしているところから、体で息を吐き切り、ストップさせます。 

 

□口先で切らないようにしましょう

□体の大きな動きのなかで、しぜんと止まるイメージです。

□なるべく大きな深い声でやってみましょう。

□声が止まっても、息は流れ、体によって終止します。 

※伸ばした声を止めるのが難しければ、ことばでやってみましょう。

 

6.「ハイ」のチェック(発声法)

 

「ハイ」といいます。

最も声の出しやすいキィで強くしても、カン高くならないような声でなるべく大きくいいます。かすれさせないように声にします。 

 

□言い切ること。ただし、急がないことです。

□口が先に動かないようにしましょう。

□口のなかで声をつくらないようにしましょう。

□首、方から上で操作しないことです。

□一つの声にまとめましょう。

□胸部だけにひびかせることです。

□ひびきが上に逃げないようにします。

□「ハ」と「イ」が一音に聞こえるようにします。

□体を使って、声を捉えるようにします。

□太く強い声を使ってください。

□充分に息をつかうことです。

□あごを動かしたり、前に出したりしないことです

<目的>

1.声のきっかけ(芯)を知る。

2.自分のBest Keyを知る。

3.小さな声を大きくする。

4.細い声を太い声に。

5.頭声を胸声に。

体で正しく声を捉え、出すことを覚えます。 

○うまくできないとき

□息で「ハイ」と行ってから、やるとよいでしょう。

 

7.「ハイ」から「ララ」へ(発声法)

 

1.「ハイ、ラ、ラ」

2.「ハイ ラーラー」

3.「ハイ・ラッラッ」

4.「ハイララー」

「ハイ」で正しいポジション(芯)をとった声をそのまま「ラーラー」とつなげます。 

 

□「ハイ」に対し「ラ」が浅くならないようにします。

□3つの音の間に切れ目がないようにします。

□「ハイ」は、はっきりと。

□歌いあげるのでなく、言い切る感じがよいでしょう。

□音楽的発声の「ラ」の習得 

<目的>

□スタッカートからレガート

□声の芯からひびき

□「ハイ」の声質で「ラ」の処理(日本語の「ラ」でなくす)

□ことばをそろえる基本トレーニング 

○「ラ」

 「ラ」は、とても難しい音です。日本語の「ア」は浅いので、「ラ」もどうしても口のなかで生声のようになってしまいます。それを深い息とともに深いポジションで「ラ」にします。頭に「ハイ」と言い切ることによって、「ラー」にします。外国人ヴォーカリストが「ラーラーラーラー」と歌っているときの音色を参考にしてください。

 

8.「アオイ」(発声法)

 

1.息で(アオイ)といってから、ことばで「アオイ」といってみます。

2.「ハイ アオイ」 

「アオイ」は比較的、言い切りやすいことばです。ただ、「イ」が「オ」と同じところでつくらないと、口先で浅くなってしまいます。 

 

□体の芯から声が出るようにします。

□のどで声を出せないようにします。

□「ア」と「オ」と「イ」を同じ音質、ひびきで統一させます。 

<応用>

「アオイ、トオイ、ラララ」

□アオイをベースに、それと同じように、トオイ、ラララ

□トオイはトに注意

□ラララが口先にならないように

 

「イ」「ウ」

 日本語の「イ」「ウ」は、浅く口先でつくっているため、そのままで、音楽的な処理がしにくいのです。できるだけ、深い「イ」「ウ」を習得しましょう。(→高音の「イ」「ウ」)

 

9.「なんてあおい」(二度 長二度 短二度)

 

1.「なんて あおい」(レドレ ドシド)

2.「あんた」「いんちき」「うんどう」「えんとつ」「おんこう」

  (N+T、N+D)

3.「身も こころも」(シシ シドシシ)

  「アオ アオイア」(シシ シドシシ)

  「ハイハイ ハイハイハイハイ」(シシ シドシシ)

「なんて」は、「ん」が「なん」で一音節となるため、「て」と二音deleteフレーズになりやすい。「ん」のため、体が使いやすく、しぜんとのびて、ことばの音楽的な処理を覚えるのに最適です。

 

□すべてことばが聞こえるようにします。

□同質にことばをそろえてください。

□「て」と「あ」のポジションを同じにします。

□「なー」「あー」の感じで、処理します。

□「レドレードシドー」という音程が、表立って聞こえないようにします。 

<目的>

1.“ため”と体の使い方

2.基本的な音程をとる(二度の全音と半音)

3.フレーズの初歩を覚える

4.表現の初歩を覚える

5.ことばをしっかりと伝える

 

10.「アー」(しぜんな発声)

 

「アー」と声を伸ばしてください。 

 

□なるべく、口や口の中を動かさないようにします。

□息で声を押し出しようにします。

□ひびきで逃げない。体を使う。

□胸に充分にひびいている

□お腹の底から声を出す

□顔や首(のど)で声がでているように聞こえないように。 

<目的>

 日本人のしぜんな発声がいかに声になりにくく、コントロールできていないのかを知ります。そして、それを音楽的にしていくための方向をつけていきます。中音域より低いところでやりましょう。 

○お腹が使いにくいときには

□大きな声が出ればよいと思ってやることです。

□のどをしめてはなりません。

 

11.聴くこと(LD、VTR、DVDやCDの鑑賞)

 

ヴォーカルの声を聴く 

たくさんの分野の一流と呼ばれているヴォーカリストの声を聴くことです。それによって正しい声のあり方や使い方が明確にイメージできるようになってきます。 

 

□オリジナリティを学ぶ

□ポリシーを学ぶ

□センスを学ぶ

□ソウル(魂)スピリチュアルを学ぶ

□スタイルを学ぶ

□声の使い方を学ぶ

□構成を学ぶ 

<目的>

1.ヴォーカリストの声を知る

2.その声がどういう基本の力の上に成り立っているのかを知る

3.自分の声とその声の違いをつかむ

4.自分の声とその声のギャップをつかむ

5.自分の声とその声の違いの埋め方を考える

 

12.発声のポジションのキープ(同じ音)

 

「ハイ ハイ ハイ」(ド ド ド)

 

1.ハイ ハイ ハイと全く同じように3ついいます。

2.次に、3つを順にmf(中強)、f(強)、ff(強強)でいいます。

3.逆に、ff、f、mfでいいます。 

たくさんの分野の一流と呼ばれているヴォーカリストの声を聴くことです。それによって正しい声のあり方や使い方が明確にイメージできるようになってきます。 

 

□なるべく胸の深いところでハイといいます。

□何回いっても、寸分も狂わないようにします。

□息の流れのなかで、しぜんとひびかせます。

□口先でいわないようにします。

□ハ・イ・ハ・イ・ハ・イ・と6音に聞こえないようにします。 

 

13.発声のポジションのキープ 高→低(ミド)[低音]

 

「ハイ ハイ」(ミ ド)

 

高いところ(ミ)から、低いところ(ド)へ「ハイ」で2回いいます。 

 

□2つの「ハイ」を全く同じところで発声します。

□のどがなったり、かすれたりしないようにします。

□ひびきから、胸でなく、胸のところで統一します。

□頭の方のひびきは使いません。

□音程は、正確にとります。

□「ハイ ハイ」といっているようにとれればよいです。 

 

14.発声のポジションのキープ 低→高(ドミ)

 

「ハイ ハイ(ド ミ)

 

低いところ(ド)から、高いところ(ミ)へ「ハイ」で2回いいます。 

ほとんどの人が、このとき、同じくらいの体の使い方、息の吐き方をしますから、ドからミに上がるときに、声が上のひびきにいってしまいます。それを同じ胸のポジションにキープするためには、高い音(ミ)をより強い力で押し出すことです。こうしないと、音色が同じようになりません。高くなるにつれ、どんどん、カン高くなってしまいます。

 

□2つの「ハイ」を全く同じところで発声します。

□前の課題の注意事項と同じです。

□胸から、ひびきに逃げないようにしましょう。

□高い方の音が強く聞こえるようにします。

□お腹で息はしっかりと切りましょう。  

※ルール 低→高は、弱→強と捉えます。

 

15.高い発声→低い発声のメロディ処理I

  (ことばと高低アクセントが同じとき)

 

「あいのそらに」(ミレド ミレド)

一拍目の強拍に高いアクセントがきているので、いいやすい課題です。

 

□「あ」「そ」にアクセントをおきます。

□「の」「に」は、あまり強くせず、ひびきでうまくまとめます。

□「あい」(強)「の」(弱)と「そら」(強)「に」(弱)の組みあわせです。

□「あいのそらに」とはっきりと一つの流れのなかで聞こえるようにしましょう。 

 

16.低い発声→高い発声のメロディ処理I

  (ことばと高低アクセントが同じとき)

 

「あまい わたし」

(ドレレ  ドレレ)

二番目に高いアクセントがあるときは、二番目を強くいいます。そこに高い音(レ)があるので、いいやすいはずです。

 

□「まい」「たし」に「あ」と「わ」をつけるつもりで

□「い」「し」の言い切りをしっかりとします。

□「あ」「わ」は、低く聞こえにくいので、はっきりといいます。

□「あまいーわたしー」と伸ばしぎみにして、止めるとよいでしょう。

□「あまあい わたあし」とやってみましょう。 

<応用>

「あなたの ひとみ」(ドミレレ ドミレ)

 

17.低い発声→高い発声のメロディ処理Ⅱ

  (ことばと高低アクセントが異なるとき)

 

「あなたの うたを」

(ドドレミ    ドシラ)

あなたの うたを に対し、音程が低→高(ドドレミ)、高→低(ドシラ)とついています。 

 

□何度も読み、そのニュアンスを活かして処理します。

□「あなた」「の」と「うた」「を」でまとめ、うまくつなげます。

□「あなたのうたを」と大きなフレーズで捉え、ことばをおいていく感じにします。

□「たのお」「たあをお」とならないようにしてください。

□最初は短く言い切り、少しずつ伸ばせるようにするとよいでしょう。

 

18.高い発声→低い発声のメロディ処理Ⅱ

 (ことばと高低アクセントが異なるとき)

 

「ひたすら あるいた」

(シドレレ    ミシレド)

ひたすら あるいた に対し、

音程が低→高(シドレレ)と高低高(ミシレド)とついています。 

 

□前の課題の注意点を踏まえましょう。

□「ひたすら」「あるいた」という読みに、なるべく忠実にメロディをのせます。

□「ひた」「ある」はしっかりといいます。

□「ひたすら」の方が「あるいた」より強く、全体にかかります。

□「た」は、流れからはみ出しやすいので、気をつけます。

□「すうらあ」「るういたあ」とならないようにしてください。

 

19.同じ音の上で、ことばを処理する

 

1.「か が や く ほ し」(同じ音)

   (レ レ レ レ レ レ)

 

2.「かがやく ほし あいすーるー」

  (レレレレ  レレ  ドレミーミー)

 

□「輝く」「星」と2つでまとめます。

□「愛すうるう」でなく「愛」「する」これを、強弱でつなげます。

□音楽にのっからないようにします。

□ことばの平坦の問題が、全体に平均に通じてしまいます。

□全体のなかで、構成し、捉えましょう。

<応用>

1回でPointを捉え、組みたてましょう。 

○声から自由になることにより、表現をつくりだします。

○曲のなかで、繰り返し、同じことばが出てくるときは、必ず、何かを変えます。

○聞いている方に先がみえてはいけません。

○ヴォーカリストは常に、つくっていくことで、聴いている人の心がついてくるのです。未知、そして驚きが新鮮となります。

[体が入って=心が入って=伝わって=完成です]

 

20.ことばを捉え、メロディにする

 

1.「いのち かけて」

     (ドレミ    ドレミ)

 

 いのち かけて という、高低アクセントで、仲間に高いところがくる日本語の詞と、メロディの低→高(ドレミ)が逆というパターンの処理です。

 

2.「いのち かけて いつまでも」

  (ドレミ    ドレミ    ドレレレミ)

 

3.ことばのフレーズのトレーニング ことばのなかで、フレーズの感覚を学びます。2の課題を使います。

 

 1)伸ばすところをかえてみましょう。

 いつまでも

 「いつまでも」

 「いつーまでも」

 「いつまーでも」

 「いつまでーも」

 

 □統一した線上にことばがのっているか

 

 2)強くして(アクセントをつける)。

  >>>>>

「いつまでも」

 

 3)伸ばして強くしてみましょう。

>ー>ー>ー>ー>ー

 「いーつーまーでーもー」 

 

□「いのち」「かけて」と聞こえるように。

□鋭く、お腹から声を出しましょう。

□頭「い」「か」にアクセントをおきます。

□何度も読み切った上でメロディをつけます。

□ことばで読むより、体を使ってうたいましょう。

□音程が目立たないように。

□「ち」「て」でしっかりと切ることです。 

<応用>

※次のことばでいってみましょう。 

□ハイ ハイ ハイ ハイ ハイ ハイ

□ラーラーラー ラーラーラー

 

21.ことばでフレーズを捉える

 

「いのち かけて いつまでも」

(ドレミ    ドレミ    ドレレレミ)

等分に配分すると、上の音が弱くなってしまいます。

 

□均等にしないことです。

□強弱メリハリつけます。

□ことばのニュアンスを失わないようにしましょう。

□全体が一つの流れになるようにします。

□ひびき、ことばは、3つに言い直します。

□息は体でキープします。 

3+3+4と音の数通りに聞こえると、結局、10音がバラバラになります。

 読むときに1+1+1と3つ、もしくは、1つか2つで捉えます。

「いのち かけて」

 そこでのフレーズの流れは、自分でつくっていくことです。

 音程の上にのっからないようにします。

 

22.レガートのトレーニング

 

1.「ゲーーーー」

 

2.「ゲーエーエーエーエー」

    1音で2秒(5音で10秒)

 

3.「ゲーゲーゲーゲーゲー」

   2  2  2  2  3

   3  3  3  3  4

   4  4  4  4  6

    (数字は、秒数) 

 

□「ゲーゲーゲーゲーゲー」はレガートですから、間があかないように。

□ことばとしては、一つずついいかえます。

   (Menu3.が難しければ、Menu2.でやりましょう。)

□ポジションは、胸でしっかりと捉え、離さないようにします。

□少しずつ長く伸ばしていきましょう。 

※ガ行を使うのは、比較的、胸に入りやすく、深いポジションがとりやすい人が多いからです。苦手な人は「ラ」を使っても構いません。

 

23.母音レガートのトレーニング

 

1.「ガーグーギーゴーグー」

 

2.「ガアゲエギイゴオグウ」

 

3.「ガーーゲーーゴーー」

 

4.「ガーーゲーーギーー」

 

5.「ガーーゴーーグーー」 

 

□5つの音のひびき、ポジションは同じにします。

□伸ばすときには、つっぱらないようにします。

□鼻濁音にしないようにします。

□「ゲ」から「ギ」、「ゴ」から「グ」は、特に注意しましょう。

□ガ行でやりにくい人は「アエイオウ」を使っても構いません。

 

24.母音から子音にする

 

1.1音の練習 ア → ナ

  2音 〃  アオ → カナノ

  3音 〃  アオイ → ナノニ

  4音 〃  アオイア → ナノニナ

  5音 〃  アオイアエ → ナノニナネ

  6音 〃  アオイアオイ → ナノニナノニ

 

2.アオイ いると

  (ドドド  ドドド)

  (ドシド ドシド)

 

1)大きく

 2)長く伸ばす

 3)高くする

 

3.

A B

あなた   は

わたし に

きみ   から

あんた より

かれ なら 

 

※AとBを組みあわせてトレーニングしてみましょう。

 

 

□(Menu1.)マ、ハ、ヤ行でもやってみましょう。

 

 

 

第2章 声の底を捉える

 

25.息を吐く

 

「あ お い」 

 

□「あおい」ということばをいうときに、口先や頭のひびきだけでやってしまいがちな普段の声とは区別するつもりで発声しましょう。

□息をつなげるつもりでやりましょう。

□日本人の発声では、3つの音がバラバ切れていたり、音の粒が全く揃わなかったりします。そうならないよう注意しましょう。

□声の底(ポジション)をとり、息の流れとひびきをいかして、「あおい」の三つの音をとつなげるのです。

□カラオケは日本人のブツ切れ声を、エコーでつなげているだけなので、完成された声とは、根本的に違います。 

 

26.たてに捉える

 

「あえいおう」

 

「あえいおうあえ」

 

「あえいうえおあお」

 

□声を押し出す感じから、ひっぱられるようにしていきます。

※たての線にまとめること。

 声を浅く開けると、体とうまく結びつかず、ロスを生じます。すべての息を声として使えるように捉えて、それを動かしていくのです。ここまでのことをやるのに、まず、声を深く、一つに捉え、それを頭の上から、足までの直線上にまとめていくことです。すると、ポジションをにぎったまま、体がうまく使えます。

 

27.抵抗を捉える(キャッチ アンド リリース)

 

「ハイ、ラーラーラー」

(ド ドドド)

 

□声を押し出す感じから、ひっぱられるようにしていきます。

しぜんな体勢のまま、体の動きをリラックスさせたまま、息の大きな流れにつなげて、もっていきます。その流れにのせ、回転させていくのです。

※声のひっかかり(声たて)とポジション(声の芯)

※センスでことば、メロディ、リズムをまとめていく。キャッチとリリースは、しぜんにやることです。こういったことを踏まえた上で、声をしっかりと捉え、それを遠くへ飛ばそうとしてください。しっかりと捉えていないと、のれんに腕押しするように、抵抗もなく遠くに飛ばず、したがって力もつきません。

※ここでは、声が飛ぶことよりも、声を捉え、しっかりと飛ばそうとすることで、力がついていくことが目的です。 

 

28.[キャッチ →リリース]

 

「なにもかも みえない」

(ラシドミレ ドシシラ) 

 

□体を使い切ることで、3秒を10秒に感じることです。つまり、わずか3秒のフレーズのなかに、たくさんのものをつめこむのです。

□高いところ、高くなる直前の音は、必ず体を入れこむように意識づけてトレーニングしておきましょう。

全身全霊で動かしてこそもの(人の心)は動くのです。

 

29.日本語を発声にする

 

こいのうただけ のこして

 

こいいのお うただあけえ のこしてえ

こいいのお うたあだけえ のこしいいて

 

こおいのお うただあけえ のおこおして

 

こおいいの ううただあけえ のこおしいて

 

 

□いろんなパターンでやってみて、最も言いやすいのをくり返します。

□うまくできたときの感じ(フレーズ)でいいにくいものをこなします。

□最もことばが伝わるものを選びましょう。

□最も感情が伝わるものを選びましょう。

 

30.ことばの表現

 

1.おかあさん

2.ただいま

3.なんて

 

□感情をしっかりと伝えます

□ことばをすべて「ラ」にかえて同じ感情を伝えてみます。

□メロディをつけてみる。感情をより伝わるようにしてみましょう。

□高い声や低い声でいってみます。

 

31.ことばとメロディ

 

「あいのあまい」

(ラシドドレミ)

 

「ハイハイハイ ハイハイハイ」と基本的に体をつけます。 

 

□「の」でやたらと伸ばさないことです。

□「AINO」と考えてみましょう。

□「あ(ラ)」「あ(ミ)」の2つの中心をつけて、「ラド」の2音のつもりでことばをつけましょう。

□ 「ラーミ」(あーい)で、最初の「あ」と最後の「い」を結びつけてみましょう。そのなかに「いのあま」が入るのです。 

 

32.体づくり

 

息を吐いて、そのときの体の動きを意識してみてください。

体を使うことと、声の出ることが一致するように、

どんどんと体を使います。 

 

□お腹のまわりが動きます(特に側筋、背筋)

□背中の下の方に、中心点がくるように感じます。

 収縮→展開、緊張→弛緩のくり返しを体からつくっていきます。それが呼吸、リズムとなって歌に生命力を与えるのです。

 この動きを、基本段階はある程度、統一していき体全体で受けとめ、コントロールしていかなくてはなりません。

 

33.同じ音でことばを変えてみる

 

1.あい いま

  レレ レレ

      ドシ

2.

(1)「あい」を強くする 

 

(2)「いま」を強くする。 

 

□「あい、いま」が「あいーま」とならないように、ことばでは、切ります。フレーズとしては、「あい、いま」まで保っておくことです。

□「いま」を強くするときには、「い」と「い」で区切らなくても、わかります。

□「あい」と「いま」で「い」の声を同じにすることです。「あい」の「い」が浮いてしまうと、次の「い」を言えかえなくてはならず、やっかいです。この場合、「いま」を強くするなら、「あい」の「い」を浮かすこともできますが、トレーニングのときは、少しでも体を使う方向でやりましょう。

 

34.発声と息のミックス

 

1.くるしい さみしい

  シミレレ シミレレ

 

2.キス

 (1)キィスゥ

 (2)キ(ス) 

 

□声楽は、すべて声とひびきにしていきます。マイクなしで、どの音も遠くのお客の耳にしっかりと伝えなくてはならないからです。

□ポピュラーは、気息音になっても、マイクがあるので日常に近いことばで処理していきます。

□感情の伝え方によって、声と息をミックスの割合は違ってきますが、共に体によって支えられていることが前提です。

 

35.ことばのエ(イ)のポジションを深める

 

1.ア エ イ

 

2.こい

 

3.あい

 

□「い」をなるべく深くとるために、Iと考えて、AI、KOIなどということばで、「い」をしっかりと体の深いところで出せるようにしていきます。

□「い」は日本語の「い」ではなく、もっと深いところ。

□正しいポジションになると、イが最もひびきやすく高くまでとれるようになります。閉口母音で、ひびきが集まりやすいのです。

□イでひびきにくい人は、大体、のど声です。 

※「ウ」についても、同じように深めておきましょう。

 

36.低音域(声域)

 

1.ラララララ

(ドシラソファミレ)

 

2.ゲゲゲゲゲ

(ドシラソファミレ)

話している声から、下に半音ずつ下げていきましょう。

 低音でのトレーニングは、声のポジションを深くするのに有効です。 

 

□のどを使うといくらでも低い声がでますが、それはつくり声なのでやめましょう。

□低くしていけば高音と同じく、体を使います。

□男性の場合は、比較的、胸にしぜんと入っていきやすいです。

□歌で使われないほど低いところなので、荒されていない分、正しい声のポジションになりやすいところです。

□自分の最も低い声を最下音と名づけます。(男性なら下のレ・ミ・ファくらい)

 

37.低音域のポジションをキープしたまま上へ

 

最下音から、そのまま、3音ずつ、上に移行していきます。

音質やポジションのかわるところまで上げます。

ラ(ゲ)でやります。(ファソラ、ソラシ、ラシド、シドレ、レミファ…) 

 

□半音で3つずつ上げていくのでもよいでしょう。

□声の音色や声になっているところが、上がってしまったらやめて、また低いところから、やり直します。

□これは、低い音を安定させるとともに、中音域、高音域になっても、この低いポジションを保ための大切なトレーニングです。

 

38.半音スケールでのことばの処理

 

アオイ アオイ アオイ(ド ド♯ レ)

半音ずつ、下げてから、上げていきます。 

 

□息でフレーズをつかみ、体のつながりを意識したまま、そのライン上にことばをおいていきます。

(注意)

□たとえば、トレーニング以上の声が歌っているときに使えるはずがありません。ですから、トレーニングでは、歌うよりも大きな声をコントロールできることまでやることです。

□発声らしい発声よりも、ことばを体で言い切って、息の流れに任すことです。しぜんな表現でなくてはなりません。

□最初からひびきに頼らないことです。口を動かしすぎると、ひびきだけが変に広がります。声をつかんで、それがひびけばよいです。

 

39.半音の差をつめる

 

1.ララ(シド)

2.ララ(ミファ) 

 

□半音での音質の差をなくすのが、トレーニングの目的です。

□1オクターブ下(低いドより下なら)ほとんど音になる高さの差は感じないでしょう。その感じを思い出してください。

□半音を明確に区別するため、結果として音質で差をつける方に教えられてしまう人が多いようです。音がとれれば、声そのものをチェックしないためです。どんな声でもよいというわけです。

□本当は、同じ音質の声でしっかりと半音を区別して出せなくてはならないはずです。

□高い音にいくほど、距離があいてしまい、音質が異なるのはおかしいのです。

□1オクターブ、すべてが同じ音質の声でそろうことを最終的な目的としてください。

 

40.ハミング1

 

「んーらー」

 

「んーラーんー」

 

「んーラララ」

 

「んーラララーんー」 

 

□ひびきのチェックをします。

□一つの線上で聞こえるようにします。

□フレーズ ラで盛り上がるようにします。

□最初の「ん」とあとの「ん」を同じにします。

□「ん」「ラ」「ん」と3つに分かれず、「んー」のなかで口を開いたところだけ「ラー」が聞こえるというがよいのです。

 

41.ハミング2

 

 「ンーラーラー」

 

 「ラーラーンー」

 

 「ラーンーラー」 

 

□ここでのハミングは、鼻の方でなく胸の中心にひびきを集めます。

□声をしっかりと体でつかんでそれを押し出す感じです。決して体から声を離しません。

□「ラ」のときは少し解放してもよいのですが「ん」で必ず体に戻します。

 

42.即興から入る

 

1.詞を何回も読みます。

 

2.その語調からリズムを生み出し、ラップのように同じ音とリズムで読みましょう。

 

3.さらに、自分で好きなメロディをつけてみます。 

 

□このとき、順を追って、ことばが歌、音楽になっていっているわけですが、それぞれの時点での作品として完成度を厳しくチェックしてみましょう。

□楽譜を与えられずに、感じたことを伝えるところから、歌も出てきたのです。多くの人が、楽譜から歌おうとしています。詞や心、そして結果的に歌を殺しています。楽譜は残すためにできたものです。自分の心のなかに現れる感情を、

Menu1.→Menu3.と増幅していってこそ、歌となるのです。

 

43.即興でセンスを磨く

 

自分の好きなリズムやメロディをつけて歌いましょう。

 

1.つるてんてん はぎわらてん

 

2.ぎおんしょうじゃのかねのこえ

  しょじょうむじょうのひびきあり

 

3.あおいあかいきいろい

 

4.ひとえにかぜのまえのちりにおなじ

  ついにはほろびぬ

 (ふたりのあいのこやはすでに)

 

 

□最初は同じ音にリズムだけ変えてやってみましょう。(ラップ調)

□このときは、同じ間隔にならないようにしましょう。

□なるべく長く伸ばして読んでみましょう。

□アップテンポで調子よく、リズム、メロディをつけましょう。

□スローテンポでもの悲しく表現してみましょう。

 

44.音数やリズムの制限から、ことばを離して生かす

 

1.アオイ(ミ) トオイ(レ) ラララ(ド)

 1つの音に複数のことばをつけます。

   ピアノの音を1つ聞いて、3つのことばを言い切ります。

  ミ→「アオイ」(ミミミ)レ→「トオイ」(レレレ)ド→「ラララ」(ドドド)

 

2.「このあい」(ドドドド)

 同じ音を語感に合わせて、くぎり、メロディを感じさせず、ことばをしっかりと表現します。リズムは自由にして、まず、ことばのリズムで捉えることです。

 

3.「このあい」(ドドドド、ドドードド、ドードドド、ドドドード)

 決まったリズムの上に戻しても、その語感、表現が失われないようにします。かなり高度な技術です。   

 

□「この」、「あい」でまとめてみます。「こ」、「あ」のひびきのなかで「の」「い」を捉えます。

 

 

第3章 中音域の役割と考え方

 

★中音域は、歌の中心となるところで、最もたくさん使われます。それゆえ、安定度が問われます。

 

45.中音域でのヴォリュームづくり

 

 

ドド♯ド

 

ドド♯レ

 

※低いところから高いところへいく途中、最も歌で多く使われているのは、中間中音域の声です。 

 

□どんな声でも歌えるため、くせがつきやすいのです。

□高音が出にくくなる原因は、中音域にあります。

□ひびきと息とのバランスが大切です。

【ひびき】×ひびきだけになる →2~3音高くすると声が割れる

【体・息】×かすれ重くなる→胸に押しつけこもる

 

46.高さによって音質を変えない

 

「ラ」で「ラララーラララー」でやります。

 

1.ミミミ ドレミ

 

2.ドドド ドレミ

 

 

□3音のなかで音質(声の音色)を変えないことです。

□高い方が強く体を使う方向で捉えましょう。

□1.は、「ミミミ」と同じ感じで、「ドレミ」を行ないます。

□2.は、「ドドド」を「ミミミ」でやったのと同じ感じで行なうとよいでしょう。

□すべて同じ長さにします。高い音(この場合はミ)で伸びないようにします。

 

47.「ラ」でフレージングのトレーニング

 

ラーラララ ラララ ラララ

 

(ラーミレド レドシードレソー)

 

□日本語では、音が下がらないように、口先でひびかせ音にあてていくようにします。しかし、やはり、体から出す息の力にのせて、つなげていくべきだと思います。

□「ラ」は浅くなりやすいので、「La」を使ってもよいでしょう。

□全体の流れ、フレージングを捉えて、そこに「ラー」をおいていくような感じでやってみましょう。

 

48.BestとPeak

 

Bestの状態の声とは、最も出しやすく、しぜんと声になっているところです。あまり声を出そうと意識しなくても、よい声がでます。

 それに対してPeakの状態の声とは、最も声を大きく強くヴォリュームをもって使えるところの声です。通常の人ではBestの声の3-5音、上にあります。

 

 

 

□多くの人は、Bestをソ、Peakを上のドくらいに思っていますが、大体、Bestは、ド~ミ(女性は三度、低いくらい 下のラ~ド)、Peakは、せいぜい、男性でソ、女性でミといったくらいです。

 つまり、その間(Best-Peak)が、2~3音くらいしかないのです。これを最低、1オクターブもつことが、声を気にせず、歌うための条件でしょう。

 

49.ピークの波

 

1.ラララララララ

 (ドミソドソミド)

 

     ド

    ソ・ソ

   ミ・ ・ミ

  ド・   ・ド

  ・     ・

 

 

 

□発声のトレーニングは、均等に分けたところにピークをもってきます。歌になると、ピークは、早くなっても遅くなっても構いません。

□歌のなかで最も、声を伝えやすくするために、ピークを配します。そこに、メリハリがでてきます。声がゆれ、波となって、心地よくひびきます。波のようにザーッときて(ピーク)そして、ひいていく、そのくり返しなのです。

 

50.同じ歌を聴いて、チェックする

 

自分の好きな曲を一曲、選び、通して聴きましょう。できたら、楽譜をみながら、歌を聴きましょう。そして、楽譜と違うところを見つけましょう。聞いて、フィードバックして、何度もチェックします。

 

 

 

□楽譜通りに歌っていても、楽譜では表現しきれないニュアンスの違いをチェックしてみてください。

□音のとれる人は、歌い手の歌から、楽譜をつくりかえてみるとよいでしょう。

□同じ歌を何人かのヴォーカリストで聞き比べてみると、もっとわかりやすいでしょう。 ※サンプル 「枯葉」「バラ色の人生」

□歌い方のコツとともに、ヴォーカリストのオリジナリティや技術をつかむ、大切なトレーニングです。

 

51.声域の拡げ方の考え

 

下のソから、1オクターブ、さらに上のソまで階名で歌ってみます。

 

 

 

□日本人の発声は、すぐに浅く上にひびきます。ヴォリュームの少しあるところがファくらいで、あとは、3~4音で単に音に届いているだけになっています。

□体だけでもっていくと、上のラからレ、ミにかけて、かなりきつくなってきます。海外のヴォーカリストなら、そのまま、体でもってくるのですが、ブレスヴォイストレーニングでは、一応、ドまでもっていけるところまで体をつくるようにいっています。

□ドを超えると、ヴォリュームを保つのに余程、強い体の人でないと、のどに負担がかかったり、ビリビリし始めるからです。つまり、押しても、ひびかしても、2~3音できつくなるのです。

□重くてこもるのも、よし悪しがあります(ブルース、ジャズならそれもよいでしょう)。ドから上では、表現上、正しくひびいた方がよいことが多いからです。

□そこで、ピークの音のところで、1フレーズ上でひびきにまとめていくのです。

 

52.鋭くやわらかく声を出す(フォーム)

 

ハイ、ラーラ

 

 

 

□「ハイ」と一言いったとき、体の深いところで声をとれていると、鋭く深い太い声になります。

□それをリラックスした状態で行なうと、同時に、その声はやわらかく、しぜんとひびきます。温かく親しみやすい気持ちのよい声です。

 

□このことが同時にできることが必要です。同時にできたとき、フォームができたといってもよいでしょう。フレーズは、このフォームについてきます。

 

■チェックするところ

□声がかすれたり、ビリビリとなっていませんか。

□息がもれていないですか。

□体が部分的(のど、首だけ)でなく、全体として無理なく使われていますか。

 

53.日本語の表現について

 

 日本語での歌い方は、大きくわけると、3通りあります。

   助詞-殺す

       生かす

 

1.唱歌風

2.メロディ重視

3.ことば重視

 

 

□メロディに美しくことばをおいていくようにします。メロディの線を大切にします。ことばのリズム、表現を中心に、フレーズを短く切っていきます。シャンソンや演歌に多いです。ことばを一音ずつ均等に伸ばして歌をひびき中心にきれいにまとめます。まさに教科書的な歌い方です。

 どれも一長一短がありますが、本当に音楽的な歌い方を満たすものではないように思います。すべてのよいところを入れた方法もできるのです。

 それは、フレーズ重視ともいえる方法で、ことばとひびきのまえに、息のフレーズで歌を全体の構成を大きくふまえ、声楽のように大きく捉えつつ、ことば、ひびきはポピュラーらしく情感を入れて気持ちの思むくままに切っていくというやり方です。日本語の場合は、それをさらに見せ方に一工夫していく必要があります。

 

54.声を吐き出す(シャウト)

 

「アエイオウ!」

 

 

 

□ことばをシャウトしているように聞こえるのがよいと思います。

 つくって歌ってはいけません。

□シャウトのなかで、ひびきがでてきて、それも自由にとれるようにしたいものです。

□日本人はひびきだけをとりがちですが、ことばをぶつけるように出し、そこから、ひびきを拾うようにしてみます。

□歌っている声のどこでもシャウトできるか、お腹から言い切れるかをチェックしましょう。

※声、ことばは感情をこめておいていきましょう。

 

55.共鳴とシャウト1

 

1.イエイ、イエイ、イエイ

 

2.ダァー、ダァーダァー

 

3.Stand by me, by me

 

4.George George George

 

 

□ひびきは、体から息、息をすべて声へ変換します。

□シャウトは、体をそのまま息と声がミックスした発声とします。

□このレベルがのトレーニングができるには、出た声に体がついていなくてはなりません。

□のどを痛めたり、トレーニングのあとに声がかすれたりするようだとやらない方がよいでしょう。

 

56.共鳴と支え

 

1.ラーラーラーラーラー(ドレミレド)

 

 

□ひびきだけでなく、それを息でしっかりと支えておきます。

□そのために、ポジションをとり、力を抜き、声の芯をつかんだまま、声として出していき、しぜんとひびくようにします。

 

57.共鳴とシャウト2

 

「よあけの ひかりに」

  ドソソソ ソファミファ

  ララララ ララララ

 

 

□ドよ(ド)でしっかりと深いポジションをとります。

□あ(ソ)では、そのポジションを逃さないように

□(1)のどをあけます。

  (2)なるべく深いポジションをとります。ここだけでやるとハスキーな声で歌えます。(2)を中心に強く出すと(3)頭にもひ   びきます(シャウト)。

 (3)しぜんと、頭声の方もひびいてきます。

 

58.共鳴(pp)からシャウト(ff)へ

 

1.あなたを(ドドドド)あい(** ドシラシシ)

2.あなたを(ドドドド)あい(** ドシラシシ)(1オクターブ下げて)

 

 

□外人のヴォーカリストは、よく、高音での弱にひびきからいきなりドスのきいたシャウトにもっていったり、明るいひびきのことばから、深く太い低音に急にもっていき、お客をしびれさせます。これは、声の芯をつかんでおり、体の力でバランスを移行させることによってのみ、可能となります。

 

59.ジャンル別の発声スタイルについて

 

ブレスヴォイストレーニングは、どのジャンルに対しても、共通の声づくりを根本で目ざしています。それは、声の正解は、その人の体のなかにあるという考えだからです。だから、ジャンルによって、変えるのは声の使い方、つまりスタイルになってからです。

 

60.ゴスペル、ヘビメタの発声

 

ほしはひかり

 

ほーしは ひかりー

 

 

□息をたくさん吐き

□声と息のミックス、息を多めにする                      

□声のポジションを死守する

□体の力でポジションを押す

□息のフレーズで、音色をかすれたまま、もっていく

                             

 

ゴスペルの発声

(マヘリヤ・ジャクソンのCDを聴くとよいでしょう) 

 

 

 

第4章 フォームづくり

 

 

★同じトレーニングをくり返し、基本を身につける。

 

 柔道で投げ方を覚えるときも、ゴルフで球を打つときも、1、2、3、とタイミングをとり、何度も何度もフォームを固めるまで、トレーニングします。ヴォイストレーニングも同じです。息を吐き、それを声にして、さらに大きくしたり伸ばしたりしているうちに、フォームができてきて、いろんなことができるようになるのです。形から入り、身を伴わさせていくのが早い方法です。

 

 ブレスヴォイストレーニングは、一見バラバラにみえるプロヴォーカリストの声や体、息の使い方を分析し、その基本的な要素をメニュにしたものです。歌一曲では、判断しにくい実力の差を一つひとつの要素に分け、チェックしながら進めることで、確実にそのギャップを埋めていくことができます。つまり、一流のプロヴォーカリストなら、このトレーニングで求めている条件をその場でクリアできたのです。しかし、アマチュアや日本の多くのプロヴォーカリストでは、ほとんどできませんでした。そこに基本の力の差があります。

 

 トレーニングですから、確実に上達しなければ意味がありません。誰でも確実に上達するためには、必ず鍛えられるところ、つまり、ヴォーカリストの体とフォームをつくることなのです。

 

61.フォームから発声にする

 

 

フォームづくりのためのチェックをしましょう。

 

「声のじゃまをしないように体がついている」ようにしていきたいものです。声がうまく出ない、ヴォリューム感がないというのは、ヴォーカリストとしては致命的です。次のようになります。

(1)のどが痛くなる。疲れる。

(2)長く伸ばせない。

(3)大きく出せない。

(4)高く出せない。

 これを防ぐために、フォームづくりとともに声を出すことを覚えていくのです。

 

 

□あごをひく 力を抜く

□肩おとす

 

□胸の位置、高めにする

 

□負担を背負う

 

□骨盤は前に出る ややひきしまる

 

□ひざ脱力

 

62.くせをとる

 

 

1.のどの力、その周辺の筋肉の脱力をする。

 

2.声のくせをとります。このくせは、録音して聞くと、嫌だなと自分で思うところのひびきのことです。

 

 

□肩、首の筋肉、胸の横は、よくもみほぐしてリラックスさせておいてください。

□声を出したとき、多くの人は、顔、口のなかにひびきます。これは、よくないひびきなので、鳴らさないようにします。

□ただ、そこでひびかせて、声にしたり、歌ってきた人は、声にできるきっかけがなくなります。そこで、体、息と結びついた正しい声、あとで、可能性がどんどんと拡がる声をみつけなくてはなりません。

 

63.胴体共鳴のチェック

 

「ハイ」という声をなるべく深く太く大きな声でいいます。

 

チェック

1. 首

2. 背中

3. 腰

4. びてい骨

 

□最初は、くせがとれませんから、うまく「ハイ」といえないかもしれません。息を吐く背をしてください。

□声のポジションは、さわってみて、一番ひびくところです。深まるにつれ、1→4と移ってきます。

□手でひびきをチェックするときは、肩が上がらないようにしましょう。

 

64.体を起こす

 

体を前屈させて、「ハイ」とシャウトします。 

 

□この姿勢では、前腹が使いにくいため、お腹の側筋や背筋が使われ、鍛えられます。

□しかも、重心が低く立ち姿勢としては、安定して声がとりやすいようです。

□背すじを伸ばし、あごをひき、後頭部がつっ立たないようにしてください。

□足がつっぱったり、しびれたりしないように、てきとうに動かして、リラックスを心がけましょう。

□慣れてきたら、少しずつ、姿勢を立ち姿勢に戻しましょう。

 

65.発声にするイメージをつかむ

 

声の意識を丹田(へそ下)にもっていくとともに、ひびきも全身で捉えていきます。

 

□ほとんどの人の声は、Aのところ(のどで出し、顔面にひびかせる)と捉えています。

□しかし、体全身が楽器であり、声を最大限活用しなくてはいけないヴォーカリストにとって、声を捉えるイメージはBのところ(お腹の中心で、全身をひびかせる)とすべきです。

□声を出しているときに視線は前に集中しても、パワーは全身で捉えるようにイメージしましょう。

 

66.あごの固定

 

1.「イ」、「イーイ」

 

2.「ウ」、「ウーウ」

 

3.「ん」、「んーん」 

 

□あごを押さえてやってみてください。声は出しにくくなりますが、正しく出るようになります。

□口をパクパクさせると、どうしても口先でひびきをとるくせがつきます。そうしないと、最初は、発声しにくいのですが、それをやめることです。すると、声を出すのに体がきつくなります。しかし、それが正しいのです。体は、そのきつさによって強くなり、そのうち、きつくなく、できるようになります。

□最初から、体がきつくなく、できているのなら、それは、プロと同じ声をもっているということですが、一声、聴いただけで違うなら、それはやはり、口先で逃げていたからなのです。

□体がきつくなってやっと、本当のトレーニングに入れるのです。 

 

67.発声を確実にものにする

 

どの音(キィ)でもよいですから、最も自分の声の出やすい声を出します。「ハイ」とか「ララ」でよいでしょう。

 

□音をより強く大きく太く出していきます。すると、しぜんに高くなってきますが、これを同じ音でしっかりと出します。

□たった一つの確実に出せる音を発見し(なければつくり出し)、それをより使いやすく魅力的な声にしていきます。

□すると、しぜんと、次の音が準備されていくのです。そうして、獲得された音域、音量は、確実なもので、基本となります。

      (大)

       ↑ 音量

       ↑

       |

(低)←---●-→-→音域(高)

       |

       |

       |

       ↓

      (小)

 

          ↑

          |

          |

(低)←------●---------------→(高)

          |

          |

          ↓

 

68.声を見つけ、大きくする

 

息を思いっきり吐いて「アマイ」「アオイ」とシャウトしてみます。

 

□声をできるかぎり出すことを身につけ出して、セーブ、コントロールする方向で進めます。

□声が充分に出ていないと、それをコントロールするのは、難しいです。

□息のしっぽを捉え、声にすることです。息のなかに声のきっかけがでてきます。それが声となるのを待ちましょう。

□声に気持ちを入れることです。そのことで、声がしぜんと出やすくなります。感情のなかに計算(作為)は隠して創造していくのが、ヴォーカリストです。

※できるだけ、声を出す方がよいのは、次の理由からです。

(1)体が鍛えられます(体と息と声の結びつきが覚えやすい)。

(2)コントロールができます。

(3)間違いがわかりやすいです。

(4)感情が入りやすいです。

 

69.日本語に体をつける

 

I love you ラブユー Blue アオイ 

 

日本語は体をほとんど使わなくて出せることばです。ですから、体を使う必要性を与えることです。

□体のついたことばが「音楽的日本語」で、そのまま歌に使えるのです。それをめざしましょう。

□やりにくいときは、外国語でやって、そのフレーズを応用します。

□大人の声をよく聞きましょう。できたら、外人のオペラ歌手、CNNのキャスター、俳優などがよいでしょう。

 そして、その通りに、まねてみます。外人で日本語を話ている人のなかにも、よい見本となる人もいます。

□体は、正しいトレーニングにより、どんどん、声を出しやすくなってきます。

 

70.シャウト

 

Help! Yah! Hey! Distiny! Satisfaction!

 

シャウトは、体で押していきたいものです。体の強さを基本としたフレージングのトレーニングをします。ここでは、ひびきだけでなく、声にも、力が逃げてしまわないようにします。 

 

□感情がストレートに伝わることを目的とします。

□迫力のあるパワフルな声が望まれます。

□体の底から出てくるイメージを大切にします。

□のどはしめないようにしてください。

□のどの弱い人はやめましょう。

 

71.ことばを動かす

 

うつくしい じんせいよ かぎりない よろこびよ

 

このむねのときめきを あなたに

 

(「愛のメモリー」) 

 

□ことば

1.気持ちを込めて読んでみます。

2.切るところ(ブレス)を工夫してみます。

3.強調することばを強くしたり、のばしてみます。

4.弱くすることばを決めます。

5.一つの大きな流れのなかで表現してみてください。

 

□歌

1.楽譜通り(原曲)に歌う。

2.リズムを変えます。

3.フレージング、ブレスを変えます。

4.音、メロディを変化させます。

5.全く違う歌い方をしてみます。

6.ことばで言い切って、歌をまとめてみましょう。

 

72.上がる前の発声発音にアクセントをつける

 

いのちの(ドレミソ) 

 

□このときは、ドレミソで、ミからソに上がっています。ミにフレーズの中心をもってきて、しっかりと太くとっておくことです。

 

□それにより、音質を変えずに、ソに移ることが容易になります。このソも、フレーズのなかで強く捉えたいのですが、

 

□日本語の場合は、助詞にあたり、強く出せないので、ひびきにもっていくことが多くなります。この場合も「ちのを」でなく「ちいの」とします。

 

※声楽との最も大きな違いの一つが、ここで二通りに出せます。一つは、ソの音をシャウトする、より太く強く出すこと。もう一つは、ひびきでとる(演歌などは、これが多い)ことです。声楽では、ほとんど、フレージングのなかで捉え、4つの音を区別しません。ポピュラーの場合は、そこにもっとことばを直接、読みこみ、ダイレクトに伝えるためのメリハリをつけます。

 

73.フレーズに情感を入れる

 

1.さよならは あいのことばさ

(「さよならをもう一度」)

 

2.Elle my love so sweet

(「いとしのエリー」) 

 

フレーズに次のような気持ちを入れ、しぜんと音色を変えてみましょう。

(1)強くきつく

(2)明るくやわらかく

(3)悲しくつらく

(4)嘆くように

(5)あきらめ

(6)おちついて

(7)やさしく

(8)嬉しそうに

(9)訴えるように

(10)哀願するように 

 

74.ことばにフレーズをつける

 

1.あおい とおい ラララ

 

2.ワン ツゥ スリー

 

ことばをことばのまま、メロディをつけず、言いまわしから、節回しのようにして、フレーズをつけてみます。 

 

□速さについてチェックしましょう。

 速すぎると、ことばが口先により、体に入りにくいです。

 遅すぎると、体が使い切れず、声に流れがのっていきません。

□リズム

 二通りでとってみましょう。

 ∨

 1 2 3  頭打ち(デクレッシェンド)

     ∨

 1 2 3  後打ち(クレッシェンド)

□フレーズ

 全体に一本の流れを通しましょう。

 

75.フレーズの基本 声をそろえる

 

1.ゲガゴガゲ

 

2.ゲガゴギグ

 

3.ゲゲゲゲゲ

 

4.ハイゲゲゲ(ミミレド)

 

5.ゲゲゲ(ドド♯レ)

 

□声が最もとれるところで、声量、声域を伸ばしていきます。

※声を出すことで体の発声に関する機能を強化するのです。

 

ことば ひびきで切る

 (いいかえる)

  ゲゲゲゲゲ

流す  息   フレーズ

  ↑ ひびき

←   →のどあける

  ↓

声の芯 たてに通す

 

76.ロングトーン 寸法を変える

 

1.ラーラーラーラーラー

(1) ラーラーラーラーラー     

(2) ラーーラーーラーーラーーラー

 

体でしっかりつかまえる

 

基本の力を応用していきます。

(1)と(2)では、単に伸びるだけでなく、

同じ質感、ヴォリュームを保つから、

体も3倍以上、必要となります。

 

 

2.いまはただ(ファミミレレ)

 

(1) いまは ただ (ことば)

ことばで「今はただ」とはっきりといいます。

 

(2) いまは ただ

すると、フレーズが表れてきます。このときの体の感覚をその後もいかします。

 

(3) い|ま|は|た|だ

均等に伸ばして、メロディ(ファミミレレ)をつけます。

 

(4) いまーは、ただ

フレーズを大きくしていきます。

 

(5) いまは ただ

全体にヴォリュームをつけます。

 

(6) いまは ただ

(6)歌のスタイルに整えます。

 

 

□口を動かさないようにします。

□体を使った分だけ

□ポジションキープしたまま、2倍、3倍と声を伸ばします。

□15秒くらい伸ばしてみます。  

 それを5つの音に切っていくように考えるとよいでしょう。 

 

77.メッサ・ディ・ヴォーチェ(高低感覚を強弱感覚におきかえる)

 

1.Ge

 

2.GeGeGeGe

3.ア<エ>ア

 

4.ア<ア>ア

 

5.アエ<ア>エア

 

6.アエ<イ>オウ

 

7.アオ<ウ>イア

                 

8.ド レ ミ レ ド ド レ ミ レ ド

 

9.ド ミ ソ ミ ド ド ミ ソ ミ ド

 

10.ド   ミ   レ  ド

 

 

□強くする、長くする、高くすることは、一つの表現として捉えると、同じようにまとまってきます。体をより大きく使うということでは同じだからです。

 

78.ことばからフレーズ

 

いまは ただ

(ファミミ レレ)

 

(1) い<まは ただ

(2) い~~~~~ま

(3) い~~ま~~は~~た~~だ

(4) I MA HA TA DA

(5) I A A A A

(6) いーまは ただ

 

 

□フレーズのパターン

 

79.フレーズでのバランス

 

1.マリア(ラドド)

 こもったり、声を押しつけないように

 上下のバランスを活かします。

 

2.ハイ マリア

  ラ  ラドド

 

□up tempo-リズム、ことば

□slow tempo-フレーズ、読み込み

□マ  リ  ア

 (ラ)(ド)(ド)

  Hop Step Jamp

□のどをあける

□ポジションを深く

 

80.フレーズ

 

1.マリア マリア マリア

 (ラドド ラレレ ラミレ)

2.オーシャンゼリゼ オーシャンゼリゼ

 (ミ レ  ドレド ファミ  ドミレ)

 

 

□音の流れ 統一性

 

□2.オーシャンゼリゼ オーシャンゼリゼ

ZEO

ド→ファ

 

ゼ オ

ゼ オーーーーーー(ゼ)エ

   オーーーーーーゼオーーーーーーーゼ

   オーーーーーーゼエオーーーーーーイ

   O           ZEO               I

   ミ           ド ファ            ミ

 

81.フレーズの応用 構成

 

このおおぞらに つばさひろげ  飛んでゆきたいよ

ドレミミファミレ    ミレドドレドシ    ドシラドラソドレ

 

かなしみのない じゆうなそらへ つばさはためかせ

ドレミミファミレ    ミレドドレドシ    ドシラドラソドレ

 

いきたい

レドシド

 

 

□「この」からいきなり「おおぞら」へ上昇します。そこで「ゆきたいよ」という感じをうまく出しましょう。

 

□滞空時間と急降下着陸が、フレーズのポイントです。

たとえば「はためかせ」/ \「ゆきたい」というのが、この形です。

 「かなしみのない」なげやる感じにしてみましょう。

※声楽では、ひびきを中心でもっていきますが、ポピュラーでは、ことばとリズムのセンスでうまく切っていき、伸ばせるところだけフレーズの処理をします。

 

 

82.サビ(ff)から出だし(pp)に

 

そらをそめて もえたよ<しぬまで

 

(1) そらをそめて もえたよ   しぬまで

 

(2)          もえたよ    しぬまで

 

 

□「そ」「を」「そ」「て」は、しっかりと深いポジションで言います。

□「そら」「を」「そめて」「もえた」「よ」をはっきりと、区別しつつ、つなげます。

□フレージングは、「たあよおーしぬ~」とうまく盛り上げて、収拾させることです。

 

 

83.フレーズの展開

 

さよならを もう一度 あなたに

 

1.このままいると こわれそうな

 (ドレミファファミファ ファソファラミミ)

 

  ふたりーだから はなれるのさ

 (ラミレ レドレ ドレドミシシ)

 

2.「れーそうな」

  (ファ ラミミ)

 

 フレーズの展開のトレーニングはなるべく大きな流れをつくります。伸ばした声を波のようにしていくのです。

 

 

□ことばとフレーズをミックスさせます。

□感情ニュアンスを盛り込み、声の表情をつけます。

□技術に支えられたうまさが求められます。

 縁起がみえすぎると、空回りしますので、やはり体の強さが基本といえましょう。

※この体なら、2オクターブ、フルに使えると思えるくらい、強く大きく息の吐ける体をつくりましょう。

 

※上昇、盛り上げと、おとしこみの感覚をつかみます。感情を効果的に伝えるための代表的な展開例です。

 

 

84.フレーズを大きくしていく

 

あなたゆえのわたしよ

 レレドレレドレレドシ

 

わたしゆえのあなたよー

 レレドレレドレレドミレ

 

 

□あなたーよお 声=感情

□たあよおおうー 音楽=センス

 

85.送り込む

 

いのちかけて いつまでも

 ことばでフック

   ↓つかんだ声を

    メロディでかっていく

 

※メロディ

 ことば センス 感覚をくずす 日本語の感覚

 

 

□徹底的に、日本語を音楽的にする。音楽的処理に耐えられる体とする、体づくり

□日本語の音変化

 (太く、深く)  BVは、ヴォイスでなく、VOICEトレーニング

 アオイ たつ 英語

□日本語は、ブレスも体も不要。日本語しか使っていないため、よいVOICEを出すのに体をトレーニングする。

 

86.サビの前後

 

きみといきる その日に その日に

ラシドレラシ  ドドラレ  レレレミー

 

A canto a te A canto a te

 

 

□「いきる」のあとで、転じるとき、暗い音色から一転して明るい表情をつけてみます。

□二つの「その日に」の間で転じるとき。

「きみと…その日に」まで、一つのフレーズでもってきます。

□その他、次のような展開を試してみてください。 

★サビの盛り上げ方のパターン

サビのまえのことばとフレーズについて

 

(1)サビを切りかえる

 1.音色を暗くする。

 2.ディミニシェンドしておく。

 3.弱くする。

 4.やや遅くする。

 

(2)サビに近づくほど盛り上げる。

 1.短くする。

 2.クレシェンドしておく(サビより一回り小さく)。

 3.言い切る

 

87.高音発声へ移行する

 

only you

(ソラミ)

 

バッティングも強振すればよいわけではありません。力を維持してためて、中心をタイミングよく捉えなくてはなりません。

 

 

□声質(音質)は、浅くならないように。

□ひびきは統一します。

□勢いでぶつけてがなっていないように。

□息を送りこむと、ヴォリュームをつけられる。

□体と一体になっているようにします。

 

88.音域

 

ゆめもとめて

ソソラソファレ

 

□同じ力でやると最初は高くなると

上にあがります。

だから、高い音ほど体の力を

入れるようにしていきます。

声をつかむというのは、体を離さないことです。高く上がるほど体

を入れておきましょう。

 

89.ブレスヴォイストレーニングでの声域の考え方

 

日本の多くのヴォーカリストは、ひびきをあてにいくだけのハイトーン(A)ですが、ヴォーカリストでも一流といわれる人たちは、体からハイトーンを出しています(B)。これは、体全体をどのくらい共鳴させているかという差ではっきりと現れています。ブレスヴォイストレーニングは、根っ子(芯)のついた声で全身での共鳴を確認した上で、上でひびきをまとめる段取りを踏んでいます。そうでないとひびきに逃げるか、のどをつぶすかになるからです。

 

 

◆今までのヴォーカリスト (A)

いつまでも定まらない

体がつかない

       ↓

 

◆ブレスヴォイストレーニング (B)

使っていなかった しぜんとのびていく

しっかりした声

 

 

 

□高いところにいかず、太くすること、ヴォリュームをつけることを優先する。

□多くの日本人の発声は、高くなるにつれ、すぐに薄く平たい声になり、ヴォリュームもほとんどなくなっていきます。

 ピアノでいうと、弱い指先で、いくら音をなぜてリズムどおり弾いていっても、何も伝わらないのです。

 指先の強さ、さらに全身のリズムが指を通して刻まれていくべきでしょう。

 

□そこで、息と体を使う発声にしていくと、Bコースとなります。これは、高くなるにつれ、ヴォリュームに厚みが出て、メタリックにもソフトにも芯の通った声となります

 

90.声区のチェンジについて、ミックスボイス

 

ブレスヴォイストレーニングでは、ド-ドまでの1オクターブを一声区(同じ発声)で統一することをめざしています。

これをレ、ミまでつくっていっても、トレーニングとしては効果的です。また、太い声で歌う人には、そのまま使うのもよいでしょう。

 

これは、シャウト唱法で、声楽にはない発声です。

その上で、その2、3音下で、ひびきの方へバランスをかえて、

さらに半オクターブ以上を楽にとることを

確実に音量声域を拡げるために行ないます。

 

これは、その音(ラ)になると、

楽になり、音色も変わるのでわかります。

 

 しかし、これは声区のチェンジというより、

上下につながった声で自由自在に歌うことで、音の高さでなく、歌により、上下のバランスが決まってくると考えています。

 

 

 

□音域による声のバランス

 

91.表現するということの重要性

 

ブレスヴォイストレーニングは、声を表現に結びつけて、身につけていくため、表現する場をもつことです。

 

それは、ステージでなくともよいのです。

本人が、ステージだと思い他に一人でも人がいれば、

それは、トレーニング生にとってはステージとなるのですから。

表現に必要なだけ声は身についていきます。

 

だから、すべてのトレーニングを表現する機として、

真剣に取りくまなくてはいけないのです。

 

発声練習をいくらしても、うまくなりません。

表現するなかで、発声、ヴォイストレーニングも、

それ自体が価値をもつほど、大きくとり入れていくことです。 

 

 

□発声練習であっても常に、自分の表現をこころがける

 

92.表現すべきで、発声すべきではない

 

発声練習

 

ハッ ハイ  

 

 

□発声練習のように、声をひびかせて歌っている気になっている人が少なくありません。間違ったヴォイストレーニングを受けた人がおち入りやすいワナです。

 

□声の技術を歌に駆使するのと、発声練習もどき声を歌に使うことは全く違います。前者は、歌の表現のために声が使われており、後者は、未完成な発声を歌という形だけ借りて見せているだけだからです。後者の、お客を飽きさせて、かつ声の未熟さを誇示しようとする無神経さは、日本の気まじめな人によく見られます。表現や歌に消化すべきものが目的となっているのです。

 

□歌に発声練習など見えたら、おしまいです。表現、そして歌のうしろに技術が支えるべきなのです。発声臭さを消すために発声トレーニングをするのです。

 

93.声の完成度をチェックする

 

「ハイ」

「ラー」

「アオイ」

 

これを、ドレミファソラシドの1オクターブで言い切れるかチェックしましょう。

 

 

□きちんといえたら、5点とします。

次のチェックで、できないものをそれぞれ1点をひきます。

 

 のどにかかる(-1)

 声として強くできない(-1)

 かすれたり、びりびりとする(-1)

 10回続けて同じことができない(-1)

 一つ低い音よりも大きくシャウトできない(-1) 

 

 

第5章 ボーカリストとしてのトレーニング

 

★自立したボーカリストをめざせ

 

ブレスヴォイストレーニング

 基本となるのは、次の3つです。

 

 ◆耳…一流のアーティストをよく聴くこと

 ◆体…自分の体をヴォーカリストとして使える体になるまで徹底して鍛えていくこと

 ◆声…魅力的な声、強く安定した声にすること

 

 歌のなかで表現が充分にできるだけの歌の技術をもつこと

 さらに、音感・音程…

      リズム…

 ことばや、フレージングでの表現技術、感性、センスが必要です。

 アカペラであろうと、どこの国の人の前でも、通じる歌、誰もが魅了され感動する歌を歌えるための徹底したヴォーカリストおよび声をプロとして使っていきたい人のためのトレーニングが、ブレス…トレーニングなのです。

 

94.基本トレーニングメニュ(1) 目標 フォームづくり

1.スケール ラ<レドシラソ>

2.ブレス(ハッ)×3回+1回休

     (ハッ)×<ドレミレド>

3.ブレス→声

  (ハオ)ハオ

  (ハオ)ハオ(ラオ)ラオ

4.声

  ハオ、ラオ

  ハオ、ラララ

 (アオイ)アオイ

 (アマイ)アマイ

  アマイ ラララ

5.アマイ アマイ(ドシシ)

□ハイ→ララー 

 

 

□肩上下しない

95.基本トレーニングメニュ(2)

1.とおいまーち とおいうーみ ゆめはるーか ひとりたび

  ドドドドーレ レレレレーミ ミミミミーファ ファファソファド

 

2.1よあけのーうたよ わ た し のこころに

   ドファファファーミラド ラ ソ ラ ソレレドミ

  2ドファファファーラファミ

 

3.わたーしはわすれない うみにやくそく したーか(あ)ら

             すな

             そら

  ミファファファ シドレミミ レドドドドレミ ドシ ラ シ ラ

高)シドドド ファ#ソラシシ ラソソソソラシ ソファ#ミファ#ミ

低)シドドド ファ# ソ ラ シ シ ラ ソ ソ ソ ソ ラ シ ソ ファ# ミ ファ# ミ

 

4.きのうの かなしみ ながして おくれ

  ドドシ ラ レレドシ ミミレド# レミファ#

 

5.ヴォーラーレ オオ カンターレ オオオオ

 (ソ  ファ レ ソファ)

 (ソ  ド ソ レド)

  ミ  レ ラ ミレ レドソ   ソシレド

 

96.基本トレーニングメニュ(3)

 

1.とおいまち とおいうみ ゆめはるか

  ドーーーレ レーーーミ ミーーーファ

  ひとりたび

  ファファソファド

  (遠くへ行きたい)

2.よあけのうたよ わたしのこころに

 1ドファファファミラド ラソラソレレドミ

 2    ラファミ ミレミレソソファラ

  きのうのかなしみ 流しておくれ

  (夜明けのうた)

3.わたしは わすれない 1うみにやくそく したから

             2すな

             3そら

  ミファファファ シドレミミ  レドドドドレミ ドシラシラ

  シドドド ファ#ソラシシ  ラソソソソラシ ソファ#ミファミ

4.ヴォラーレ オオ カンターレ オオオオ

  ソ ファーレ ソファ

5.アオイ アオ アオイア

 

 

 

まとめ

 

1.体の準備、フォーム

2.呼吸

3.発声、ポジションの確保

4.フレーズ

5.音色→ヴォーカルとしてのスタイル、オリジナリティ

  センス→音楽的センス、語感

6.感情、表現、フレージング

7.ひびき、音感、リズム

 

○習得の課程

 力をつけるレベル(体の力、リラックス)で、何度も基本トレーニングを繰り返します。同じ結果(声)が出せるなら、力をつかわないでフォームでやる方に移していきます(技術)。その力をさらに上級の課題(強、高、太い声を出すこと)に向けていくのです。

 

97.感情を支える

 

強く感情を出してみましょう。

 それを支えて、聞かせるために、技術が必要なのです。

 生身の感情(体)→ストレートに伝える…トレーニング

 繰り返しに耐える(技術)→気持ちよく聞こえる…歌

 

98.ワンパターンからの脱出 (慣性、リズムにはまらないように  する)

 

歌っていて飽きをふせぐための方法です。

 

同じメロディや歌詞がつづくときにも有効です

 

 

その他に、次のような逃れ方があります。

□シンコペーション

□前打ち(やや前にずらして早めに出る)

□後打ち(ややあとに出る)

□強調(強くする、伸ばす、大きくする、など)

□フェイクする

□アドリブを入れる

□転調する

□三度、五度オクターブ上げる

 

99.音程・音感トレーニング

 

コードパターンの上で進行させてみてください。

 

1.歌詞を用意して、コードに合わせ即興で歌います。

 

2.同じことばをコード上で繰り返します(英語、ラップ)。

 

3.意味のないことばを繰り返します。 

 

 

□1.は、知らない曲をカラオケで歌うとよいでしょう。

 

100.スタイル 歌う立場ともっていき方を定める

 

「なりきる」と「語る」

 

 歌う立場としては、歌の主人公になり切って、感情移入するときと、第三者的に物語るときがあります。

 最初はなりきって、ストレートにドラマチックに歌いあげる方を勧めます。いろんな歌い方はありますが、どこまで一つの歌を大きく歌いあげられるか、全身で表現できるかということを追求しておく方があとで伸びます。若いうちから、あまり、せこせことまとめた方い方におちつけるのは、反対です。ヴォイストレーニング同様、ヴォーカルでも大きくつくった器は、小さく使えますが、逆は困難だからです。

自分の土俵(スタイル)にもちこむ

 

 それとともに、自分のスタイルをそのなかでつくっていくことです。パワフルにストレートに伝えるための伝え方でのフォームを思い出していくのです。これは、ヴォーカルにきって、最も大切な課題です。

 

101.かけあい(コミュニケーション)と間

 

 

歌もまた、お客さんのかけあいで成立します。ヴォーカリストの投げかけた歌詞に、お客さんが心動かされ、問いを発し、それにヴォーカリストはこたえていくのです。

 

  ヴォーカリスト「………」

  客 「それで?」

  ヴォーカリスト「………」

  客 「だから」

 

 間というのは、お客さんの参加する時間です。そこで聴いているところから、一歩、ヴォーカリストへ何かを期待したところを、次のフレーズで満たしてあげるのが、ヴォーカリストなのです。つまり、これでもか、これでもかと、客が満足しすぎて、もういいというほどのサービス精神が必要なのです。体を何回も一杯、使ってあげると、それだけで人は喜びます。全力で歌うことの大切さを知って欲しいものです。

 

102.学ぶこと

 

 歌、声を出した瞬間から、何かを起こし続けることです。

 

  1.どんな歌なのか

  2.どう歌いたいのか

  3.どう伝えたいのか

 

 歌の真実、人間の真実をえぐり出すことです。

 

 私たちが感動したとしたら、そのなかに何かしら、本質、真理があります。歌の流れにおぼれるのでなく、身を体、呼吸の流れに任せます。

 決め手、ピークとなるポイントをもち、流れをキープします。

 間のコミュニケーションをうまくとることです。

 

  1.かけあい

  2.押しあい

  3.ひっぱりあい

 

 お客に対しては、いつも次のように考えましょう。

 

  1.眠らせるな

  2.あきさせるな

  3.出しつづける

 

103.歌に自分を

 

 まわりの空気にそまらないこと。そして、流れを自分でつくり出すことです。

 息吹、ことば、メロディが聞こえてくること、胸にせまってくることが大切です。

 一本調子でかわいいだけではだめです。

 虚像で生き、虚を表現するな。なかに真実を宿せ。

 次の曲も、次々と何曲も聞きたいと思われるかどうか。

 そのためには、形をこわすことです。文句をいわせない力をもつことです。

 理解されないことを恐れないことです。そして、本当のあなたを出すことです。すぐに理解されるものがよいものではありません。自分を単に受けねらいの、まずい料理にしないことでしょう。

 

 

 ライブ…一人ひとりが、一つのピークを打ち出し、トータルでつなげていくことが大切です。

 

104.表現に思いを

 

 思ったように歌を動かすには、思うことです。思わなくては動きません。

 思いを入れることです。入れなければ伝わりません。

 表現するもののこと、そして、表現しようとする自分の意味を考えることです。

 ステージは、ヴォーカリストにとっての勝負の場なのです。

 

105.実力について

 

 余裕がみえるのはよいのですが、多くの場合、それはスキ(隙)というものにとどまっていることが多いようです。不安定、おっかなびっくりでやっているのはもちろん、自信たっぷりにやっていても、よほど気を引きしめて、ステージまでを日々、努めていなくては、スキが出てしまいます。

 歌がうまいってことは、その歌を伝じて、人をその歌の世界、あるいはその人の世界にひき込めるということです。そして、パワー、エネルギーを聴いている人に注ぎ込めるのです。だから、人を気持ちよく元気づけることができるのです。そして、魅了できるということです。歌い終えたあと、誰も認めざるをえぬ空間と時間の間ができるのです。つまり、あなたの歌が、一つの世界をつくり出すのです。

 

106.ボーカリストの姿勢

 

 タレント、学園祭のスター、カラオケの上級者と、比べられないレベルのことをめざしましょう。

 歌と本人が一致して、一つになること、他の人(ヴォーカリスト)が、歌から聞こえる人が多いのです。あなたを聴いているのに、あなたはどこにいるのといいたくなります。曲からメロディ、ことばが浮いてくることです。歌との対決を避けず、正面に捉え、融和していくことです。

 ヴォーカリストの力は、伴奏が間違ったくらいで左右されません。孤立孤高を恐れないことです。向きあったときにも、人間としてのパワー、迫力が出てくるくらいになりたいものです。自分が不利だと思うことに、言い訳をつくらないことも大切です。

 

107.伝統を学ぶ

 

 伝統をくむ必要を感じます。そのなかには、多くの学ぶべきものがあります。人間の心とそれがどのように表現されてきたのかを学びましょう。

 世界中に多くの文化遺産に学びましょう。あなたを刺激し、モティベートをかけてくれます。あなたのつくり出す世界の大いなるヒントになります。

 たとえば、美空ひばりの歌でも、そのことば一つひとつに彼女の人生のみならず、戦後、日本の歴史や生活まで入っているのです。そのことばを学び、今に生かすことで大きなエネルギーと力が生まれます。ブレスヴォイスにも、多くの先輩の残してくれたノウハウ、マニュアルが受け継がれているのです。

 

108.ボイストレーナーの必要性

 

 その人に、100パーセントの力を出させ、それを何倍にもしていきます。少しうまくなったぐらいでは、だめです。根本的に直してもらうことです。

 トレーナーは、自分に厳しくできる場を与えることが必要です。表面的な技術でなく、練習のやり方や判断の仕方を伝えてもらうのです。

 強化トレーニングには、リスクもあります。だから、間違ったことを、的確に指摘できるトレーナーが必要です。のどにこないように体を使うことと、リラックスをしつつ、声の使い方を覚えていきます。結局、トレーナーは、その人が将来、自分で練習できるようにするためにいるのです。30分のトレーニングを30分、ものにできるのがプロです。しかし、本当ならプロにこそ、トレーナーが必要なのですが、日本ではなかなか、そうはいかないようです。

 

109.マイクの利用法について

 

 マイクは頼るのでなく、利用するものです。

 マイクを通すと通用するようになるのでなく、マイクなしで通用してから、マイクを使いこなすべきなのです。

 ことばでの乱れは、歌により、マイクを通じると、大きく荒がでてしまいます。エコーなどでごまかさず、しっかりとアカペラでも歌える力くらいはつけておきましょう。マイクに頼りすぎると、声が伸びていかなくなります。だから、よくないのです。

 歌や声の見せ方として、マイクの特性や利用の仕方を知っておくことは必要です。しかし、ヴォイストレーニングは、マイクなしでやることです。

 

110.ボイストレーニングでの諸注意

 

○鍵盤をみないこと

 

○ピアノでなく声に合わせる方が、最初は音はとりやすいようです。しかし、できるだけ、ピアノのひびきにあわせるようにするか、無伴奏にすることです。

 

111.ボイスクリニック

 

Voiceクリニックシステム

1.治癒すること

2.正しくすること

3.チェック

  使えるもの/使えないもの/使ってはいけないもの

4.カルテ

5.検査

 

プロ

よい

発展

○Newtral

 

病い、けがのままにやっていくと、より悪くなる

 

112.部分と全体

 

1)声のベース(部分)で基本をつくっていきます。

 表情や動作をつけないことです。なるべく単純な方がよいのです。この繰り返しによってした、基本の力はつきません。そして、またどのようなものにも応用ができます。

2)歌のベース(全体)を応用していきます。

 表情や動作がつくことによって、基本力がこわれないことです。そして基本的なものを効果的にみせられるようにならなくてはいけないのです。

 

 

第6章 ブレスヴォイストレーニングからみた

           日本と世界のヴォーカリストの差と克服法

     ~本当の声、ジャズ、ブルース、ヘビメタに対応できる声にするために~

 

 

1.声

 一般のレベルでの、声の明瞭さとひびきの違いは、

息の深さや体との結びつきからきている。

 

2.話す声と歌う声について

1低音域(ソ-ミ)話し声

2中音域(ミ-ラ)歌の中心となる声

3高音域(シ-ソ)ハイトーン

 

 この1~3が、日本人の場合は、本来の声とつくりかえており、

外人の場合は一致している。

 

3.声域とヴォリューム感

 日本人は声が高くなるほどに声となるポジション(感覚)が、のどへあがってくる。こ

れをよけるために、声を後頭部へまわしたり、眉間にあてようとする(それを発声のトレーニングと思っている)。

 

4.芯とひびき

 外国人は、高低よりも強弱の感覚が強いため強さによって声を上ずらせたりしない。胸部でしっかりと声の芯を捉えており、その上で、しぜんに頭部へひびかせている。

 

5.シャウトとフレージング

 日本人のシャウトの多くはのどでつくっており、本当にお腹の底から出しているものではない。体の中心で声がとれると、のどはしめずに、フレージングの上でシャウトができる。

共鳴(ひびき)させるかシャウトさせるかは、本当は表現上の問題にすぎないはずである。

 

6.リズムとピッチ

 リズム感は、呼吸のなかで感じる時間であり一つひとつの拍が止まっているものではないはずだが、日本人は、声を点としてあててしか出せないのでノリが出ない。フレーズで息の流れからとるとしぜんとその点は動き、線がみえる。

音程についても同じことがいえる。日本人の音程は、二点の離れた点を飛ぶ

が、外国人は強弱のなかで、フレーズのなかでスムーズに移行できる。

 

7.音声イメージ

 要は、口先で歌ってしまうと、表現が凝集もされず、解放もされない。声そのものの魅力もない。

外人ヴォーカリストは、心に何かを感じ、それを息を吐くことで声として表現している。しっかりと声をつかんでいるから、体からの息でその声を動かしていき、それが

描いた線が歌となる。

日本人のヴォーカリストでは音声イメージの空振り(口先だけの消化)で終わっており、声の魅力、技術が伴っていない。

 

 

 以上、ことばで全てを伝えることは難しいが、この差を埋めていくのが、ブレスヴォイストレーニングであるから、この説明をどこか念頭においてトレーニングしてもらうとよいでしょう。

 

 

トレーニングのプロセス

応用メニュ

 

113.体で押し出す

 

good by

 ド   ソ 

 

□声でもっていけないところを体で押し出すつもりでやりましょう。

□かなり高い音をひびかせずのどをしめずにやります。

 

114.発声をかくす

 

きみを

(ミソソ)

 

発声がみえないように、大きな表現を試みましょう。

発声は、お客にみえるのでなく(お客との間に前に出るのでなく)表現や歌のうしろで支えているものでなくてはならないのです。 

 

□感情と体が結びついていること

□その間にわざとらしい発声やつくりがみえないこと

 

115.強調

 

愛にやぶれた

(ドファソラファファファソファ)

 

いきたいよー

(ラドラファラドー) 

 

□フレーズのなかで息を吐く量を多くするだけです。

□声はしっかりとにぎっておき、強く出してもポジションがわからないようにしましょう。

 

116.強調から落とし込み

 

それは愛のゆめ たとえ

(ラシドレミミソラードドシ) 

 

□どんどんと前半を盛り上げていきます。

□「ゆめ」までたたみこんでいくのです。

□「め<」で伸ばし息を吐き切ると、瞬時に「たとえ」を重ねて出しましょう。

□「たとえ」は歌わず、息の流れにのせるだけです。

 

117.ダイナミックに

 

te e e

(レ レーレー)

 

どんどん強くして息を吐き切ります。

ダイナミックとは、密度やヴォリューム感を損なわず、

より大きな表現にすることです。

 

□方向性を定めます。一方向にふらつかないこと

□声の芯ははなさず、息を2倍4倍と吐き切ります

□しぜんとひびきやフレーズ、ヴィブラートがつくように

□多くの人は、ダイナミックにシャウトできません。

単に声を大きく出したり、伸ばすだけでは、よくありません

□完全にコントロールされ、流れをつかんでなくてはならないのです

□意識しても、計算しないこと。体と息の力でのせていきましょう

□少しずつ、より大きなフレーズがとれるようにしていきましょう

 

118.ひびきでつなぐ

 

ピイレ

(ミ レ)

 

 

□声を弱めても、浮かせないこと、芯はなくならないようにします。

□フレーズのなかで、ひびきをのせ、声量をおとすだけです。体の中心からそらすのではありません。

□「イ」でしっかりと声の芯を確認しましょう。

□一つの音を体につけて押したまま、ひびき(B)を意識して、体で押し出す声(A)を抜いた状態といえます。

□もちろん、すぐに実声にもシャウトにも、もっていけるはずです。

 

119.歌唱としてまとめる

 

自分の好きな曲を1フレーズでやってみましょう。

 

 

次の4つの要素でチェックしましょう。

1.音声イメージ(心)

2.基本-声+息+体

3.構成

  聞かせ方

  方向性、ダイナミック

4.オリジナル

   スタイル/メッセージ/ポリシー

 

120.フレーズのまとめ方

 

ラララ

(ドソド)

 

 

□音の間をしっかりと埋めておくこと。

□その音に届くだけでなく、音を充分に表現できる声であり、しかもそれがつながっていること。

□音の流れがみえること(一つの音を次に送る力)

□歌い手がひっぱっている(リードしている)こと

□そこに感情が表出していること

 

121.声量の支えと増し方

 

何もつげず、去った日よ

(ミファソミシド ファソラファレシ)

 

 

□ことばで強くいうときよりも、強く体と声を使って支えます

□そのまま音程とリズムをとります。

 さらに体と息を要します。(高低でなく、強弱でとってください)

□その上で、自由に感情を表現します。口先だけの表現にならないように。

 

 

 

 

自由に表現する

 

122.歌詞とメロディの解釈

 

なんでもーわたしをあいして

(レドレミーラシドラミレドレ)

 

 

□自分でフレーズをひいてみて考えてみましょう。

□たたみかけたり、押したり引いたりのかけあいメロディとことばをどう構成するかとい うセンスが問われます。

□できたらお客の期待以上に体を使い、さらに一押しする表現に挑みましょう。 

 

123.1オクターブを体に入れる

 

多くの日本人は、1オクターブ

を頭声だけでとっている。 声になる芯をつくると

芯を中心に1オクターブとれる 

 

124.声区の差を埋める

 

下のドから上のドまでスケール(「ラ」でよい)  

 

□高いところから、なるべく太く強く大きく声を出していく

□低いところから、太さは細くならないようにしながら、少しひびきを意識する。 

 

 

さいごに

 

ブレスヴォイストレーニングの特色をまとめておきます。 世界に通じる声の技術の獲得をめざす。

そのために、

1.ベストの声をより完全にしていく (できることを精一杯やり、できないことをやらない)

2.声量優先、体で声を出し声量を拡大して声域をとっていく

3.ことば、スタッカートを優先し、(←→声楽はレガート、ひびき)ことばのフレーズをメロディのフレーズにしていく(役者は、ことばのフレーズ)

4.プロの体、プロの声を想定し、それを自らのなかで見つけ出し鍛えあげていく

5.のど声での日本語を音楽的日本語にしていく

6.ひびきやあてることは、しぜんにひびいてくるまで待つ

7.体と息、息と声そして体と声が結びつくようにする

8.しぜんに語りかけるように、あるいは叫んだがままを歌にする

9.一人ひとりの個性と表現を追求し、同じでないことに価値を認める

10.すべてを感覚でコントロールし、発声や歌を表に出さない表現を重視する

そのなかで声や歌に対する判断基準そのものを高め、それに声や歌が対応できるようにしていくということなのです。

 

 

あとがき

 

ブレスヴォイストレーニングの本質について     

 

まず、歌うことは、自分の感じたことを声にしてそれを音楽にのせることだという方向を明確にすることです。ヴォーカリストの力は、演出や個性も含めたもので総合的なものですから、何が実力なのかがはっきりとしません。しかし、世界の一流のヴォーカリストを聴くと、まぎれもなく、その原点が声の魅力とその魅せ方にあることは明らかなのです(日本で教えていると、このことを理解してもらうだけでも簡単ではないのです)。

 

 ですからヴォーカリストには、プロとしての声があり、それを宿しているプロとしての体があり、それを使うプロとしての技術があるということです。ブレスヴォイストレーニングは、この3つを身につけるためのトレーニング法です(本当は、ヴォーカルトレーニングもヴォイストレーニングもそれ以外のものであってはならないのに、多くの場合は、無目的に、せいぜい音程のための音程、リズムのためのリズム、ことばのための発音といった部分的な処方がなされているにすぎないのです)。

 

 具体的に述べるなら、声に体をつけます。すると、声を出すには、体の力が必要となります。直接、体の力は声になりませんから、それに息が介します。体の力を声に伝えるためには深い息が必要です。ヴォーカリストに限らず、声をプロとして使うためのトレーニングとして、最大のポイントとなるのは、ここにおいて、体や息が鍛えられるということなのです。

 

 声を出そうというときに抵抗があるようになると、声が重く深く動かないのを、体一杯の力で押し出そうとすることができるからです。もちろん、のどをしめるのでなく、芯のある声、つまり深いポジションで声を捉えると、こういうことが起こるのです。これを体から息を送って動かそうとするのが、フレージングです。体を常に100パーセント使おうとすると、体の力、つまり声を出す器が大きくなってきます。この過程でプロの体になり、プロの声が育ってくるのです。ここまでは野球にたとえるなら、腕立てや素振りのトレーニングです。体の強化トレーニングであり、ヴォーカリストとしてふさわしい体にしていくのです。

 

 次には、声そのものが自由に出てくれば、声の芯をつかまえつつ、声を解放していく方向にしていきます(ここまでで2年はかかるでしょう)。つまり、同じ声が出るならば体は使わず楽な方がよいわけです。これは、楽をするためでなく、より大きな声(ヴォリューム感のあり、密度の高い声)や、より高い音を出していくのに、それ以上の体を使っていくためです。このあたりで多くの人は、体や息をより使える方向へもっていくのでなく、声をひびかせたり、あてたりして楽に出す技術に頼ってしまいがちです。それで伸びなくなるのです。まとめはじめるため、表面上、歌がうまくはなりますが、せっかく伸びてきた体、声の器の可能性はストップがかかるのです。

 

 声づくりとしてどこまで体を鍛え、どの時点でまとめるかは難しい問題です。私は最低で、半オクターブ、できたら1オクターブまでは全く同じ感覚で出せるようにするというのを一つの基準にしています。そうなってはじめてキィ(音の高さ)によって発声が変わることがなくなります。高いところでやわらかくひびかせたり、低いところで太くシャウトしたりできるようになります。つまり、音の高低に関わらず、表現したいようにひびきやシャウトがついてくるのです。

 

 こうして鍛えられた声は、一声、聞くだけですぐにわかります。鋭く柔らかく、すべてを包み込みながらパワフルに生命感あふれる声となります。それとともに息を吐くように、しぜんになり、前へ前へと歌を押し進める力をもってきます。

 

 ここまでは才能や素質でなく、トレーニングをどれだけやるかということなのです。誰でもそういう声を手に入れ、歌に生かすことはできるのです。どうか、このテキストを充分に生かし、すばらしい声ですばらしい歌を歌ってください。
                                                  福島英