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ヴォーカル、ヴォイストレーニングQ&A

[9]音程

 

Q073

どうしてもうまく音程がとれません。音感が悪いのでしょうか。音程は、トレーニングによって成果が上がるものなのでしょうか。
A073

音程のトレーニングは、数をある程度以上こなし、慣れてくるとしぜんと正しくとれるようになってきます。


Q074

初めて歌ったところ、音痴と言われ、大変ショックです。本当に音痴なのでしょうか。
A074

一般的に「音痴」と言われる人のほとんどは、生まれつきのものではなく、その後の環境に影響された後天的なものが原因であるようです。というよりも、むしろ、正しく音を出すトレーニングをあまりやってこなかったというだけの理由によることが多いのです。ですからほとんどの人は正しいトレーニングを量的にこなしていくことによって直すことができます。

 普通は10デシベル以内、高さで約半音くらいの音程のずれは、生理的変動範囲として、は誤差が受け入れらています。上手な人でもときたま音がはずれるときがあるのですが、誰にも気づかれないだけなのです。ですから自信をもってやることが大切です。
 トレーニングによって「オンチ」は直るのですから、くり返し練習するようにしましょう。自分の出している音程が合っているのか心配なときは、テープに録音してチェックすることです。あまり気にしないことです。

 

Q075

いつも、私は同じところで音程をはずします。歌っているうちにくせになってしまうようです。間違いやすい音程はどう克服すればよいでしょうか。
A075

あまり高い音であると、発声がしっかりマスターできていないうちは、フラット(下がる)しやすくなります。また、高いところから、急に低い所を出すときには、きちんと下がらないことも多いようです。このあたりは、イメージを常に先の音においておくことです。4度音程と7度音程がふつう間違いやすく、とりにくい音程です。この2つの音程のトレーニングをしておくとよいでしょう。

 

Q076

私はすぐにメロディを間違えて覚えてしまいます。最初は正しく歌っているのですが、歌っているうちに狂ってしまいます。どのようにすればよいでしょうか。
A076

最初に間違えて覚えてしまうと、それを直すのは大変な労力がいるものです。初めから、正しく覚えることが、一番、賢い方法でしょう。必ず楽譜で正しく読み、リズムも同時に、メロディをフレーズごとに区切って覚えていくようにしましょう。曲全体を一度に覚えようとせず、フレーズごとに区切って、覚えていくのがコツです。このとき、歌詞、リズム、メロディを関係づけて覚えると、前奏を聴くだけでしぜんと歌が口に出てくるようになると思います。

 最初にいいかげんに覚えてしまうと、同じ間違いをしてしまうことが多くなるので注意しましょう。また、歌い込んだら必ず、楽譜でチェックすることです。トレーニングのときにも楽譜を手元において、何度も見ることです。歌い込んでくるうちに狂ってくることはプロにもよくあることだからです。ピアノでメロディのみ正しく入れてもらい、そのテープを何度も聞くのもよい方法です。

 

Q077

歌っていると音がはずれます。人に言われるまでわからないときもあります。音痴なのではないかと心配していますが、ヴォーカリストとしてやっていけるでしょうか。
A077

音程がうまくとれない人、正しい音程で歌えない人のことを一般的に音痴といっています。調子っぱずれなのに、本人はちゃんと歌っているつもりでいっこうに気付かないとなれば問題です。

 音は空気の振動、空気伝導によって伝わりますが、自分の声は骨を中継として直接内耳に伝わって聞こえてきます。これを骨伝導といいます。ふだん聞いている自分の声は、この骨伝導による声です。ちなみにテープに自分の声を録音して聞いてみると、普段骨伝導によって聞いている自分の声とはかなり違った声であることが分ります。
 空気伝導の音を正確に聞き分け記憶することと、骨伝導による音を正しく再生することのどちらかが狂うと音痴の原因となります。

 つまり、脳の聴覚中枢のはたらきに障害のある人は別として、音痴には耳が悪いための音痴と、のどが悪いための音痴の二種類があるわけです。

 耳が悪いための音痴とは、音階を正しく理解し、記憶できない人のことです。これは脳が正しく音をとらえられないのです。この音痴を伝音性音痴といい、治療は難しいとされています。この種の音痴は幼少期の環境に左右されやすく、この時期の音感教育に基づいています。

 しかし多くの人は、耳はよいが声を出すのがうまくいかないという、のどが悪いための音痴です。これを発声音痴といいます。ふつう音痴といわれる人はこれにあたると思ってもよいでしょう。頭では正しい音が分かっていても、声にすると調子がはずれるのです。これは声帯が思うようにはたらかないためですから、練習を繰り返し重ねれば治すことができます。

 音痴を治すには、積極的に声を出し、歌に慣れることが第一です。その際の選曲は、自分の声質にあった歌で音階の高低が少なく簡単なものにしましょう。そして、とにかく音階を気にしないで徹底して声を使いやすくするための発声トレーニングをするとよいでしょう。発声がよくなればしぜんと音程も狂わなくなることが多いです。

[10]歌とステージング