「感性を高めるためのヒント」

       感性のレベルアップをしよう― 世界で初めて“感性理論”を完成―「福島流・感性の法則」


(6)感性を身につける10の方法 感性を現実のなかで磨き活かす方法

52 フットワークを軽くしよう

 この章からは、これまで述べてきた感性の働かせ方を実際にどのように高めていくのかについて、触れていきたい。

○万歩計をつけ、毎日八千歩、歩く
 まずは、感性の源泉である命の働き、生命力からの生き生きした力をとり出そう。それには、明るい心と健康な体が欠かせない。特に心の問題は大きい。それは、体力、集中力が支えている。足腰が衰えないように毎日、たくさん歩こう。万歩計をつけてチェックするとよい。それに頼るのでなく、自分の勘を働かせて、昼夕に何歩、歩いたか、あててみよう。
 会社をジムと考え楽しもう。歩数をどうすれば稼げるか、考えよう。食事も遠いところへ行こう。できるだけ階段を使おう。まわりの人の三倍、歩くことを心がけたい。目標は8千歩、できたら1万5千歩だ。時間さえあれば、足踏みでよいから、体を動かそう。感覚を感じる力をいつも感じていよう。そして週末は、山登りかハイキングで、運動不足を一気に取り戻そう。足の裏に地球を感じよう。家にいるときは、裸足で直接、床を歩こう。大地に触れられる機会があれば、理想的だ。夏でなくとも、砂浜に行って裸足になるのは、とてもよいことだろう。

 感性は、感じることなのだから、このようにしてなるべく体に直接、刺激が入るようにするとよい。五感から入れるなら、裸で無防備な状態が一番よい。外出時もできるだけ薄着をしよう。厚着では、どうしても身を守るようになる。動かなくなる。手袋でもはめたら、それこそ身動きがとりにくくなる。
 お年寄りの疑似体験をするのに、身体機能が衰えた状態として、そういうものをたくさん着込んだことがある。五感が鈍くなるのが、老いともいえる。それを、あえて鈍くする必要はない。老いないために、感性を高めていよう。
 肌を出すことを意識する。そういう状態で行なう太極挙、寒風摩擦、水泳なども効果的である。サウナや水風呂も刺激的だ。シャワーでも冷水で似た体験はできる。滝に打たれているイメージで、ふんばろう。若い子が裸で寝たり、はだしで歩いたりするのは、なまじ理由のないことではない。青竹を踏むのも、クルミを握るのもよい。

 最近、朝起きても、窓さえあけない人がいる。空気を入れかえることは、気を流すことであり、それさえめんどうがるようでは、鈍いとしかいいようがない。炭鉱にカナリアを持って入るのは、ガスを察知するからであるが、人間であっても鋭い五感をキープしたいものである。なまぐさは、感性の敵である。
 日常的にはいつでも、どこでもくり出せるように、行動しやすい服装にし、カバンも軽くしよう。好奇心をもち、今一歩、踏み込みたいときに、踏み出せるために、身軽であることは大きな条件だ。そして、野次馬根性で、何でもみてみよう。行なってみよう(ミーハーは感性のあるものとは異なるが、その好奇心と旺盛な行動力は見習いたいものだ)。
 会社以外では、できるだけラフな格好で過ごそう。自動車より、自転車がよい。靴は疲れにくいものにしよう。ウォーキングシューズがお勧めだ。そして、興味、関心をもったところへ、実際に足を運んで探検してみよう。
 そのためには、行動を促す情報が必要だ。日頃から使えそうな情報を切り抜き、ストックしておこう。雑誌や新聞を切り抜き、次のようにエリア別にファイリングしておくとよい。

1.地元(住んでいるところ)
2.東京(仕事場の近辺)
3.一泊二日で行けるところ
4.遠方の観光地など(国内・海外)

☆街には、探検心をもって、くり出そう。会社はトレーニングジムとして利用しよう。

○感性磨きのためのお勧めスポットファイルを自分でつくっておこう
1.文化、歴史、伝統(洗練)―命が動く
2.自然、人間、宇宙―すべての感覚が磨かれる
3.新しい、おもしろいところ―発想を刺激する

〈ジャンル別〉
1.自然と戯れることのできるところ、空気のよいところ、山、海(生命力)
2.テーマパーク、遊園地、公園(創出力)
3.博物館(生命力、発想力)
4.植物園、庭園(感覚力)
5.温泉(感覚力)

〈五感を刺激するところ〉
1.おいしいものの食べられるところ―レストラン、ホテル
2.よい香りのするところ―アロマセラピー、フレグランス、お寺
3.よい音にひたれるところ―コンサート、教会
4.よい触感のあるところ―マッサージ
5.目の保養になるところ―映画館、公園

☆出張や旅行に、名所・史跡探訪を加えよう


53 遊びの世界から夢見よう 童心、子供心に戻ろう

 子供は遊びの世界に生きている。そこには、夢や未来があふれている。おもちゃやままごとなどは、大人たちの現実の世界から題材がとられている。遊びのなかから子供なりに、人間のもつ願望が生まれ形づくられていくわけだ。
 こうして、子供はまねごとをやりながら、新たな発見をくり返して世の中を学んでいく。そして、それに基づいて、自分たちのルールやきまりをつくり、現実に適用していく。学習や遊びのなかで友だちに受けるアイデアを出し、皆でよりうまく適用できるように変えていく。どうだろう。これは、理想的な仕事のステップといえないだろうか。
 感性を働かせるのに、童心、子供心に戻ることは、とても大切なことである。やってみたいと思っても、大人は体裁を考えてやめてしまうことが多い。子供が躊躇せずにパッとやることでも、大人は考えるまもなく行動に移らない。もちろん、だからこそ大人なのである。
 子供もはじめてやることはおもしろくても、くり返すうちに飽きて次のことをやり出すはずだ。大人はそのことがわかっているから、わざわざやってみることをしないといえる。しかし、やってみなくてはわからないこともあるし、わかっているつもりでも、実は全くわかっていないことも多いものである。

 汚れるから、怪我するからと、無事、安全に逃げることで感動のチャンスを失うのは、いつも大人である。それを子供に押しつけないことだ。電車のホームで石を拾ってはいけないが、山や海では構わない。
 無事、事なかれ主義の子供など、つまらないだろう。大人だって同じだ。痛い思いをしても、そこに感性がうずいていたら、動きたくなるはずだ。刺激的に、やりたいことを恐れないでやる勇気をもとう。
 子供は、感性についてのよい先生だ。おもしろいことをたくらもう。家族サービスなどと言わず、子供と共に動き、共に感じ、笑って楽しもう。そこに頭を使うことの価値を知ることだ。

☆1.赤ん坊や小さな子供をみたら、ほほえもう。
 2.ままごとやチャンバラをやってみよう
 3.テーマパークへ行こう
 4.ファミコンの世界をのぞいてみよう
 5.お笑い芸人のまねをしよう

 おもしろそうなものがあれば、見にいこう。人が集まっていたら、とんでいこう。最高のヤジ馬になろう。体や心を動かして損と思わないことだ。
 今の若者をみていると、何かすると体力や心を使うだけ損だ、皆で均等に割り振って、自分の分が終わったら、それでよい、というような考えが横行している。他の人の分も手伝ってあげて気持ちよかったというような、素直な心が働かない。これはとても大きな問題だと思う。
 体や心を動かさなくて、何のための人生だろう。どうして人間には手足があるのか。毎日の仕事よりも、オフに体を動かしていなければ、あなたは会社のドレイだ。体や心は、生きている。動きたがっているものなのだから、動かしてやろう。体や心は動かすごとに強くなるのだから。家族を笑わせることが、あなたの幸せな役割だ。

☆そんなことしたら、恥ずかしいと思う分だけ年をとる


54 SF映画、小説から未来を学ぼう

 私は、おもちゃやゲーム、ラジコンなどの会社の企画などにブレーンとして関わってきた。こういう分野をアミューズメントというが、これらは、服やごはんのような生活必需品でないから、なくても困るものではない。だから、本当におもしろくなくては全く売れない。ソフトのなかでも、もっとも厳しい分野である。
 そこで求められるものは、夢や未来をイメージさせるものが多い。つまり、イマジネーションやアイデアの占める比率が高い。未来をシミュレーションした映画や小説、ゲームの世界は、これからの社会を予測するのに参考になる。そこに夢が描かれているからだ。そういう目で、SF映画やSF小説を楽しんでみよう。
 さて、今は人間がどれだけ文明を発展させ、地球を貪ってきたかが検証されている時期のようだが、人類は、およそ誰かが頭に描いた夢を実現するように発展してきたのは、疑いもない。一九〇〇年に新聞に掲載された一〇〇年後(つまり二〇〇〇年)の予測というものがある。それをみると、驚くことに同時はきっと誰もが不可能だとしか思えなかったことが、ほぼ実現しつつある。つまり、予言できるようなことは、実現されてしまうのだから、人間の力は、偉大なものだ。イメージしたものは実現する。ならば、あなたも二一〇〇年に夢みてみよう。

 ところで、子供の頃、遊んだおもちゃや買った製品があれば、思い出してみよう。これも、最近の高度に加工された製品よりも、一昔前の材料やしくみのよくわかるものがよい。品質があがったため、完成品を分解しても、その加工プロセスがみえなくなったのは残念なことである。
 私は自分の父の世代が子供の頃の、少年倶楽部の付録をみて、そのレベルの高さに驚いた。手先をよほど器用に使えなくては、そこについてくる模型の船などは、つくれない。こういった本で日本の高度成長を成し遂げた技術者や経営者の感性が養われたといえる。
1.昔の船や飛行機、人形をみにいこう。
2.できたら、実際につくってみよう。
 ここで、ナイフを使うなど、手先を働かせてみると、もっとよいだろう。

☆ドラえもんのポケットのような頭をもち、手づくりのものをつくろう。

 さらに、スポーツを見て、パワーをもらうのもお勧めだ。
 K1の人気は高いが、相撲、プロレス、野球、サッカーと、スポーツが魅力的で、かつ感動を与えるのはなぜだろう。それは、選手一人ひとりが自分の力の限界に挑戦する姿をみるからである。
 自分の力の限界へ挑戦する生き方に人間は感動する。
 それは、自分が選びとったものに責任をもち、居続けること、続けることによって、はじめて人に何かを与えるプレーが可能となる。
 そこから、私たちはいろんなことを感じ入る。我身におきかえてみるとよい。できる範囲のことしかしないというのは、感動しないし、魅力的でないことがわかるだろう。
 まして、感性の力も、つかないのである。そうしたら、何か一つ、やり遂げる目標をもつことだ。


55 通勤・通学中のなかでも感性は磨ける

 毎日の通学や通勤中にできる感性強化法も、たくさんある。ラッシュで疲れてばかりいるのも、こんなに寝心地が悪い車内でシエスタ(昼寝)のように睡眠不足を解消するのは、よいことではない。電車内での何よりのメリットは、一定の時間を毎日、定時にとれることである。大して身動きできないなかでできることは限られている。だから、それを活用すればよい。
 たとえば、電車の外の風景をマーケティングとしてみる。汚い店が空き地となる。次にそこに何ができるかを予想してみよう。店ができたら、どのくらい繁盛するか、よくつぶれる場所なら、いつまでつぶれないかを予想しよう。
 こうして、同じところを長期にわたってみて、その変化を調べるのを定点観測という。同じところを継続的(一定周期ごと)に調べることで、その傾向を追うのである。感じるにも、観点をどう定めるかは、大切なことである。
 たとえば、イベントや店なども、初日に人が集まったからといって成功するとは限らない。一ヵ月後、三ヶ月後、半年後、そして一年後をみて、はじめてその先の予想がつく。特に同じシーズンの同じ曜日の時間帯などで比べることが大切だ。
 電車や車のなかでできることを掲げてみよう。そこから、何を感じ、イメージするかは、あなたの自由だ。

1.吊り広告をみる
2.街をみる
3.人をみる
4.本を読む
5.勉強をする
6.瞑想する、立ち禅をする、公案をとく
7.音楽や落語をウォークマンで聞く

 その他にも、次のようなことをやってみよう。
1.通勤ルートを曜日ごとに変える
2.途中の駅で降りて周辺を歩いてみる
 通勤する時間帯や道もできるだけ変えてみよう。歩く側を変えるだけでも、大きく印象が違ってくるものだ。ついでに、もちものを変えたり、靴を変えたりしてみよう。

 さらに、週末となれば、知らない街や店に行こう
1.市場…デパートの食料品売り場…旬のものを知る
2.ディスカウントショップ、家電売場…人気のある売れ筋商品や新商品を知る
3.本屋…趣味の分野、自分の読まない本の分野の棚の前に行こう
4.映画館…誰も見ないような映画を見よう
5.喫茶店…何か一つに秀でているところに行こう
6.イベント…何でも顔を出してみよう

 それから、感性の働きやすい時間帯として、第一に早朝をお勧めしたい。
 早朝は感性がどちらかというと前向きに働きやすい時間帯といえる。まわりも新鮮な空気に満ち、自分も眠り終えた心身で生まれたばかりの赤ん坊のように吸収力に満ちているからだろう。
 まず、そこで外に出て朝の空気をお腹一杯、吸おう。そして、体に生気をみなぎらせ、神経系を体の末端まで甦らせよう。背一杯、伸びをして、深呼吸をし、五感を目覚めさせよう。毎朝、新しく生まれかわることをしっかりと体と心で感じよう。

 感動は、心を柔軟にする、立ち直らせる。たとえば、私にとって大きな朝日は、感動の記憶をよびおこし、今の自分をそこへタイムトリップさせ、再出発させる力になる。あなたにも、いくつかこういう原体験があるはずだ。
 感動したところを再訪してみよう。

 出かけられないときは、何かを凝視する、見続けるのもよい。
 スーフィ・ダンス、ヨガでは、スローな円運動で体の中心を感じていくという。
 ロック・クライマーは、生命をかけて、ただ岩と対峙して心と対話する。
 こういったレジャーもまた、意識化された労働といえるが、楽しいものなら感性が働いている。
 そのなかから、まわりや自分の姿にも感覚が及ぶと、心の中がグィーと音をたてて動くのである。
 感動・感激は、単なる喜びとは違う。感じて動くことである。だから人間は、それを求めて冷たい海の中にも入っていけるし、高い空を飛ぶこともできるわけだ。スキューバーダイビングもスカイダイビングも最高だ。

☆頭のテッペンから足の指先まで、神経を感じよう


56 自分にとって大切なものを考えよう

 自分で大切に思っているものは何だろう。人……どんな人、もの……どんなもの、どんな考え……、思想、宗教?、ここで思いをめぐらして欲しい。自分の“大事”なものは誰にでも一つや二つはあるだろう。大事とは感性がそう感じるものである。ここで、その一覧リストをつくってみよう。あなたの心の部屋、感性のボックスには、何が入っているのだろうか。
 さらにあなたの思い出グッズを整理してみよう。これらには、自分の育ちが入っているはずだ。つまり、そこにはその人だけが知っているジーンとくる理由がある。それに触れることは、心の安らぎとなる。自分の感性のルーツ捜しとなる。

○感性のつまったものの一覧リストをつくろう
1.小さな頃のもの
2.旅先で得たもの
3.人からもらったもの
4.メモリー、記念品
5.賞品、作品
6.アルバム、写真、VTR

○人との関わりについて 深く感じた瞬間を思い出してみよう。
1.子供
2.家族
3.同僚
4.部下
5.上司
6.会社

○自分が気持ちのよい瞬間や場について知る
 あなたが気持ちのよいところはどこだろう。気持ちのよいときはいつだろう。そういうとき、あなたの感性は、おのずと働いているといえる。その場所、その時間をしっかりと知っておくと、そうではないとき、そうではないところでも、それらを思い出すことで、うまく感性を働かせて乗り越えられるようになる。それは、心の慰安所である。どうしても感性が働きにくくなったら、そこへ行ってみることだ。思いつかなければ、捜しに行こう。
 嫌いな人に会ったときも好きな人がみていると思い、嫌いなことをされても好きな人がやったことと思ったら、少しは楽に受けとめられる。大きなプレッシャーに押しつぶされそうになっても、楽しいときのことを考えたら、耐えられるだろう。痛い治療も、直ったときのことを考えるから、がまんできる。いつ、どこであなたの感性が最大に働くか、その場所や時間を見つけよう。そこは、心の病院となる。

☆ジーンとくるものを知ろう、集めよう、感じよう。それは自分の感性のルーツ探しだ。そして、感性の慰安所をもとう。

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