HP MAGAZINE

トレーニングメニュ「日本語の発音」

【[日本語の発音トレーニング]〜日本語の発音を正そう〜】

CONTEXT

1 日本語の発音
2 母音の発音
3 母音の発音のトレーニング
4 子音の発音
5 子音の発音のトレーニング1 カ行
6 子音の発音のトレーニング2 サ行
7 子音の発音のトレーニング3 タ行 
8 子音の発音のトレーニング4 ナ行 
9 子音の発音のトレーニング5 ハ行 
10 子音の発音のトレーニング6 マ行 
11 子音の発音のトレーニング7 ヤ行
12 子音の発音のトレーニング8 ラ行 
13 子音の発音のトレーニング9 ワ行と拗音・撥音・促音


○日本語の発音トレーニング 〜日本語の発音を正そう


1 日本語の発音

音声学は、音の使い方での調音(医学的には構音)は、声をことばにする知識です。うまくことばにならないときにそのルールを知ると矯正を効率的にできるからです。その人のどこがよくなくてどうすればよくなるのかがわかるからです。

○母音と子音
 単音のうち、ア、イ、ウ、エ、オが母音です。
 母音は、声帯から、声が、共鳴器官を通って鼻や口から外へ出るまでに、どこにも閉鎖などの妨げをうけることなく、発されたものです。
 (舌や唇などの調音の器官でつくられずに発せられる音です)。
 その他の単音を子音とよびます。
 子音は、鼻や口から音が出るまで、歯や唇、口蓋などで、妨げられることで発せられたものです。

○半母音
 半母音とは、ヤ行音の[j]、ワ行音の[w]です。子音と母音の間にはさまって拗音をつくる(キャ[kja]など)ことから、母音と子音の中間的な性格の音といえます(半子音ともよぶ)。
 それぞれの音を発音し、調音点を確かめましょう。

2 母音の発音

○母音の発音
 母音、ア(a)イ(i)ウ(u)エ(e)オ(o)は、舌の位置、口の開き方の三点で、発音が変わります。図は、左側が口の前方、右側が口の奥のほうを表わします。
[ア]自然な口の構えで、あごを大きく開く。上下の唇の間に、指二本が縦になんとか入るぐらいが、アの最大の口の開きです。舌はあごと一緒に下げて、唇はまるめません。
[エ]アから、あごを閉じてきて、舌の位置をアのときより前にもち上げます。唇は、両端をやや左右に引く感じです。
[イ]エからあごを閉じてきて、ほとんど開かない状態にします。舌は、上歯ぐきの上の硬口蓋へ向けて、ジーと摩擦音が起こる手前まで高く上げます。唇は、平たくわずかに開けます。
[ウ]イに近いのですが、あごの開きは、五つの母音の中で最も小さくなります。舌先を奥のほうへ引っ込め、舌のつけ根に近い部分をやや緊張させてもり上げる感じです。唇はイより両端を左右から中央へ引き寄せます。(日本語の「ウ」は、完全にまるめるのではなく、外見上は平らな感じ。唇は丸くなりません。)
[オ]ウの場合より、あごを開き、上下の唇の間に、人指し指一本がたてに入るぐらいの大きさにする。舌はウのときよりやや奥へ引き込み、アの場合より奥舌がうしろへ持ち上げられます。唇は五つの母音の中で、一番丸くします。

〈母音のひびきを確かめるトレーニング〉
 「アー」と声に出し、のどが振動するのを確かめてください。(「イ」「ウ」「エ」「オ」もやりましょう)

〈母音をうまくつなげるトレーニング〉
 ア→エ→イ→オ→ウの順で声を出します。
 アの母音を出して、口の中のかたちを変えず順にア→エ→イ→オ→ウをつなげます。音の高さは、自分の出しやすい音でよいでしょう。
 顎を手でさわって、どの母音でも顎が動かないようにします。母音から母音への移り目をゆっくりとほんの少し口形を変えていくようにします。アーァエーェイーィオーォウーの感じでやるとよいでしょう。

   

3 母音の発音トレーニング

 ここからは、話すときに、いつもリラックスして思う存分、自分の実力を発揮できるように、口慣らしのための簡単な発声、発音のトレーニング課題を音ごとに紹介します。それぞれに、同じ音が3つ以上、入っています。これをくり返して、自信をつけてください。
 これを参考に、自分の課題をつくってみてください。あるいは、気に入った文を抜き出してください。
 苦手な音をなくしましょう。

♯〈アイウエオのトレーニング〉
(ア)甘い朝の挨拶/明日になれば雨もあがる/兄も姉も明るい/あした、あさって、しあさって/秋、愛は熱く燃える
(イ)胃の痛い犬/いたずらでいつも意気投合/以前、今以上の思いをした/イライラしている猪/一途なる意志とイマジネーション
(ウ)海辺でウニを売る/海鳴りを聞きながら腕枕でうたた寝/嬉しい噂は嘘だった/ウカウカしていると運が逃げる/歌を歌ってウサを晴らそう
(エ)絵描きの鉛筆百円/駅で出会って笑顔で会釈/偉い絵師が選んだ絵/エネルギュッシュな演技に詠嘆/駅前で易者がカキエキスを飲んでいた
(オ)おもしろおかしく踊ろうよ/おいしいお菓子をおすそ分け/おいでをお待ちしております/お母さんの大きなおなか/お金を落として怒る人

Q.アとエの区別がはっきりしない。
 アの口の開きを大きくし、舌先をあげすぎないこと。

Q.アとオの区別ができない。
 口の開きを大きくして、舌の奥をあげすぎないこと。

Q.イとウがひびかない。
 日本語のイとウは、浅く平べったくなりがちです。ア、エより、発音するときに口の中が狭くなるためです。
 こういうときは、苦手な音を練習するよりも、うまく出せる音に苦手な音をとり込んでいくようにしてください。
 母音をうまくつなげるトレーニングをやってみてください。
 「お寿司」を「おすぅすぅ」と言うズーズー弁は、イが前舌でなく中舌になっているのです。

Q.イとエの区別がはっきりしない。
 エはアとイの中間音です。それがはっきり区別されていないのでしょう。次の言葉を言い分けてください。
(1)恋、声
(2)江戸、井戸
 「つらい」が「ツレエ」となるのも、アがエになっているのです。イとエは、なまりやすいので要注意です。
☆医師がのどをみるときに、「あーん」と開けさせるのは、舌が下がるからです。また「ヤッホー」というのは、遠くにも聞こえるからです。

☆長母音と連母音
 「おかあさん」「お姉さん」などは、実際にはオカーサン、オネーサンと発音されます。このように母音が連続する場合、長く引っ張るのを、長母音といいます。また「青い」のように、母音が続くのを連母音といいます。

☆母音の無声化・母音の脱落
 本来、有声音である母音が無声化するときがあります。このとき母音は発されないのですが、口の構えとしては残ります(このルールについては省きます)。

(例)着物(き)、打ち切り(ち)、科学者(く)、薬(く)、座敷(し)、深い(ふ)
 似たものに母音の脱落があります。(例)検察庁(う)、自宅(く)、逆コース(く)


4 子音の発音

 息や声が、口、鼻から出るまでに、何かで妨げられて発する音を子音といいます。
 「ピ」「み」は、上唇と下唇で息を妨げて出します。
 このうち、あまり動かないのを調音点といいます。ここでは、上唇です。
 「た」「な」は、上の歯茎と舌先で妨げます。調音点は、上の歯茎です。が、発音のしかた(調音法)は、違います。「み」は鼻から「ピ」は口から出ます。
 「パ」「バ」では、調音点も調音法も同じです。「パ」は声が伴わず、無声音、「バ」は声が伴い、有声音といいます。
 つまり、調音点、調音法、有声か無声かの3つから子音は分けられます。

 「パ」で、上唇下唇を閉じてから出すのを調音法で閉鎖、音を閉鎖音(破裂音)といいます。
 それに対し、「せ」「ふ」のように、一部が狭い隙間をつくっていて、そこを息や声が通るときにつくられる音を、摩擦音といいます。
 「つ」は、上の歯茎と舌先で閉鎖をつくり、閉鎖音として出しますが、長く続けると、「す」と同じようになり、摩擦音となります。このように、閉鎖音で始まり、摩擦音で終わるのを、破擦音といいます。「ち」「ず」も同じです。

 「み」「な」は、鼻から出る鼻音です。
 「ら」は、上の歯茎を舌先で一度はじく。
 つまり、調音法で子音は、閉鎖音(ペ、ギ、ド)、摩擦音(サ)、破擦音(ジ、ツ)、はじき音(リ)、鼻音(ね)と、5つあるのです。

(上)上唇、歯、歯茎、後口蓋、軟口蓋(調音点)
(下)下唇、舌先、前舌、後ろ舌

○日本語は一つの音節のなかでは、高さは変わらない

1.半母音
2.50音トレーニングを各5つで
(1)外国人と
(2)「ん」の5つ
  二重母音
(3)高低アクセント
(4)語のニュアンス
  状況
  態度

○子音の順、調音点の違い 
 カ、ガ、口の奥があがる。  サザタダナ 舌の先が持ち上がる(歯茎)。ワは、両唇と口の奥。ハ、どこも触れない。パバマは、唇、ヤ、カ、ガより前で、サザタダナより奥。ラは舌先の歯茎(しけい)。  口の奥を口蓋とよび、軟口蓋(のどちんこのやわらかいところまで、後舌)、硬口蓋(口の内の上の固いところ、前舌)「カガ」は軟口蓋、「ヤ」は硬口蓋で調音されています。  ちなみに、f、vは唇、歯で、thは歯(舌先、歯)で妨げて音にします。  舌は舌先、前舌、後舌。

 東北弁、ロシア語に、中舌、母音(イとウの間)  口の開きが狭いと舌は口蓋へ近づく。
(「日本語音声学のしくみ」町田健編(研究社))

 

<子音の発音一覧>

   

 

◎鼻濁音を効果的に使おう。

●調音点での分類
1.両唇音(「パ」の[p]) 両唇を使って発する。
2.歯茎音(「タ」の[t]) 舌先と歯茎で発する。
3.硬口蓋音(「チ」の[t∫i]) 前舌と硬口蓋で発する。
4.軟口蓋音(「カ」の[k]) 後舌と軟口蓋で発する。
5.声門音(「ハ」の[h]) 声門で発する。

●調音法のやり方での子音の分類
1.破裂音 調音器官のどこかで閉鎖を作り、息をためて、急にその閉鎖を開放することで生じる。
2.摩擦音 「シ」[∫i]息の通り道を狭くして押し出すことで生じる。
3.破擦音 「ツ」[t] 舌先を歯ぐきにつけて、息が舌先と歯ぐきとの間を通ることで生じる。
4.弾き音 「ラ」 前舌が硬口蓋に近づき、舌先が歯ぐきを、はじくことで生じる。
5.鼻音  鼻にかける。
6.半母音 完全な閉鎖も狭めもなく発する。


5 子音の発音トレーニング1 カ行

 子音は、息を断ったり、流れを狭くしてつくる音です。口腔のどこで操作するかによって、違った音になります。その場所を「調音点」といいます。

○カ行音……カ[ka] キ[ki] ク[ku] ケ[ke] コ[ko]
 日本語で最も語数が多いのが、カ行、ガ行で始まることばです。
 カ行の子音[k]は、奥舌と軟口蓋でつくる破裂音です。奥舌を軟口蓋につけて息の出口をふさぎ、息をはき出すとき、この閉じた部分をつき破ることによって発します。
 「アカアカ」をくり返してみましょう。鏡でみると、のどの奥(軟口蓋)の口蓋垂に舌が盛り上がります。カクケコはこうして発音されます。

○キとカクケコの違い
 「カキカキ」といいながら、鏡でのどをみてください。
 軟口蓋は力でみえるのに、キではよくみえません。舌の手前が盛り上がるからです。
 キ[ki]は、イの発音につられて、舌の接点が他のカ行音よりも前で硬口蓋になります。これを口蓋化といいます。口蓋化は、他の行にも出てきます。(調音点は、前方から、キ→ク、ケ→カ→コの順です。また、キ、クは、無声化することがあります。)

○ガ行音……ガ[ga] ギ[gi] グ[gu] ゲ[ge] ゴ[go]
 [g]は、[k]と同じに発する子音です。[k]が無声音、[g]は有声子音です。
 [g]は強い破裂音で、強く発音すると耳ざわりです。
 ガグゲゴに対して、ギは口蓋化します。
 このガ行音は、呼気を鼻へぬく鼻濁音になることがあります。
☆酒が「サンゲ」となまらないように。

♯〈カ行のトレーニング〉
(カ)金で母さん、悲しませたか/固まった価値観を変えろ/噛んだら噛むだけ辛いカラシ/階段の壁にかかった消化器/重ねて確認、確実に
(ク)黒い鯨の口/曇ってくすんだクリスマス/空想の中の百済の国/熊本の空港にくる/ひゃっくり、びっくり、くりくりの目
(ケ)経験が人間を形成する/今朝すごいけんまくで喧嘩した/過去の喧嘩にけりをつける/やけ酒のわけ/剣道のけいこはけっこうつらい
(コ)子供の心に入り込む/今度、近藤さんと来よう/苔むした小石の小径(こみち)/濃いコーヒーよりココアが好み/行楽地で孤独な子供
(キ)きっとキミは来てくれる/気さくで気がつき器量よし/傷跡が消えた奇跡/今日はキリコの気持ち/地球の危機がきっとくる

♯〈ガ行のトレーニング〉
グズグズして学校に一時限ギリギリについた。


○鼻濁音……ガ[
ŋa] ギ[ŋi] グ[ŋu] ゲ[ŋe] ゴ[ŋo](「゛」を「゜」で表わすこともあります)
 ガ行音は、実際には、さまざまに発されます。
 学問のガは、誰でも濁音で発音します。ところが、音楽のガは、ガの濁音と鼻にかかった鼻音とに分かれます。破裂音で濁音[g]に、ガと鼻から抜いた柔らかいガとなるのです。これを鼻濁音とよびます。
☆午後のゴとコ゜の違いがわかりますか。
 特に、語中・語尾にあるガは、鼻濁音化しやすいのです。

☆ガ行が鼻濁音になる場合(鼻濁音化)[図表]
1.語中・語尾のガ行「下がる、ヤギ、潜る、逃げる、カゴ」。
2.格助詞や接続助詞。「私が、みた」
3.外来語で日本語化した語・ンのあとにくるガ行、また原音で鼻音のもの。(外国語・外来語は、語頭、語中でも鼻濁音化しない。)
  イギリス、キング
4.熟語としてなじんでいることば、人名などに使われるようになった「五」。〈一般的に「五」は、鼻濁音化しない。)
  十五夜 七五三 七五調
5.複合語で音になる場合(連濁)。
  株式会社 国々 大型

♯〈鼻濁音のトレーニング〉
ほの暗い十五夜に、私がみたヤギ

Q 鼻濁音がうまくできない。
 その前にンをつけて、ンガ、ンギ、ング、ンゲ、ンゴとゆっくりと言ってください。だんだん速くして、呼気が鼻へ通るのを確かめてください。
 交互にくり返し、違いをはっきりとさせましょう。
1.カ゜キ゜ク゜ケ゜コ゜
2.カ゜ケ゜キ゜ク゜ケ゜コ゜カ゜コ゜
3.ンカ゜ンキ゜ンク゜ンケ゜ンコ゜
4.語学も科学も語源が難儀
5.生麦、生米、生たまご
☆濁音についたり(4)、同じように鼻にかかるナ、マ行が続くと難しくなります(5)。

6 子音の発音トレーニング2 サ行

○サ行音……サ[sa] シ[∫i] ス[su] セ[se] ソ[so]
 舌の先を上歯ぐきの裏に近づけると、舌先の下の部分は、下歯の裏に密着し、上歯ぐきの裏と舌先の上面との間にわずかなすき間ができます。そこに息を吐くと、狭いところを押し出す息で摩擦音が生じます。これが[s]の音です。
 サスセソは、[s]の音に母音アウエオが結びついたものです。

○シとサスセソの違い
 「刺す」「死す」の発音を比較して、呼気の通るすき間の位置を比べてみてください。
 サは舌先が上歯ぐきの裏に近づくのに対して、シは舌の上面の前のほうが、上顎の前方の硬口蓋に近づき、舌先の下がサと違い、下歯の裏から離れた状態で発されます。このような音を[∫i]であらわします。「静かに、シー! 」というとき、あるいは「シャシシュシェショ」の「シ」です。先生を「シェンシェイ」となまるのは、この混同です。スエスエ,スエンスエン、センセイとくり返して直しましょう。
 (近頃、このシの代わりにスィ[si]にする人が多くなっています。ドレミファソラシドのシは、イタリア語では[si]です。)

○∫iとsiの違い
 [∫i]を無声音で伸ばすと、シーといつまでも摩擦音ですが、[si]を伸ばすと、母音のイになります。

○[s]の音が[∫]の発音にならないように
 サスセソの音は、舌の位置に注意してください。[s]は上歯ぐきの裏に近づいて発音しますが、[∫]は舌先が上歯先の裏に近づきます。
☆「さあ〜」と舌が出すぎたり、息の通り道が狭くならないと、甘い声になります。逆に、息の音が強すぎるなら、上唇を歯にかぶせましょう。

○ザ行音……ザ[dza] ジ[d
i] ズ[dzu] ゼ[dze] ゾ[dzo]
 サと違い、舌先がまず上歯ぐきの裏に接します。それを押し破って、破裂音とし、そのすき間から生じる摩擦音が加わって、[dz]の音をつくります。このように破裂音と摩擦音の組み合わさった音を破擦音といいます。
 ザ行音のジは、シと同じく口蓋化した音で、[z]の音をつくる位置より舌に近いところで発音されます。ヂと考えた方がよいでしょう。
 風邪が「カデ」となる人は、舌が歯ぐきから離れるからです。

♯〈サ行のトレーニング〉
(サ)さざなみのささやき/サメとサバとサンマ/さっさと財布を探さなきゃ/さすがの寒さに目覚めた/五月雨のなか、盛り場を探す
(ス)透き通る素肌へキス/すべてを捨てて救う/炭火入れが済んだら休む/すれっからし、心のすさんだ末娘/酢はすっぱいすよ
(セ)背骨を矯正する先生/せせらぎと船頭の声/聖母は戦争を責める/世界を背中に背負ったぜ/背伸びする制服の生徒
(ソ)そばでそっと添い寝する/食欲をそそるソウル/外の掃除が騒々しい/空にそびえる壮大な富士/そうたいそうなことではないそうだ
(シ)シタールの静かな調べ/白く四角い城/知ったら嫉妬、知らぬが花/椎茸と塩を仕入れる/獅子舞ショー

♯〈ザ行のトレーニング〉
善三おじさんは、ぞうきんの上に坐禅する。


7 子音の発音トレーニング3 タ行  〜のどが「のぞ」にならないように

○タ行音……タ[ta] チ[t∫i] ツ[tsu] テ[te] ト[to]
 タ・テ・トは、上の歯か歯ぐきあたりで、舌先を離して生ずる破裂音tに、アエオがついたものです。
 チは、口蓋化した音で、舌が上歯ぐきより、もう少し奥の硬口蓋に接して、破裂音[t]を発し、そのすき間で生ずる摩擦音[∫]が、組み合わさった破擦音です。
 ツは[t]が[s]に動く破擦音です。アツイをゆっくり発音してみるとわかります(トゥ[tu]ではない)。

○チ[t∫i]、ティ[ti]、ツィ[tsi]の違い
 [t∫i]をささやくように無声音でチーと伸ばして発音してみると、最初のチの音のあとにシのような摩擦音がシーと続きます。アチー! のチ。チーチーパッパのチの音です。チはティではありません。
 ティ[ti]、ツィ[tsi]を伸ばすと、イーとなります。この二つは、は外来語(ティーポット、ツイードなど)の発音以外は使いません。つまり、チは、チャ、チ、チュ、チェ、チョ、ツはツァ、ツィ、ツ、ツェ、ツォの音です。

○ダ行……ダ[da] ヂ[dji] ヅ[dzu] デ[de] ド[do]
 ダ、デ、ドは、タ行が無声音、ダ行音は有声の破裂音です。
 ヂとヅは、音の上でジとズと同じです。ヂャヂュヂョも、ジャジュジョと同じで、特別なとき以外は使いません。
 このようにザ行音と共通のところが多いため、ダデドと、ザゼゾを混同しないよう、注意しましょう。さざ波がサダナミ、撫でるがナゼル、喉がノゾになる人は、ここで直しましょう。地図がツゥヅゥやツィヅィとなる人も、要注意です。
 「竹たけかけた」が言えない人は、舌の移動の練習をしましょう。
(1)タケタケタケタケ
〈2)この竹垣に竹立てかけたのは竹立てかけたかったから、竹立てかけたのだ。

〈ダ行とザ行を区別するトレーニング〉
(1)ダザダジダズダゼダゾ
(2)ザダザヂザジザデザド

♯〈タ行のトレーニング〉
(タ)たまに玉ネギを使った/たいてい体育大会は退屈だ/楽しい旅をしたい/ただで食べるタコ焼き/正しい畳の叩き方
(ツ)つかの間の月の光を慈しむ/きつい靴は窮屈だ/つまみにつけたさつまあげ/つまらない付き合いを続ける/つるつるのツノ
(テ)天体で天使が回転する/おてんとうさんがテラスを照らす/天才テストで百点/丁寧に手を洗う/転校生の手書きの手紙
(ト)遠くにトンボが飛んでいる/戸締まり、戸がなきゃ戸締まれない/父ちゃん、とっとと起きとくれ/灯台のともしびが届く/遠い都市の時計が止まるとき
(チ)知恵と力で勝ち取る/塵はきちんと持ち帰れ/地下鉄でチョコをちょっと食べる/「蝶蝶」の調はハ長調だ/父が痴漢に注意した

♯〈ダ行のトレーニング〉
ダラダラ、いらだち、道路を自動車で運転する
☆ヂは、ヂャ、ヂ、ヂュ、ヂェ、ヂョ、ヅは、ヅァ、ヅィ、ヅ、ヅェ、ヅォの仲間です。


8 子音の発音トレーニング4 ナ行  〜鼻にこもらせない

○ナ行音……ナ[na] ニ[
ɲi] ヌ[nu] ネ[ne] ノ[no]
 舌の接するところは、タ行と同じです。タ行音は破裂音、ナ行音は、舌を歯ぐきにつけたまま、息を鼻へ抜く鼻音になります。
 ナは、そのまま、声を出さないと、ただ鼻から息が静かにもれます。そこで、鼻に手をあて声を出してナを発音すると、声が鼻に響いて振動するのがわかるでしょう。

○ナヌネノとニの発音の違い
 ニは、ナヌネノと調音点が違い口蓋化します。※

♯〈ナ行のトレーニング〉
(ナ)何が何でも夏がいい/なし崩しに成し遂げることはない/泣き顔なのに涙がない/なんとかならないものなのか/海原の七不思議
(ヌ)濡れたような絹を縫う/沼でぬかるみ足ぬけない/汗をぬぐい、濡れたシャツを脱ぐ/ぬるぬるぬめる/塗り薬が塗れぬよ
(ネ)寝るに寝れない熱帯夜/ネオンの熱に猫逃げねえ/年々きれいになる姉さん/来年を念じながら眠る/寝て願いが叶うなどありえねえ!
(ノ)このノート誰の?/ノックののち覗く/納期でノイローゼの農民/野はのどかでノスタルジイ/のびが伸びて野に実る
(ニ)煮込んだ肉のいい匂い/ワニが庭から逃げた/ニコニコ庭で荷造りに/「忍者」で人気、日系人/兄さんを二度と憎まない


9 子音の発音トレーニング5 ハ行  〜息声、息逃げでパワーダウンしている

○ハ行音……ハ[ha] ヒ[
çi] フ[Fu] ヘ[he] ホ[ho]
 [h]の音は、ハーと息を吹くときの喉音です。のどの奥を、アエオより狭くして出す摩擦音です。ハヘホは、この[h]音と母音アエオでつくられます。[h]は喉頭からの深い声、喉音です。
 ヒ[
çi]はシの発音に近い口構えで、シより舌の中ほどをもっと盛り上げて発する弱い摩擦音です。ヒは舌と口蓋でつくられる音です。

〈ヒとシを区別するトレーニング〉
 ヒとシは調音点が近いため混同しやすく、日比谷と渋谷、質店などは、よく聞き間違えます(地域によってヒとシを逆に発音するところもあります)。
(1)ヒシシヒヒシヒシ
(2)シヒヒシシヒシヒ
 フ[Fu]は、フーフーと吹くときに出る両唇を用いた摩擦音です(英語などの[f]のように、下唇を上歯で噛んだ状態で出しません)。
 日本語のフと[f]の違い、ハヘホの[h]音と[F]音の違いも確かめましょう。
 ヒは、ヒャヒヒュヒェヒョ、フはファフィフフェフォの仲間です。

〈ヒとフィを区別するトレーニング〉
 このヒを両唇をまるめフィのように発音しないように。
(1)ヒフィフィヒフィヒフィヒ
(2)フィヒヒフィヒフィヒフィ

○バ行音……バ[ba] ビ[bi] ブ[bu] ベ[be] ボ[bo]
 [b]は、唇を閉じ軟口蓋をあげて鼻へ抜かず、唇で出す弱い破裂音です。語頭では強く感じても、語中での[b]は唇がわずかに接するかどうかくらいで、ほとんど摩擦音に近くなります。
 ウーと発音しながら、だんだん両唇を近づけてみると出る音が、ブの音です。

○パ行……パ[pa] ピ[pi] プ[pu] ペ[pe] ポ[po]
 [p]は無声破裂音です。外来語や擬声語(パタパタ、ピカピカなど)や、促音(ん)と使います。

〈「プ」と「フ」を区別するトレーニング〉
 共に唇で発音します。「プ」は唇がいったん完全に閉じ、瞬時に息が流れ出て、「フ」は少し開いたまま息を流し続けます。

〈「パ」と「バ」を区別するトレーニング〉
 「バ」は最初から音になります。「パ」は最初は音にならず、「ア」のときに、音になります。
 喉仏に指を当てると、「バ」は、すぐ振動し、「パ」は遅れて振動します。つまり、「バ」は声を伴う子音(有声子音)で「パ」は声を伴わない子音(無声子音)です。
 「パ」の[p]…無声・両唇・破裂音
 「バ」の[b]…有声・両唇・破裂音
(1)バパパババパバパ
(2)パババパパバパバ

♯〈ハ行のトレーニング〉
(ハ)離れて気づく母心/箱を博物館へ運ぶ/羽根をはがされた羽アリ/華やかではかない花火/蜂に刺されて鼻はれた
(フ)不平不満がふくらむばかり/不意にふたりが振り返る/不快不安感が心をふさぐ/工夫した豆腐のフライ/深く触れ合うふつつかもの
(ヘ)塀や兵器のない平和/ヘリウムの変化に辟易する/へとへとにへたばる/平気で変な返事する/ヘラヘラ笑う蛇
(ホ)ほんならほんまにほかいけや/放課後に放火した「ホシ」/本物のほたるが欲しい/頬のほてりは惚れてる証拠/本を翻訳したのは本当?
(ヒ)広い額の人にひるむ/昼間はひとりで暇だ/ひらめき、開き直り、引きつける/光る瞳にひかれる/昼寝する人に昼飯広げる人

♯〈バ行のトレーニング〉
バビーとボブがベースボール。

♯〈パ行のトレーニング〉
パパのくれたポピンズ、プッシュしてペッチャンコ

10 子音の発音トレーニング6 マ行   〜ミ、ニは、鼻腔へ共鳴させる

○マ行……マ[ma] ミ[mi] ム[mu] メ[me] モ[mo]
 両唇を閉じ、軟口蓋を下げ、鼻に通し、鼻腔と口腔に共鳴するmを発します。そこから唇をあけ、母音につなげます(唇を閉じて出すため、両唇音といいます)。

〈マ行音とバ行音を区別するトレーニング〉
 両唇を用いる点で、マ行はバ行音と近いため、混同しがちです。
  さびしい→さみしい 寒い→さぶい 無防備→ムモービ などになりやすいのです。
(1)マバマビマブマベマボ
(2)バマバミバムバメバモ

♯〈マ行のトレーニング〉
(マ)魔女が街に舞い降りる/今なら間に合う、まだ間に合う/まるで待ちかねたように松の木/前々から前歯が曲がっていた/まじめなママがますます迷う
(ミ)耳に水がみえた/波のように満たして魅了する/未知なる道を見つめる/みんなで未来を見つけよう/みみずくの店
(ム)無邪気な娘に夢中/無我夢中でむしゃぶる/息子は六日に婿入り/昔むかしの虫かご/村人のむなしい無知
(メ)名月に、女神を愛でる/しめしめ、しめじ飯だよ/迷宮で女神にめぐり逢う/女々しくて面目ない/目が覚めたら雨だった
(モ)もいだ桃をもらって来い/もうモラルをもとう/身も心も燃え立つ/猛暑でもうろう/森を模索する


11 子音の発音トレーニング7 ヤ行

○ヤ行音……ヤ[ja] イ[i] ユ[ju] エ[e] ヨ[jo]
 [j]の音は、[
ç]の音と同じ口構えで、中舌を硬口蓋に近づけて出します。([ ç]が無声音であるのに対して[j]は有声の摩擦音です。[j]は先に述べたように、半母音と呼びます。(P ))
 ヤ[ja]ユ[ju]ヨ[jo]は、イア、イウ、イオのようにイの口の形をして、ア、ウ、オを発音してみましょう。力が入ると、横浜がィヨコハマのように、ねばっこくなります。
 そのため、イ、ユ、ヨが混用されています。行く(ユク、イク)、良い(ヨイ、イイ)などです(どちらも認められています)。

♯〈ヤ行のトレーニング〉
(ヤ)深夜の山は、やばい/奴らと野球をやる/闇の中で優しい声に安らぐ/約束を破って夜勤を辞めた/安い八百屋が休み
(ユ)湯上がり、雪で湯冷めする/夕方、誘拐の夢をみた/悠々自適で優雅なゆとりある暮らし/憂鬱は優柔を誘発する/ゆりかごをゆっくりと揺らす
(ヨ)夜な夜なヨーグルトを食べる/予期せぬ欲望に酔う土曜/陽気な妖精と宵を明かす/用心してヨットを寄せる/よそよそしさを装う嫁


12 子音の発音トレーニング8 ラ行   〜べらんめい調にならないように

○ラ行音……ラ[ra] リ[ri] ル[ru] レ[re] ロ[ro]
 ラ行音は、日本人にとってはなかなか難しい音で、いくつかのパターンがあります。
1.ホラッ! というときに、はじくように聞こえる弾音。
  軽く歯と歯ぐきの境目のあたりに舌をはじくようにつけます。弾くところは前からル、レ、ラ、ロ、リの順で、奥に。
 (これは語中・語尾に、多くあらわれます。空、くり、晴れ、風呂など。)
2.ブルンブルンなどというときの強い震え音。巻き舌で話すときの音です。(この巻き舌のラ行は共通語では用いないのが普通です。)
3.英語の[l]のような発音で、前もって舌先が歯ぐきに触れていて跳ねる音です。語頭には、この音が多く用いられます。
  ラジオ、ロボット、リズム、レモン、ルビーなど。 リは、口蓋化します。

 ちなみに英語のLは、舌先を軟口蓋、口の奥で、Rは、唇を丸め、舌先を上(口蓋)につけず、口先で発します。

〈ダ行音とラ行音を区別するトレーニング〉
 ダ行音とラ行音の違いは、舌の上あごへの接し方です。
 ダ行音は、舌のまわりが上あごのほぼ全部の歯ぐきに密着し、舌のつけ根に近いほうが上奥歯に触ります。ラ行音は、舌の先のほうは前のほうの歯ぐきに触れますが、舌の側面部は、上奥歯ぐきの両面には接触せずに、その間にすき間ができます。(舌の接し方に個人差があり、側面のすき間のでき具合でラとダの混同が生じるのです。日本語のラは、L、Rより、b、dに近いのです。外国人の江戸が、エロとなるのは、そのためです。)
☆ローとリョーを区別すること。

♯〈ラ行のトレーニング〉
(ラ)来日したフランスのオペラ/皿を洗うのはつらい/ラベンダーとバラの快楽/ライブのラストはラブソング/桜は暗いときに開く
(リ)立派なリンゴをありがとう/理想を力説するリーダー/リリカルな輪郭と彩り/漁師の料理が立派にできた/力士が立候補すりゃ、いりません
(ル)涙腺がはれるほど泣ける/投げる走るも攻めるが肝心/落雷のなか落涙する/留守にルビーを盗まれた/ベルがうるさく鳴る
(レ)冷血に冷笑する麗人/彼は熱烈で華麗、でも冷淡/レンガづくりの歴史的レストラン/レアチーズケーキにレモンを入れる/連絡くれなきゃ行かれない
(ロ)浪曲を六曲録音する/ロザリオを持つ牢屋の老人/色鮮やかな摩天楼を見下ろす/路地をうろついていろ/いろいろあっても終わりはよかろう


13 子音の発音トレーニング9 ワ行と拗音・撥音・促音   〜口先に母音子音をつなげる

○ワ行音……ワ[wa] イ[i] ウ[u] エ[e] ヲ[o]
 ワ行の[w]は、口構えをウ[u]に近い形にして発する両唇摩擦音です([w]は、英語の発音ほど、両唇を近づけません)。
 ワ行のイウエヲは現在ではア行音と同じ音になっています。 ワ行音は[wa]だけが違う発音です。(つい最近まで、イ→ヰ、エ→ヱ、オ→ヲのかなで表わしていました。昔はウィ、ウェ、ウォの音がありました。地域によってはそうした発音が残っています。共通語の場合、表記はヲでも、発音はオと同じです。)
☆「わたし」と「あたし」を区別しましょう。

♯〈ワ行のトレーニング〉
(ワ)私、わかめ買い忘れた/わがままなわしが悪いわ/笑いながら別れをかわした/忘れられない脇役の笑い声/我の脇に若い人

○拗音〈ャ、ュ、ョ〉
 カ[ka]に対してキャという音があります。音韻論的には、キャはカ[ka]の中に半母音[j]がはさまって[kja]という拍(音節)になっているとも考えられます。このように子音+母音の拍(これを直音といいます)に対して、半母音が入った拍を拗音とよびます。

♯〈拗音のトレーニング〉
(1)キャキュキョ[k] ギャギュギョ[g] キ゜ャキ゜ュキ゜ョ[
ŋ ] 
(2)シャシュショ[∫] ジャジュジョ[dz]
(3)チャチュチョ[t∫] ニャニュニョ[
ɲ]   
(4)ヒャヒュヒョ[
ç] ビャビュビョ[b] ピャピュピョ[p]
(5)ミャミュミョ[m] リャリュリョ[r]

☆拗音は、音声学的にみると、[k][g][
ŋ][b][p][m][r]は、半母音[j]を経て母音[a][u][o]につながる音であり、その他は[∫][dz][t∫][ɲ][ ç]に母音[a][u][o]がついたものです。
 また、拗音なのに、拗音でない発音になることもあります。
  千住(センジ)、手術(シュジツ)、新宿(シンジク)

○撥音……ン[m][n][
ŋ
 撥音は、両唇や舌などで口からの呼気の出口を閉じ、鼻腔へ逃がす音です。文字は同じンで表記しますが、後にくることばによっては音は違います。[図表 ン]

〈撥音のトレーニング〉
(1)先輩、先頭でガンガンどなる。
(2)仙台の新聞に宣伝した。
(3)連盟は混雑のなか散会した。
 それぞれのンの違いを知りましょう。

 原則として、ンのあとにp、b、mの両唇音がくる場合は[m]の音。
 あとにt、d、n、rなどの歯ぐきと舌先を使う音がくるときは、[n]の音。
 あとにk、g、
ŋ(鼻濁音)など軟口蓋と奥舌でつくる音がくる場合は[ ŋ]の音。
 [s][a][o][u][w][i][e][∫][j]などの音の前にあるンは、聞き取りにくいので、はっきりと出すようにしましょう。
☆ンのあとに「い」がくると、難しいです。繊維(センイ)、官位(カンイ)。

○促音〈っ〉
 小さい「っ」を使って表記します。そのあとに続く音を発する口構えのまま一拍分、息をこらえます。そして、次の音を強い息で出します。つめる音、つまる音で圧迫した声の出し方で、日本語の特徴の一つです。
 ガッカリは[k]の口構え、ヤッパリは[p]の口構えとなります。いつも小さい[t]の発音が伴うとは限りません。

♯〈促音のトレーニング〉
やっぱり、がっかり。やっただけでおわった。

☆促音が小さいッで表記されるため、本来促音でないものが、促音のように間違って発音されるケースもあります。
例 カムチャツカ(×カムチャッカ)、かつて(×かって)、トロツキー(×トロッキー)

戻る